2014年11月13日木曜日

「実はこんなにリスキーだった!アフターピル体験談」は実話?それとも創作?

ウェブマガジンMenjoyには、以下の記事があります。

実はこんなにリスキーだった!アフターピル体験談【前編】 (保存ページ)

実はこんなにリスキーだった!アフターピル体験談【後編】 (保存ページ)


リアルな表現で書かれていますので、
緊急避妊を経験したことのない人はこの記事を通して緊急避妊のイメージを持つことも多いようです。
この記事は経験談として書かれています。
しかし、はたしてノンフィクションであるのか、疑問に思う事があります。
疑問点を書いてみることにします。

実はこんなにリスキーだった!アフターピル体験談【前編】 、について

>病院でアフターピルを処方されるのにあたり、まずはひと通りの問診や内診を受けました。
緊急避妊薬の投与には、特別の事情がなければ内診はしません。

>男性医師から「どんな方法で避妊をしたのですか?」と聞かれたので「ウレタン製のコンドームを使って脱落してしまいました」と答えると「……あまり大きな声じゃ言えないんだけどね、今月あなたで2例目なんだよね」と。
医師がいうには、製品自体には問題はないのだけど、ウレタン製コンドームのゴワつき感から根元までさげずに使う人が多く、結果脱落してしまうことになるとのこと。
コンドームは、正しく使ってこそ効果を発揮すると改めて実感させられました。
避妊の方法を聞かれて、「ウレタン製コンドーム」と答える人がいるでしょうか?
まずいません。ふつうは「コンドームが・・・」と答えるでしょう。
その病院に緊急避妊を求める患者が月に100人いたとして、
ウレタン製コンドームの事故で来院する人がどれほどいるか、
しかも「ウレタン製コンドーム」とご丁寧に答える女性が月に2人もいるでしょうか?

>アフターピルを処方してもらい、ご好意でその場で飲ませて頂きました。
2011年のノルレボ認可後は、そのような対応を取る病院もあります。
しかし、ヤッペ法は2回服用なので、院内薬局で処方するにしても、
2回分を袋に入れて渡すのが普通でした。
1回目分をその場で服用させ2回目分を後で渡す対応は、
まずありえません。

>さらに、1回目の服用後、12時間後に飲むことになるのですが、それが午前1時になってしまうことが判明。
2回目の服用が午前1時なら1回目の服用が午後1時だったことになります。
記事では前日予約したことになっています。
午前の診療終了間際の時間帯に予約を入れることは不自然です。

>なんとか吐かずに帰宅し、その日は何もできずに過ごしました。
>身体はとてもだるかったのですが、眠ってはダメだと自分に言い聞かせながら夜を過ごしていました。
軽い散歩をしたり、ヘッドホンで音楽聞いたりして眠気をごまかし、何とか2回目の服用を終えて眠りにつきました。
データがあるわけではありませんが、激しい吐き気の副作用が出る場合、
眠気の副作用が同時に出ることは稀です。
散歩できるほどであれば、副作用としては軽かったようにも見えます。
記憶力がよほどよいにしても、8年前の行動を「ヘッドホンで」まで詳細に覚えているものでしょうか。

>大量に出血、そして妊娠を回避
>その3日後、消退出血と呼ばれるものを確認することができました。
>この出血が1週間程続いて不安になってしまいました。
服用3日後の出血は最も早いケースですがあり得ます。
ただ、このような早い時期の出血はほぼ排卵前の服用で生じ、
粘度の低い鮮血となります。
粘度が低いので大量出血と感じることもありますが、
短期間で出血は収まるのが普通です。
大量出血が1週間続けば不安になるかもしれませんが、
そのような出血パターンはまずないでしょう。

>あと、強いめまいを感じて、外出できないくらいに。これが結構辛かった。
一時的にめまいを感じることがあるにしても、
強いめまいが持続することはまずありません。


ヤッペ法後の副作用の出方は人によりさまざまです。
この体験談はヤッペ法で生じうる副作用を全て経験したことになっていますが、
さまざまな人の副作用を寄せ集めたように感じられます。
この記事はノルレボ発売直後の時期に書かれています。
ノルレボは副作用の少ないことがウリです。
ノルレボの副作用の少なさをアピールするために、
ヤッペ法の副作用をことさら誇大に書いているように感じられます。

実はこんなにリスキーだった!アフターピル体験談【後編】 、について

>その欠点を改良したのが今年7月より発売された『ノルレボ錠』です。これは、性行為があったときから72時間以内に1回服用するもので、ヤツペ法に比べて飲み忘れのリスクが低く、吐き気もほとんどありません。
前編にはヤッペ法とノルレボの比較が書かれていて、
2度目の服用はノルレボだったと誤解してしまいそうですが、
ノルレボ発売前の2008年のことですから2度目もやはりヤッペ法です。

>当時、さまざまな事情があり、不本意な妊娠はどうしても避けたかったのです。
その時々でさまざまな事情があるこことはあります。
どうしても妊娠を避けたい事情があったのかもしれません。
しかし、娘の「『ママ、赤ちゃんできたの? 嬉しい!』と喜びの言葉を。この一言で、私は産むことを決意」しています。
上の子と下の子の年齢差も4歳近くです。
1度目の緊急避妊でひどい副作用が出た女性が、
敢えて2度目の緊急避妊を受けようと思うほど切実な理由があったのでしょうか。

>そして、このクリニックでもその場で飲ませていただけるということで、看護師に処置室に案内してもらったのですが、
2011年のノルレボ導入以前、中用量ピルをその場で服用させる病院は極めて稀でした。
2つの病院ともそのような対応を取ったことは偶然すぎます。

>深夜、当時2才9ヶ月の娘が夜泣きしながらおっぱいを求めてきたので、眠い目をこすりながら授乳をさせていました。この時、授乳回数は日に4回程度。
2才9ヶ月まで授乳することが絶対ないとは言えませんが、
極めて稀なケースです。
授乳回数4回だと生理はまず始まっていたはずです。

>「あなた授乳中ですよね、だったら生理も排卵もないんじゃないんですか?」と衝撃的な一言が。
ヤッペ法に用いられる中用量ピルは、授乳中の女性に対して相対禁忌です。
医師がチェックを忘れることがないとは言えませんが、
妊娠中・授乳中のチェックをしないことは考えにくいことです。
なお、ノルレボは授乳中でも服用できますので、
授乳のチェックは必ずしも必要でありません。
また、産後2年9か月の女性が授乳中であっても、
生理が回復してないだろうと思う看護師はまずいません。
看護師の発言も不自然です。

>しかし、身体になんの変化も現れることがなかったのです。
あの辛かった吐き気、めまい、大量の出血がなく約2週間が経ちました。
ヤッペ法の副作用は約半数の女性では全く感じません。
1度目と2度目で副作用の出方が異なることもあります。
しかし、1度目で過敏症並みの副作用が出たにもかかわらず、
2度目は皆無と言うことはほぼあり得ません。

>状況を察した娘が「ママ、赤ちゃんできたの? 嬉しい!」と喜びの言葉を。この一言で、私は産むことを決意しました。
 2才9ヶ月の子どもに「赤ちゃんできたかもしれない」と言う女性は珍しいでしょうが、
そう告げても2才9ヶ月の子どもでは事態を理解するのは無理です。
「嬉しい!」などと反応することはありえないでしょう。

ライターの意図

記事は「体験談」として書かれています。
しかし、実体験にしては不自然な点が多すぎます。
いや、ほとんどすべて不自然と言えるほど不自然です。
一度でも緊急避妊をした経験があれば、
これほど不自然な「体験談」にならないのではないでしょうか。
仮に一部は事実で尾ひれ背びれを付け加えているものだとしても、
全体を「体験談」としてみることはできないものになっています。
それはある意味当然です。
ライターの書く物は個人のブログとは異なります。
単に個人的な体験を書くのではなく、情報提供を目的としています。
情報提供のために、「体験談」の体裁が取られることもあるのでしょう。
そのようなものとして、「実はこんなにリスキーだった!アフターピル体験談」は書かれています。
それでは、この記事はどのような情報提供を意図しているのでしょう?
記事のタイトルにあるように、緊急避妊のリスキーさを伝えることがこの記事から読み取れる情報提供の意図です。

①副作用が強い

前編では副作用の「体験」が書かれています。
それは明らかにヤッペ法についてのものですが、
読者はヤッペ法とノルレボを区別して読むことはむつかしいでしょう。
緊急避妊は副作用が強いとの情報を提供するものになっています。

②避妊失敗は自己責任

避妊失敗は不可抗力的に生じるものです。
前編では、「ウレタン製コンドーム」がことさらに取り上げられ、「コンドームは正しく使ってこそ効果を発揮すると改めて実感させられました」と述べられます。
後編では、「夫はどうしても来年中に2番目が欲しいという、その1点で暴走してしまった」という話になっています。
どんなに気をつけても、コンドームの失敗は一定比率で生じます。
しかし、この記事では「もう二度と、こんな薬に頼らないようきちんと避妊しようと思った」と述べられます。
緊急避妊は「きちんと避妊」しないからだとの「啓発」がなされています。

③ノルレボのメリット

2度の緊急避妊は時期的に見てどちらもヤッペ法ですが、
記事ではノルレボのメリットについて詳しく説明されています。
2度目の緊急避妊で全く副作用がなかったり、産後2年9ヶ月後の授乳中だったりの設定は、ノルレボのメリットを念頭に置いた記述でしょう。

④緊急避妊は不完全

この記事の最も伝えたかった情報は後編最後の部分でしょう。
私は、産める環境にあったからこそ、アフターピルの失敗から出産を選択したのですが、そうでない人にとっては、アフターピルの失敗による妊娠は、本当に悲劇でしかありません。
アフターピルがあるから大丈夫、なんてことはないのです。
そもそも、アフターピルは気軽に飲めるものではありません。費用の面もそうですが、身体の負担が大きいものです。
男性が、面倒だからという理由で避妊せずに「アフターピルがあるからいいじゃん」というような、軽い気持ちでいられたら女性はたまったものじゃありません。
どうか、カップルの方はパートナーと避妊について話し合って、シングルの方は自分の身体を守るにはどうすればいいか、考えてみて欲しいと切に願っています。

ここに書かれている内容はその通りです。
普段からの避妊が重要なことは言うまでもありません。
しかし、いくら普段からの避妊に気をつけても、
緊急避妊が必要になることがあります。
この記事では、不可抗力的に緊急避妊が必要になる事態のあることには全く触れられていません。
緊急避妊が必要になるのは心掛けが悪いからと言わんばかりです。
このような考えに立てば、緊急避妊アクセスの高いバリアは正当化されます。
ノルレボ「乱用防止」キャンペーンに迎合した内容となっています。
この記事がどのような世論形成を狙ったものかは、以下のツイートからうかがわれるでしょう。



心掛けのよくない女には罰が必要。50年間日本の社会は変わっていません。


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上記記事の公表後、作者の宇野未悠さんと会話がありました。
宇野未悠さんの私に宛てたツイートを収録します。






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会話前の99.9%の確信が、最初のツイートで120%の確信になりました。