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2014年4月19日土曜日

ピルに関する情報の発信停止について

当ブログ、ツイッター等におけるピルに関する情報の発信を当面停止することにしました。
ピルは本来安全性の高い薬であり、
ピルの普及は日本の女性にとって多大なメリットがあるとこれまでも確信してきましたし、
現在もその確信に変わりありません。
しかし、日本の現状においては、ピルはメリットよりもデメリットの方が大きいと考えざるをえません。
ピルを安全な薬にすることはできます。
そのために微力ながら情報を発信してきましたが、
残念ながら状況は変わっていません。
現状において日本のピルは、メリットよりデメリットが大きい状態が続いています。
この状態は、根本的な改善がなされない限り転換できません。
当サイトの情報が多少なりともリスク回避に役立ったとしても、
それはかえって現状の問題点を隠蔽してしまう結果になるのではないかと恐れます。
状況が変化するまで、ピルについての情報発信停止を決意した理由です。

「ピル推進派」産婦人科医に十数年間期待してきましたが、
期待しても無駄との認識に至りました。
・ピル解禁の意義を共通認識できない状況
・副作用問題の現状を共通認識できない状況
・副作用回避方策の必要性を共通認識できない状況
状況が変わるまではピルについての発言は控え、
ピルと直接関係しない事柄を書いていきます。

 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
副作用拡大を招いたライフデザインドラッグ路線のピル。
誰が最期までライフデザインドラッグ路線にしがみつくのか見届けたい↓↓。
特定非営利活動法人OC普及推進事業団ご推薦の産婦人科医など(26 Apr 2014保存)。
※同団体は虚々実々のプロパガンダ言説を専らとしてきた経緯があり、勝手に「つながり」を表明しているケースも考えられます。

ピルの製造原価は1シート数十円です。
製薬会社にとってピルほど利益の上がる薬はありませんし、
ピルほど広告効果のある薬はありません。
原発推進に巨額な広告費が使われたのと同様に、
ピル販売促進に巨額の資金がつぎ込まれました。(参照 ピルの副作用被害とオーキッドクラブの責任)
日本のピルは製薬会社が提供する情報と資金によってコントロールされています。
ピル推進派の女性専門家の会は、血栓症副作用の勉強会をするのに製薬会社から講師を招きました。
当サイトの情報を製薬会社情報と異なるという理由で間違いと決めつけ中傷してきたNPOの理事長は、まともな医療者の当たり前の発言まで気にいらないようです。(参照 )
製薬会社による情報操作は、医師からユーザーまで浸透しているのが現状です。
製薬会社から情報操作のための資金提供が続く限り、
製薬会社の意を酌んだピル言説が横行します。
日本のピルが再生するには、
いったん滅んでしまった方がよいのではないか。
この考えを自分で抑えることができなくなりました。


ライフデザインドラッグ路線への懐疑が一定程度になれば、当サイトの活動を再開します。

2014年4月8日火曜日

ピルの副作用被害とオーキッドクラブの責任

オーキッドクラブの設立


「ピルや避妊に関する総合サイト」と銘打つオーキッドクラブのサイトが現れるのは、
2000年秋頃です。
2000年11月9日の同サイト保存ページはこちらです。
「オーキッドクラブって何?」には、
「産婦人科医をはじめとするウィメンズヘルスケアの専門家の集まりです」との簡単な説明があります。
2004年4月29日までは、同サイトにオーキッドクラブの詳しい説明はありませんでした。
未確認情報によると、オーキットクラブは2000年9月27日の発足で、
間壁さよ子医師(発起人代表)・松峯寿美医師・対馬ルリ子医師・早乙女智子医師が発起人でした(参照ページ)。
当時、対馬医師は性と健康を考える女性専門家の会副会長、松峯医師と早乙女医師は同会運営委員でした。
オーキットクラブと性と健康を考える女性専門家の会は目的が類似しているだけでなく、
メンバー的にも重なっていました。
2004年6月12日になると、「設立のごあいさつ」以下の紹介ページが登場します。(保存ページ)
「オーキッドクラブのしごと」によると、「オーキッドクラブは非営利の団体(N.P.O)です」と記され、
理事長・副理事長・理事・顧問など理事会メンバーが紹介されています。(保存ページ)


突然登場した間壁さよ子発起人代表=理事長


4名の発起人の中で間壁さよ子医師を除く3名は、
それ以前から避妊やピルについて発言してきた医師です。
一方、発起人代表の間壁医師は、避妊やピルについての活動実績はほとんどありませんでした。
間壁さよ子著『避妊のすべてがわかる本』が刊行されたのは、2002年のことでした。
当時、日本の産婦人科医は誰でもピルの処方経験が乏しかったわけですが、
間壁医師もその1人だったでしょう。
オンライン外来の回答にも初々しさがにじんでいます。
たとえば、「膝から下がじんじんする」との質問に、
「このような副作用は聞いたことがありません。・・・努力されたらいかがでしょう」と回答しています(保存ページ)。
「ピルが飲めるように努力」せよ、には唸ってしまいます。
間壁医師が発起人代表となり、理事長となっていく経緯は謎であるように思われます。



ターギス株式会社


オーキッドクラブの事務局はターギス株式会社内に置かれました。
ターギス株式会社は、「医薬品、ヘルスケア用品のマーケティングやプロモーションの企画」等を行うグローバルな広告代理店です(参照)。
間壁発起人代表=理事長とターギス株式会社の関係は、次の2つの内のどちらかでしょう。
一つは、間壁医師の志に感銘を受け、
ターギス株式会社が間壁医師のために便宜を図ったという関係です。
オーキッドクラブのホームページは凝った作りで、
制作費だけでかなりの費用がかかるでしょう。
それもターギス株式会社が提供したとすると、
ターギス株式会社は希有な会社ということになります。
しかし、外資系企業のターギス株式会社がそのような便宜を図った可能性はほぼ皆無です。
もしそのようなことをすれば、ターギス株式会社の役員は背任罪で訴えられてしまいます。
普通に考えれば、間壁医師とターギス株式会社の関係はその逆です。
ターギス株式会社のプロモーション企画に間壁医師が協力したと考える方が合理的です。
外資系広告企業であるターギス株式会社は、英語でコミュニケーションの取れる間壁医師に話を持ちかけたのでしょう(間壁医師は在外経験のある医師)。
このように考えると、ピルと接点のなかった間壁医師が突然オーキットクラブのトップになった経緯が理解できます。

オーキッドクラブと製薬会社の不透明な関係


ターギス株式会社は、「医薬品、ヘルスケア用品のマーケティングやプロモーションの企画」等を行う広告代理店です。
ターギス株式会社の顧客は、主として製薬会社などの企業です。
製薬会社は広告代理店であるターギス株式会社に広告費を支払い、
ターギス株式会社はその資金で企業のためにプロモーション活動を行います。
ピルについては諸般の事情で資金提供製薬会社が伏せられた形のプロモーションがしばしば行われました。
その典型がオーキッドクラブにほかなりません。
製薬企業名が伏せられたプロモーションの場合、
広告代理店は複数の製薬企業から資金提供を受けることがあるようです。
製薬企業も広告代理店も資金提供元を秘密にするからです。
オーキッドクラブに資金提供していた会社の一つは、
あすか製薬(アンジュの発売会社)でした。
あすか製薬の『環境・社会報告書2009』には、
オーキットクラブが以下のように紹介されています。

「オーキッドクラブ」の支援
低用量ピルの普及と女性の健康を推進するために設立された団体です。ホームページ・メールマガジン・セミナー・講演会・アンケート調査・学会発表を通じた情報提供で、女性の健康支援に役立てられています。


http://www.aska-pharma.co.jp/pdf/company/csr_report09_all.pdf
 

また、あすか製薬の『環境・社会報告書2010』には、以下のように紹介されています。

オーキッドクラブは、「女性が充実した人生を送るためのサポートがしたい」と考える産婦人科医の集まりです。
OCに関するアンケート調査の実施と学会での発表、メンバードクターを対象とした資材作成などを通じて、医療関係者にOCの理解を深めてもらう活動を行っています。



http://www.aska-pharma.co.jp/pdf/company/csr_report10_all.pdf
 

あすか製薬の文書では、オーキッドクラブはあくまで産婦人科医有志の団体であり、
あすか製薬はその団体を支援する善意の第三者として説明されています。
なお、同上冊子では、オーキッドクラブの「理事長」真壁さよ子医師は、あすか製薬を「守護神」と褒めちぎっています。



白々しい茶番ではないでしょうか?


ユーザーを欺く「有志医師の集まり」というフィクション


オーキッドクラブの設立から2年後、オーキッドクラブ事務局編『なやめるからだ オンライン外来730日のカルテ』が刊行されます。
同書には以下の説明が付されていました。


オーキッドクラブ事務局編『なやめるからだ オンライン外来730日のカルテ』
「オーキッドクラブは、多様な現代に生きる女性の健やかでいきいきした生活をサポートするウィミンズヘルスケアの専門家の集まりです」

 

副会長ほかが設立に関与した性と健康を考える女性専門家の会は、いち早くオーキッドクラブを紹介しました。
その紹介文は以下の通りでした。

オーキッドクラブ (産婦人科医によるバーチャル診療室、回答者に当会会員が居ります。)

広告業界出身者の始めた低用量ピル普及推進委員会は、オーキッドクラブについて以下のように紹介しています。

「オーキッドクラブ」というのは女性の健康をサポートする専門家の集まりで、一般の人でも参加できる「オーキッド・エル」という部門もあります。
http://mixi-pill.com/archive.html
(保存ページ)


「日本家族計画協会やオーキッドクラブ、NAHWといった女性医療に特化した団体」http://www.mixi-pill.com/siryou.html(保存ページ)
 

オーキッドクラブについては、自他共に「産婦人科有志の団体」との紹介がなされています。
オーキッドクラブは自らについて、「オーキッドクラブは非営利の団体(N.P.O)です」と明記してきました。
仮にオーキッドクラブがターギス株式会社によるプロモーション活動だとすると、
オーキッドクラブは非営利の団体(NPO)などということは到底できません。
団体の存在自体がフィクションで、それをカモフラージュするための小道具が自称NPOだったり理事会ではなかったかと思われます。
そもそも、オーキットクラブのサイトでは、理事長も理事も「○○先生」として登場します。
理事長や理事は偉い方々なので自分のことを「先生」付けして名乗るのでしょうか。
違うでしょう。
ターギス株式会社の社員が運営しているので、
「先生」の尊称が付けられているのです。
端から見ても、オーキッドクラブが「有志医師の集まり」で非営利の団体(NPO)などとは思えません。
まして、メンバー的にも重なっていた性と健康を考える女性専門家の会の幹部は、
オーキッドクラブの実態を最もよく知ることのできる立場にありました。
オーキッドクラブの数億円に上る莫大な資金のおこぼれにあずかりながら、
知って知らぬ顔をしていたのではないでしょうか。
その資金も元をただせばユーザーが高いピル代として負担したものです。
ユーザーに高いピル代を負担させながら、
製薬会社・広告会社・一部の産婦人科医がその甘い汁を吸う構図は道徳的ではありません。
断っておきますが、私は医師が製薬会社の広告プロモーションに関与することを否定しているのではありません。
また、企業の広告宣伝活動を否定しているわけでもありません。
企業は広告宣伝活動を行うことは当然だし、
知見や労力を提供する医師がそれ相応の報酬を得ることも当然と考えます。
問題は、ユーザーを欺く広告手法は医師の倫理観を麻痺させ、
企業の意に迎合する「専門家」を生み出してしまうことです。


更年期女性にピル服用を強力に推奨


若いときからピルを服用している女性でも、35歳を過ぎれば血栓症リスクが高くなります。
40歳を過ぎた女性には相対禁忌とされているのがピルです。
年齢の高い女性に対して、リスクを伝えるのが医療者の本来の使命です。
ところが、リスクを伝えるどころか、メリットを強調し、
年齢の高い女性にピルを積極的に奨めてしまったのがオーキッドクラブです。
理事長のアドバイスをピックアップしてみました。

「ピルの基礎知識
ピルの副効用・・・中高年の女性では、更年期障害の症状が緩和されます。http://archive.is/sZkKd


服用前の不安>わたしも服用できますか?>避妊の必要がない時期もピルを服用したいです。40代なのですが・・・。
更年期症状が出てくる年齢層にとって、その有益性を体験したら手離せない薬でしょう。
・・・44歳ですから、もちろん副作用の少ない低用量ピルですよね。
http://archive.is/I0VQp

服用前の不安>わたしも服用できますか?>年齢と子宮筋腫があることから、ピルの継続を迷っています。
41歳という年齢を考えると、更年期障害もそろそろ出てくる頃ですね。
 低用量ピルをのむことでホルモンを安定させ、更年期を元気にいきいきと、

若さを保ちながら過ごすことができると思います。
 結局一石四鳥ですね。

http://archive.is/7O1T8

服用前の不安>わたしも服用できますか?>ピルを飲もうと思いますが、40歳なので心配です。
ぜひ低用量ピルを試しに飲んでみてください。
 副作用はほとんどの人にありません。
わずかな吐き気や少量の出血などが主なものです。
 妊娠するかもしれないと思うストレスがなくなれば、

不定愁訴のような症状もなくなる可能性があります。
http://archive.is/ErUL8



服用前の不安>わたしも服用できますか?>更年期の時期でもピルを飲みつづけてよいものか不安です。
喫煙者、乳癌既往がある方には使用できませんが、
適応を守れば40代の方での使用は問題ありません。
 更年期まではまだ少し時間がありそうですが、

更年期障害や更年期以降に発症しやすい疾患(骨粗鬆症、高脂血症など)の予防も含め、
女性ホルモンの補充をかねたピル服用、お勧めです。
http://archive.is/84L12

服用中>不正出血>ピルを飲み始めて10日目。まだ出血しています。
低用量ピルのバランスのとれたホルモン投与で、貴女の更年期障害も軽減すると思います。
 低用量ピルは更年期の治療としても使われています。
http://archive.is/PUQlU

 


更年期女性へのピル投与は問題ないとミスリード


年齢の高い女性にピルの服用を奨めるなど、医学常識を逸脱したトンデモです。
それを確信犯的に行ってきたのがオーキッドクラブです。
オーキッドクラブは一般女性に対する「啓発」と並んで、
医師に対する情報提供を行ってきました。
「OCに関するアンケート調査の実施と学会での発表、メンバードクターを対象とした資材作成などを通じて、医療関係者にOCの理解を深めてもらう活動を行っています。」
にわか「ピル推進派」の医師は、そんな大それた事は考えないでしょう。
オーキッドクラブが製薬会社のダミーだからそのような発想が出てくるのでしょう。
オーキッドクラブによる医師への情報提供の例を挙げてみます。
2013年5月、日本産科婦人科学会学術講演会でオーキッドクラブは、医師会員へのアンケート調査の結果を発表しました。

その時のパネルが以下です。

 
 「40歳以上にOCを処方する場合、40歳未満と比べてトラブルの発生頻度は異なりますか」
という設問に対する医師の回答を集計しています。
大部分の医師が「変わらない」と答え、「多い」と「少ない」が少数ずつあります。
40歳以上の女性にピルを処方しても特に問題ない、
と印象づけるかのような結果となっています。
オーキッドクラブの狙いはそこにあったのでしょう。
しかし、それはとんでもないことです。
吐き気や不正出血などのトラブルは、年齢による発生頻度に差がありません。
トラブルの頻度を聞くことは無意味です。
無意味な設問なので、回答した医師の中にはリスクの意味で回答する医師が出てきます。
具体例として血栓と答える医師も例外的に出てきます。
それをクローズアップすると、
リスクについての回答結果のように見えてしまうのです。
いかにも広告会社らしい情報操作が行われています。
それよりも、そもそも医師の意識を調査するアンケート自体が無意味です。
40歳以上が相対禁忌となっているのは、トラブルが多いからではありません。
40歳以上の女性に対してピルが相対禁忌となっているのは、
血栓症などのリスクが高いからです。
リスクが高いか低いかが問題なのであり、
医師の意識がどうかは関係ない話です。
事実を問題にせず意識だけを調べる調査はインチキではないかと思います。


性と健康を考える女性専門家の会会員の追従


オーキッドクラブに関して非常に残念なことがあります。
オーキットクラブは製薬会社のダミーサイトであり、
製薬会社に迎合する言説を流していると思えば、
その情報が鵜呑みにされることもないでしょう。
しかし、事もあろうに性と健康を考える女性専門家の会の主要会員まで、
オーキッドクラブ的言説に染まってしまっているようなのです。




※喫煙により動脈血栓のリスクは高くなります。


性と健康を考える女性専門家の会も、きわめてまっとうな理念を掲げる団体であったことは、
ブログで紹介しました。
ところが、この両団体は軌を一にしながらライフデザインドラッグとしてのピル路線にのめり込んでいきました。
そして、ピル史上最悪の副作用問題が日本で生じる事になりました。
そのことに両団体は責任があるのではないか、
と考えてきました。
ピルの副作用問題が報道されるようになって半年が過ぎました。
この間、性と健康を考える女性専門家の会は完全沈黙を守ってきました。
今になってやっと、反応が出されました。

 その勉強会の内容は、以下のようです。


[講義1]低用量ピルと血栓症
バイエル薬品 学術部(演者未定)


[講義2]低用量ピルを安全に使用するために ~臨床における血栓症リスク対策の実際~ 
性と健康を考える女性専門家の会 副会長、四季レディースクリニック 院長   江夏 亜希子

 
 https://twitter.com/pwcsh/status/452262750501085185
 


バイエル薬品はヤーズやトリキュラーを販売する日本最大のピル販売会社です。
副作用問題を引き起こしている会社から講師を呼んで勉強会を開催することに違和感を感じない、
それが今の性と健康を考える女性専門家の会なのでしょうか。
 

2014年3月10日月曜日

心の内なる滅私奉公

荻生徂徠が作った日本


日本が他のアジア諸国と異なる近代化の道を歩み始めるのは、いつからでしょう?
歴史の教科書では、明治維新が強調されますので、明治維新以後に日本は近代化の道を歩み始めるとの印象を与えています。
しかし、江戸時代の日本では他のアジア諸国にない、さまざまな現象が生じていました。
私がおもしろいと感じるのは、自己の考えを論理的に主張する人々が広汎に出現したことです。
江戸時代、山の所有権や境界をめぐる紛争が頻発しました。
山論と言います。
裁判で争われることもありました。
長期の裁判になることも少なくありませんでした。
そこには甲論乙駁の論理の世界があり、それに関与したのは一般人でした。
現代人が見ても新鮮さを持っています。
江戸時代の日本には、自己の考えを主張する文化があったように思えます。
もし、江戸時代の日本に独自の精神文化があったとすれば、荻生徂徠の影響に注目すべきでしょう。
江戸時代は朱子学の時代ではありませんでした。
中国や朝鮮には科挙(官吏の登用試験)がありました。
試験には正解が必要です。
正解は朱子学の中にあり、正解を学ぶ「試験勉強」が盛んに行われました。
科挙のなかった日本では朱子学は普及しませんでした。
「試験勉強」のような学習はおもしろくなかったからです。
日本で流行ったのは荻生徂徠の学問です。
荻生徂徠の学問は、研究的・論争的・探求的学風でした。
江戸時代の学者の多くは、多かれ少なかれ徂徠学の影響を受けました。
荻生徂徠を通して、江戸時代の日本には論理で決着を付ける文化が浸透しました。
それは唯々諾々と服従する封建時代人のイメージとはかけ離れています。

万機公論に決すべし


明治政府の最初の施政方針は、五箇条の御誓文です。
その第1条には「万機公論に決すべし」と書かれています。
明治維新は欧米の市民革命とは異なる性格を有しています。
しかし、この「万機公論に決すべし」は、明治維新の市民革命【的】な性格を示しています。
市民革命は、【国王による意志決定】方式の否定でした。
【国王による意志決定】に代わるものが【議会による意志決定】でした。
五箇条の御誓文には、【議会による意志決定】を彷彿とさせる文言が唐突に出てくるのです。
いや、唐突にではなく、それは自然に出てきたのかもしれません。
江戸時代の日本は、絶対権力者による意志決定の社会ではありませんでした。
江戸時代の日本には論理で決着を付ける文化が浸透していました。
その延長線上に、「万機公論に決すべし」があるように思えます。
明治の思想家福澤諭吉は、独立自尊を唱えます。
福澤は欧米人の中に独立自尊の精神を発見したのですが、
実は欧米人【を通して】独立自尊の精神を発見したのではないかと思えます。
福澤も論理で決着を付ける文化の中で育った人です。
奴隷の文化の中で育った人ではありません。
だからこそ、独立自尊の精神を発見できたのではないかと思えるのです。

滅私奉公への堕落


気骨のある明治人と言われることがあります。
日本人は近代のある時期まで、独立自尊の近代人に向かって進歩していたように思えます。
しかし、一方でアンチ独立自尊の思想も成長していきます。
楠正成は忠君の人として戦前の教科書で頻繁に取り上げられました。
幕末から始まる楠フィクションを福澤は「楠公権助論」として批判したことがありました。
昭和戦前期に入ると、楠正成賛美は極に達します。
楠正成は滅私奉公のモデルとして祭り上げられました。

滅私奉公は『戦国策』中の言葉のようですが、
楠フィクションを彩る言葉として使用されました。
荻生徂徠に始まる日本の誇るべき文化は、
偏狭な愛国主義イデオロギーによって窒息させられたのです。


内なる滅私奉公


滅私奉公は戦争遂行の標語でした。
戦後、滅私奉公は死語となります。
しかし、はたして日本人は滅私奉公のメンタリティから脱却できたのでしょうか?
「愛する○○と私」の関係を見て見ましょう。
戦前の滅私奉公で「公」は天皇や国家でした。
愛する天皇(国家)のためには私を殺して従う、
これが滅私奉公でした。
現在を見て見ます。
日本で政党と支持者の関係は、
右も左も余り変わりません。
日本では政党の政策が変わっても支持者は変わりません。
政党の政策が変わると、支持者の考えが変わるからです。
「愛する政党と私」の関係で、政党(公)が優先され私が従属してしまうからです。
政党を会社や団体の組織に置き換えても同じような関係が見て取れます。
「愛する彼(彼女)と私」を見て見ましょう。
1969年、奥村チヨの歌「恋の奴隷」がヒットしました。
「あなた好みの、あなた好みの女になりたい」が繰り返されます。
さすがに現在、このような歌詞の歌が作られることはないでしょう。
しかし、この歌詞は現在でも続く日本人の恋愛感情の一側面を表しているように思えます。
彼や彼女(公)が優先され私が従属してしまう関係です。
彼や彼女を個人と個人の一般的な人間関係に置き換えても同じような関係が見て取れます。
日本でピルが解禁されて15年が経ちます。
15年経ちますがピルはメジャーなわけではありません。
そのような中で、熱烈なピルのファンが生まれました。
つまり、「愛するピルと私」の関係ができています。
ピルは完全な薬ではありません。
メリットもあれば、デメリットもあります。
しかし、もしかするとデメリットに目をつぶる恋の奴隷の心理が働くかもしれません。
もしそうであるなら、偏狭な愛国主義者が誇るべき文化的伝統を押し殺したのと同様に、
熱烈なピルファンはピルを押しつぶしてしまうかもしれません。

自立的ピルユーザーであれ


ピルがあって「私」があるのではありません。
「私」があってピルがあるのです。
ピルには長所もあれば欠点もあります。
欠点に目をつぶってはいけません。
私は15年前、「ピルは頭で飲む薬」と書きました。
この考えは最初にピルと出会ったときからずっと変わっていません。
日本バンザーイを叫ぶ人が愛国者でしょうか?
違います。
日本をよりよい国にしていこうとする人が愛国者です。
ピルについても同じです。
変な言い方ですが、私はピルを愛しています。
だから、ピルの欠点も率直に語り、
私たちにとってもっといいピルにしていきたいのです。
自立的ピルユーザーがこの国のピルの歴史を作る、
そんな思いでサイト名を「ピルとのつきあい方」にしました。
ピルとつきあうことは、内なる滅私奉公から脱却することでもあると思うのですが。

2014年3月6日木曜日

35歳からのピル(「プレ更年期」のピル療法について)

ピルについてのWHOガイドラインでは、
喫煙や血圧などの条件がクリアされれば35歳以上でもピルの服用ができることになっています。
日本のガイドラインも同様です。
35歳以上でもピルの服用ができます。
もう一度書きます。
35歳以上でもピルの服用ができます。
なぜ繰り返し書いたのかというと、
この日本語がわからない人がいるからです。
「35歳以上でもピルの服用ができる」は、
35歳以上の年齢でピルの服用が好ましいという意味ではありません。
「20歳を過ぎれば喫煙することができる」は、
20歳を過ぎたら喫煙することが好ましいを意味しません。
当たり前ですね。
ところが「35歳以上でもピルの服用ができる」を逆手にとって、
35歳を過ぎたらピルを服用しようとする言説が蔓延っているのです。
とんでもないことです。

35歳以上のピルが否定されない理由


35歳を過ぎると血栓症リスクが加速度的に上昇します。
それでも、「35歳以上でもピルの服用ができる」としているのです。
なぜでしょう?
35歳以上でのピル服用について英語で書かれたサイトを10個探して読んでみて下さい。
一つの例外もなく、閉経までは妊娠リスクがあるので避妊が重要と強調し、
その文脈で「35歳以上でもピルの服用ができる」と書かれているはずです。
100のサイト、1000のサイトを探しても、一つの例外もないはずです。
海外ではピルは避妊薬ですから、
当然避妊に関して書かれるのです。
その背景には、妊娠のリスク、妊娠に伴う血栓症リスクの上昇に較べると、
ピルによる血栓症リスクは小さいとの認識があります。

35歳以上のピル服用リスクについて説明すること


避妊はきわめて個人的なことです。
お寿司にするかカレーにするかが個人的なことであるのと同様に、
避妊法の選択は個人的なことです。
だから「あなたはカレーにしなさい」など、
誰も指示しません。
避妊法についても同じで、
「あなたは○○にしなさい」など誰も指示しません。
医療者も指示しません。
指示はしませんが、必要な情報を伝えるのは医療者の使命です。
「35歳以上でもピルの服用ができる」は、
ピルを推奨するわけではなく、
リスクを説明した上で選択肢として提示するという意味です。
ピルが避妊薬である時、医療者は副作用のリスクについての情報をきちんと説明します。

35歳以上ではピルによる避妊が半減


下の図はフランス人の避妊法についての調査です。


詳しくは脱ピルと卒ピル参照

34歳まではピルによる避妊が過半数を超えています。
(ピルのみとピル+コンドームの合計)
しかし、35歳以上の年齢層では年を重ねる毎に減少し、
45-49歳では半減しています。
35歳以上のピルによる避妊には、
ミニピルも含まれています。
リスクの説明がきちんとなされているから、
ピルによる避妊が回避されているのです。

ライフデザインドラッグとしてのピル


日本では2004年にライフデザインドラッグ政策が採用され、
以来脱避妊薬路線が推進されました。
ライフデザインドラッグとしてのピルは、
2つの特徴を持っていました。
1つは年齢横断性です。
ライフデザインドラッグ路線では、
思春期から閉経期までの全年齢の女性に対してピルは役立つとします。
年齢によるリスクを考慮すれば、
ライフデザインドラッグとしてのピルは成り立ちませんから、
年齢リスクが警告されることはありませんでした。
2つは非選択性です。
ピルが避妊薬であるとき、ピルの選択は個人の選択に委ねられます。
避妊の切実度は個人によって違いますし、
性交渉の頻度も個人によって違います。
上の図を見るとピルは20-24歳の年齢階層がピークで、
その後は下降していきます。
避妊法が選択されるものであるとき、
ピルを選択する年齢層が異なってくるのです。
ところが、ライフデザインドラッグでは、
ピルはそれぞれの年齢層で有用な薬と位置づけられます。
個人的な選択の薬ではなくなります。
「いつでもピル、みんなのピル」が、
ライフデザインドラッグのピルです。

「プレ更年期」言説に見るピル


ライフデザインドラッグのピルが、年齢横断性・非選択性という2つの特徴を持つと書きました。
ライフデザインドラッグ路線の特徴を端的に示しているのが、
「プレ更年期」言説です。
対馬ルリ子医師は「プレ更年期」にピルを活用することを唱道した医師です。
その考えは、こちらに端的に示されています。
「プレ更年期」は、35歳から45歳とされます。
そして、この年齢期にピルを積極的に服用することが推奨されています。
本来はリスクを警告すべき年齢の女性に、
逆にピルの服用が推奨されているのです。
「プレ更年期」のピルは更年期の不調に備える、
という位置づけがなされています。
まさに、「いつでもピル、みんなのピル」なのです。
ピルがこのように位置づけられると、
リスクを上回るメリットがあるかどうかという指標は意味を持ちません。
ピルの副作用は都市伝説と一蹴することによってしか、
ライフデザインドラッグ路線のピルは成り立たないのです。
もっとも有力な産婦人科医の一人が唱道した「プレ更年期」にピルの言説は、
広く流布することになりました。
オールアバウトにも同趣旨の記事が見られます。


ピルユーザーの過半数は30歳以上


ピルが切実な避妊要求に応える避妊薬であるとき、
ピルユーザーのピークは20歳代(前半)となります。
避妊薬としてのピルはそのような薬なのです。
20歳代(前半)までの女性には未婚の女性も多くいます。
日本では長い間ピルが認可されませんでした。
その背景には「ふしだら少女に避妊手段を与えてしまう」、
とするおじさま方の心配がありました。
ピルが認可されてから後も、
若者がピルにアクセスしにくくする障壁を作りました。
その延長線上にあるのが、
ピルを避妊薬でなくしてしまうという脱避妊薬路線です。
避妊薬であるよりライフデザインドラッグであるピルは、
当然のことながら年齢の高い女性の間に普及しました。
当ブログのアンケートによれば、
ピルユーザーの年齢分布は以下の通りです(2014.3.5現在)。
10歳代28人4.29%、
20歳代233人35.68%、
30歳代250人36.28%、
40歳代140人21.44%
30歳以上が57.7%を占めています。
「プレ更年期にピル」は現実を動かす言説になってきました。

30歳オーバーのピルデビュー


WHOのガイドラインが「35歳以上でもピルの服用ができる」としていること、
そして実際に各国には35歳を超えたピルユーザーがいることを書きました。
そうです、確かにどの国にも一定数の35歳を超えたピルユーザーがいます。
ただ、それは日本の35歳を超えたピルユーザーとはわけが違います。
日本以外の国では、ピルは若者を中心に利用されている避妊薬です。
35歳になると、ピルをこのまま続けるか検討するのです。
そして、ピルを止めるユーザーもいますし、ピルを続けるユーザーもいます。
「35歳以上でもピルの服用ができる」は、ニュアンスとしては35歳を超えてもピルを【継続】できるに限りなく近いものです。
これを言い換えると、35歳を過ぎてピルデビューするユーザーなど、
ほぼ皆無です。
「35歳以上でもピルの服用ができる」は、
5年、10年、15年とピルを使用してきたユーザーについて言っているものです。
若いときからピルユーザーであり続けた女性は、
血栓症になりやすい体質でないことが証明済みです。
また、ピルの血栓症はピルを飲み始めた最初の1年に集中する傾向があります。
数年間服用を続けているユーザーでは、リスクは低くなります。
このようなユーザーを前提に「35歳以上でもピルの服用ができる」とされているのです。
このような事情を考慮せずに、
WHOのガイドラインが「35歳以上でもピルの服用ができる」としているから、
35歳を過ぎてピルデビューしてもかまわないとするのは乱暴すぎます。


斬新な【実験】


「プレ更年期にピル」は斬新なアイデアを実証する【実験】であったと考えられます。
1つ目の【実験】は、35歳を過ぎたピルデビューで血栓症発現率はどのようになるかの【実験】です。
とてつもなく高い発現率になるのではないかとの想像はできても、
実際に【実験】が行われたことはありません。
この【実験】はすでに結論が出ていますので、中止してもよいのではないかと思います。
600人に1人が血栓症に--40歳以上のピル服用について試算などを参照のこと。

2つ目の【実験】は、「プレ更年期」のピル服用が更年期に与える影響の【実験】です。
「プレ更年期」のピル服用が、更年期に好影響を与えるとの仮説が述べられています。
「プレ更年期のうちからホルモンケアをしていると、次に続く更年期も上手に乗り切ることができます」
これはあくまで仮説であって、何らのエビデンスもありませんでした。
あるいは私が知らないだけなのかもしれませんが、
少なくともメジャーな雑誌にはそのような知見は報告されていません。
きっと世界から注目される論文になるでしょう。
※なお、ヘルシンキ宣言を逸脱する研究はどのように優れた研究であっても、
受理されることはありません。

35歳超でもピルが選択できる国


私はピルの副作用被害をなくすための10の提言で、
「35歳以上の女性に対する混合ピルの新規処方を停止する」ことを提唱しました。
実はこの提言は私の主義に反しています。
この提言では処方するかしないかを医師が決定することになっており、
医師が処方しないと決めれば女性の選択権が失われます。
かなり悩みましたがこの1項目を入れることにしました。
現実に生じている副作用をストップする緊急的措置が必要と考えたのが、
大きな理由です。
もう一つ理由があります。
欧米では35歳を過ぎても混合ピルを服用し続ける女性がいます。
そして、その中のかなりの女性が治療目的を兼ねたユーザーです。
そのような女性の一人が話してくれたことがあります。
「このピルを飲み始めたのは19の時だったわ。
かれこれ20年同じピルを飲み続けてるの。
だから、20年間私の身体のホルモンは同じって事よね?
これから10年飲み続けるつもりだけど、
ホルモン状態は19の時と変わらないわ。
ドクターはリスクが高くなるって言うけど、
私について当てはまらないでしょ?」
彼女は自信たっぷりに話しましたが、
実はやはりリスクは高くなります。
しかし、彼女の場合確かにメリットを上回るリスクがあるとは言えません。
ピルが若者の避妊薬として普及している国では、
ピルと長くつきあうことも可能になります。
35歳を過ぎても安全にピルが使える国にするには、
35歳以上の新規処方を停止する方が近道ではないかと考えました。


誰もがいつでも安心して利用できるピルに


ピルが避妊薬であるとき、ピルは女性が選択する薬です。
ピルが治療薬であるとき、ピルは医師が奨める薬です。
ピルが女性の選択する薬であるとき、医師はリスクを丁寧に説明します。
ピルが医師の推奨する薬であるとき、医師はリスクを説明しないか過少に説明します。
1970年を境に、世界のピルは医師がリスクを説明し、
女性が選択する薬に大きく変わりました。
日本のピルは、依然として1970年以前のピルなのです。
発足当初の性と健康を考える女性専門家の会にとってピルは避妊薬でした。
ピルが避妊薬であるとき、性と健康を考える女性専門家の会の理念はすばらしいものでした。
「性と健康を考える女性専門家の会」の理念を賞賛する 参照
興味深いことにライフデザインドラッグ路線にどっぷり関与してきたのは、
同会メンバーです。
対馬ルリ子医師も同会の有力メンバーです。
「プレ更年期にピル」の言説と同会の理念は齟齬しないのか?
同会にはこの点をしっかり考えてほしい気持ちです。
同会のためにも、日本の医療のためにも、そして何よりも日本の女性のために。

2014年2月27日木曜日

「性と健康を考える女性専門家の会」の理念を賞賛する

ピル認可前の1997年に性と健康を考える女性専門家の会が結成されます。
16年余が経過しました。
日本のピルの現状を見るとき、少しく考えることがあります。
長くなりますがこの会の理念を引用してみます(太字強調は引用者)。
http://square.umin.ac.jp/pwcsh/about/ayumi.html 2014/02/27

◆以下引用◆
ひとりひとりの女性が満足できる女性医療とはなにか・・・・・ 医療・保健システムに女性の視点を生かし、男女ともに生き生きと幸福に暮らせる社会をつくりたい ― わたしたちの会は、同じ願いをもつ医療者・学者・教師・ジャーナリストなどにより、1997年に設立されました。
 そのきっかけは低用量ピル(以下ピル)の認可問題でした。
 1997年3月、ピル認可について検討するための公衆衛生審議会を傍聴した堀口雅子医師(虎の門病院産婦人科元医長)は、会の設立呼びかけのレターに、ピルが審議会で「認可されれば女性の性行動が活発になりエイズなどの性感染症の蔓延が危惧される。したがって認可すべきではない。」という論調で話し合われることに、「何度“違う!”と声にならない声をあげ、こぶしを握りしめたことでしょう」と書いています。そもそも、何十人といる審議会のメンバーのうち、女性の委員はひとりもいなかったのでした。
 堀口医師からの「もしかして妊娠してしまったかもしれない、という不安を抱えて指折り待つ女性たちの不安、月経がはじまりほっと安堵する気持ちを彼らは知っているのでしょうか。わたしたちは女性の代弁者として、かつ専門家として、きちんと意見を言うべきではないでしょうか。」という熱いメッセージは、ジャーナリスト芦田みどりさんの仲介を得て、数十人の女性たちに届けられ、初夏のある日、堀口医師の自宅にメンバーがあつまりました。
 これは、興奮する出来事でした。お互いに名前は聞いたことはあるがはじめて会ったプロフェッションルたちが、はじめて、個人として感じていた女性医療の実態への疑問や不信について語り合ったのです。そして「私たち自身がきちんと情報を得、女性の目からみた、冷静で科学的な発言を、医療や行政に対してしていこう!」と意見が一致し、「性と健康を考える女性専門家の会」が立ち上がったのでした。
(会の名前が決まる前、当会は1107の会(いいオンナの会)と呼ばれ、11月7日に設立集会が予定されていました。現在もメーリングリストのアドレスにその番号が残されています。実際の立ち上げは、11月8日に行われました。)
 そして、1999年7月にピルが日本ではじめて経口避妊薬として認可され、9月に発売されるまで、当会の活動はたいへん活発で、実に多彩なセミナー、シンポジウム、勉強会、アドボカシー活動を行ってきました。
 思い出に残るのは、設立集会となったコロンビア大学のキャロリン・ウェストホフ助教授による「ピルの認可を求めて」、500名以上の参加者を集めて行われた、スウェーデンのカロリンスカ大学のハーゲンフェルト教授ら世界の名だたる講師陣によるシンポジウム「21世紀の女性医療」です。会員の熱気と会の若いエネルギーの感じられる催しでした。
 また、主な女性議員たちに働きかけたり、旧厚生省、日本産婦人科学会、日本母性保護医協会、テレビや新聞の関係者など、私たちが会ってアドボカシーを行った人々は多岐にわたりました。その間、「ピルと女性の健康」検討資料集、避妊ガイドブックなどメンバーの手によって出版、製作された本や資料のいくつもが、ピル認可後の使用指針になっています。
 認可が決定した1999年の5月には、事務局である朝日エルの会議室に堀口会長以下主だったメンバーが集まり、祝杯をあげました。この2年間の間に、一部専門家や官僚、政治家のあいだで、ピルは、「エイズを蔓延させるもの」から「女性が主体的に利用できる科学的な避妊法のひとつ」として認識が変わってきました。
 しかし、認可されても、国民の多くのあいだでは、あいかわらずピルといえば、「副作用がある、ホルモンはこわい、自然でないものはやめたほうがいい」という偏見や誤解が強いという現状は変っていませんでした。一般の女性たちの科学的知識が増え、心身と社会的な健康に対する認識が高まり、自己価値感と性の自己決定能力が育たなければ、避妊薬(望まない妊娠に対する予防薬)としてのピルは服用できないということがわかったのです。また、多くの産婦人科や他科の医療者たちの方も、偏見があり管理的・指示的で、女性たちに正しい知識を提供し、女性たちの選択を重んじてピルを処方することが難しい状況が浮かび上がってきました。
 そこで、私たちは、どのようにすれば、日本女性たちが予防と生涯健康の視点を育て、証拠に基づいた科学的な情報を得、個々のライフスタイルに合わせて情報の選択と利用を行っていけるのかを次の課題として活動するようになってきました。
 2000年に作成した会の紹介パンフレットには、以下のように書かれています。
 この50年間に女性のライフスタイルはすっかり変わっています。身体の成長と性行動の開始が早くなり、産む子どもの数は少なくなりました。一方で高学歴化し、職業をもって社会参加するのがあたりまえになりました。寿命も飛躍的に延び、閉経後の人生は30年以上に及んでいます。それにともない、長い人生をどうやって健康の質(QOL)を保ちながら豊かに生きるかが新しい課題となっています。
WHOは、身体のみならず精神も社会的な状態も、すべて良い状態(Wellbeing)であってこそ、真の健康と言っています。私たちは、女性の健康の専門家を目指して、証拠にもとづいた正しい情報を提供し、わが国に包括的な女性医療・保健システムを実現するために活動をしています。
 このころから会は新しいメンバーを次々に迎え、第二期とも言える時代に入りました。ピルの問題を通してはっきりしてきた女性医療・保健の課題に多方面からとりくむプロジェクト活動が中心になりました。健康啓発(ヘルスエデュケーション)、学校や地域での性教育、自己決定能力の育成などを柱として、10を超えるプロジェクトが誕生しました。内科・産業医や精神科医、研究者などを中心とした「働く女性の健康プロジェクト」は、すでに何度も新しい形のセミナー・シンポジウムを展開しておりましたし、薬剤師たちが中心になって「くすりプロジェクト」がCASP(エビデンスに基づいた論文評価法)の勉強会を開催、また医療者として自立し行動していこうとする「助産師エンパワーメンプロジェクト」、避妊ばかりではなく性の健康を社会的に考えようとする「STD予防プロジェクト」「十代の健康プロジェクト」など、職域を超え学際的に活動しようとする多種多彩な会員たちの自由闊達な活動が広がっていきました。
 ふりかえってみますと、これまでの活動は以下のように多岐にわたっています。
1. 政策への提言
低用量経口避妊薬の認可を求めて
新しい女性医療システムを目指して
十代の性教育の充実を求めて
2.シンポジウム・セミナー
「21世紀の女性医療」
「性感染症や中絶から十代を守ろう」
「避妊カウンセリング―日本とアメリカ」
「働く女性の健康」
「働く女性のメンタルヘルス」
「中高年女性の健康―Complete Wellnessとは―」
「女性の健康とクスリ」
「くすりCASP勉強会」
「出産シンポジウム」他
3.リーダーシップ研修
ピル講師養成講座
十代への性教育講師養成講座
4.調査研究
日本女性の性・避妊行動調査
メディアの性感染症の取り上げ方についての研究
5.出版・編集協力、ビデオ、スライド作成
6.広報活動
年4回のニュースレター発行
インターネットホームページの運営
7.ネットワーク形成
日本女医会、米国女医会、ほか国際アドバイザー多数との交流

 また、臓器別ではなくトータルな人間として診る統合医療を臨床で実践しようとする女性総合医療も、当会会員を中心に各地で試みられるようになりました。岡山や福岡での試みはその先駆とも言えます。また、医学的にも性差医療(ジェンダースペシフィックメディスン)が注目され、男性と女性の生物学的、遺伝学的、医学的、社会的差異について検討されようとしています。
 2003年。女性医療・保健は「健康日本21」でリプロダクティブヘルス・ライツの項目として掲げられ、わが国の医療・保健の目標として推進されようとしています。しかし、ひとりひとりの人間によりそい、自己決定を支援しようと私たちが求めてきたトータルな医療・保健の実現には、まだ遠い道のりであるといえます。とはいえ、この数年、当事者主体の医療改革のムーブメントには目をみはるものがあり、これからは、ますます当会が、専門家でありかつ当事者の視点を失わない活動を、真に一般女性の健康と幸福のために展開できるのかどうかが、試されることでしょう。
 最後に、私たちが、生涯にわたる女性の真の健康を実現していくために、今後活動してゆくための5つの柱を掲げたいと思います。
  1. 従来の母子保健制度の枠を超え、女性の健康の視点からリプロダクティブ・ヘルス/ライツの推進をしていきます。妊娠や分娩ばかりでなく、月経、不妊、望まない妊娠や性感染症、更年期、女性ホルモンの積極的利用などについても積極的に考えていきます。
  2. 総合的な女性の健康(Women's Health)を実現させる医療や保健システムの確立にむけて活動していきます。栄養や睡眠、ストレス、がん予防、メンタルケア、思春期や高齢者の健康問題など、女性の健康にも学際的な研究や医療の提供が必要とされています。
  3. 子どもからおとなまで、男女一緒の性と健康に関する教育を実現させていきます。従来の性教育を見直し、個人の人権を尊重した科学的な健康教育が必要です。わたしたちは、「性」と「こころ」の自己決定をサポートしていきたいと考えています。
  4. 科学的な証拠に基づく医療(EBM)の考え方を導入し、わが国の女性の健康に関する学際的研究を行っていきます。
  5. 患者や障害者、高齢者、子どもなど弱者にやさしい医療や社会の構築を提言します。パターナリズム(家父長主義)を廃し、ひとりひとりの人間が尊厳のある個人として大切にされる、心地よい社会環境を実現していきます。

 ◆以上引用◆

すばらしい理念なので、理念を賞賛するとのタイトルを付けました。
理念にそったすばらしい活動も行いました。
たとえば1999年12月に性と健康を考える女性専門家の会は、
ガイドライン等に「2日以上のみ忘れたら止めるように書かれているが、
それでは妊娠リスクを上げてしまう」として厚生省に改善の申し入れを行いました。
この服用法では妊娠回避効果が全くないだけでなく、
血栓症リスクを高めてしまいます。
理念もすばらしいが活動もすばらしい、と賞賛しておくことにします。

もし私が後代の歴史家であったなら、
「性と健康を考える女性専門家の会」とそのメンバーの言説に即して日本におけるピル受容を考察するでしょう。
私は後代の歴史家ではないので、それは控えておきましょう。

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以下は余談です。蛇足です。
18世紀後半、世界各地に啓蒙専制君主が現れます。
明治日本も啓蒙専制君主の国と似ています。
啓蒙専制君主の改革は一定の成果を上げます。
しかし、社会を根底から改革することは出来ませんでした。
啓蒙専制君主の国では、日本の自由民権運動のような運動が起こります。
下からの運動です。
啓蒙専制君主と下からの運動は、共通する理念を持っていました。
しかし、どの啓蒙専制君主の国でも、下からの運動は抑圧されます。
そのような歴史がありました。

なお、余談の余談になりますが、
「ピルとのつきあい方」はずっと飲み忘れの問題を取り上げてきましたし、
ブログでは産婦人科医の犯罪的怠慢の記事を書きました。
 避妊失敗のリスク、血栓症副作用のリスクにピルユーザーが曝されているなら、
ピルユーザーに注意を喚起したいからです。

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2013年10月20日日曜日

黒を白と言う産婦人科界隈による「啓発」

グーグルでHRTを検索すると検索結果トップに出てくるのは、
エンジョイ エイジング【更年期障害の情報サイト】」です。
HRTはホルモン補充療法(hormone replacement therapy)のことです。
久光製薬の提供サイトですがサイトには同社のロゴが表示されるだけで、
ほぼどのページにも監修者の日本女性医学学会理事長名が最上部に表示されます。
日本女性医学学会理事長の監修した信頼できるサイトのようです。
「HRTの気になる副作用」のページを見てみました(保存ページが別窓で開きます)。
HRTと乳癌の関係をめぐっては延々と議論が繰り返されていますが、
HRTによって乳癌リスクはやや高くなるとするのが一般的見解で、
一部に変わらないとする見解があります。
ところが、「エンジョイ エイジング」では以下のように説明されています(クリックで拡大)。


同ページでは、
HRT経験者に乳がんが増えるわけではなく、むしろHRT未経験者に比べて乳がんになる危険性は半分以下だったのです。」
とわざわざ赤字で書かれています。
目を疑ってしまいました。
説明を読んでみると、トンデモなトリックが使われていることがわかります。
乳癌罹患と年齢の関係は、40歳代までの罹患が45%、50歳代までの罹患が77%です。
乳癌に罹患するとHRTの絶対禁忌に該当しますので、
HRTは行われません。
乳癌罹患者にHRT経験者が少なくなるのは当然のことです。
乳癌罹患者のHRT経験率が低いからといって、
乳癌罹患者はHRTをしなかったから乳癌リスクが上がったのではありません。
逆にHRTを経験すると乳癌リスクが低くなるなども言えません。
HRTの乳癌リスクはHRT経験者とHRT非経験者で比較しなければ意味がありませんし、
そのような比較データなど山ほどあります。
わざわざ意味のないデータを持ち出して、
HRT経験者の乳癌リスクは半減するなどトンデモにもほどがあります。

女性医療における情報提供の重要性


ピルもそうですしHRTもそうなのですが、
女性医療には殊の外に選択に委ねられる事柄が多くあります。
HRTにはメリットもリスクもあります。
更年期の症状を抱える女性にとってHRTは選択肢の一つです。
乳癌リスクが多少上がっても現在の症状がなくなるなら選択する女性もいるでしょうし、
乳癌リスクが多少とも上がるのなら他の選択をするという女性もいるでしょう。
この選択決定において重要なのは、
リスクについての正確な情報です。
正確な情報がなければ選択の決定ができません。
医療の役割は正確な情報提供を行い、女性の選択をサポートすることです。
その情報提供が、HRTで乳癌リスクが半減するかのようなトンデモではお話になりません。
これはたんにHRTの乳癌リスク問題ではなく、
非常に根の深い問題です。
他のエントリーで1970年米国上院のピルについての公聴会は、
女性医療ひいては医療全般の転換点になったと書きました。
以来、医療の役割は決定する人から情報提供する人に変わっていきます。
日本ではこの転換がなかったので、いまだに医療が決定する人を演じています。
医療が決定する人であれば、決定を合理化(正当化)する言説になるのもやむを得ないでしょう。
HRTで乳癌リスクが半減するかのようなトンデモは、そのような背景から生まれます。

ピルやHRTが普及しない理由


1970年米国上院のピルについての公聴会は歴史的な事件でした。
製薬メーカーの提供するバラ色の情報に対抗する客観的な情報を
どのように提供するかが課題となりました。
1970年公聴会事件の背景には女性運動の高まりがあり、
女性団体は客観的な情報の提供に力を入れていくことになります。
欧米のフェミニズムは当初より身体への関心を強く持っていましたが、
日本のフェミニズムはその側面を切り捨ててきました。
そのため日本では「選択する人」の側からの情報提供がなされませんでした。
また、欧米では政府など公的機関による情報提供も充実していきました。
公的機関による情報提供も「選択する人」のための情報提供です。
製薬メーカーと医師が一体となってビルやホルモン補充療法の【推進派】が形成される日本の状況は、
異常な光景なのです。
この異常な光景の中でビルやホルモン補充療法が普及することは、
絶対にあり得ません。
ビルやホルモン補充療法を選択するかどうかは、
個人個人で皆異なる事情があります。
遠距離恋愛で年に数回婚約者と会う女性と、
結婚後だが数年は仕事に力を入れたい女性と、
ボーイフレンドができたばかりの女性では、
避妊法の選択が異なっても不思議ではありません。
一律にピルという選択がよい、とは他者には言えないことです。
ビルやホルモン補充療法の【推進派】などというものが存在すること自体、
奇妙なことなのです。
選択と言うことに着眼しなければ、
【推進派】がいくら旗を振ってもピルやホルモン補充療法は普及するものではありません。
「ピルとのつきあい方」は選択のための情報提供を目指した日本では異端の、
世界では当たり前のサイトでした。
手前味噌ですが、おそらく「ピルとのつきあい方」ほど日本でのピル受容に貢献したサイトはありません。
ビルやホルモン補充療法は個々人の選択に委ねられるべきもの、との本質に立脚しているからこそと考えています。


【推進派】の生み出す不毛な光景


旅行には移動手段が必要です。
飛行機、新幹線、列車、バス、自家用車、タクシー、船、・・・。
それぞれはそれぞれにメリットがあるので使い分けます。
飛行機は新幹線より運賃は多少高いし事故のリスクもないわけではないが、
早さを考えればそれは問題ないと考える人もいるでしょう。
費用が一番の問題と考え夜行バスを選ぶ人もいるでしょう。
人によっても、場合場合によっても、選択は異なります。
それぞれのメリットとデメリットがわかっていれば、
選択はだいたい落ち着くところに落ち着くものです。
ビルやホルモン補充療法は飛行機のようなものかな、
と私は思っています。
メリットもあればデメリットもあります。
情報化時代にデメリットを隠しても意味はありません。
飛行機はとても低い確率ですが事故はあります。
航空会社は事故がないとは言わないでしょう。
飛行機に乗ると、世界中どこの航空会社も緊急時の対応をうんざりするほど繰り返します。
事故があるかもしれないとの前提で対応しているのです。
緊急時の対応をアナウンスすれば事故を心配して利用者が減る、
などと考える航空会社はありません。
もしそんな航空会社があれば、
私は利用したいとは思いません。
ところが、日本の【推進派】は副作用(事故)の情報を知らせると、
利用者が減ると考えているようです。
NPOは「日本国内では(ピルは)「怖い薬」が先行しているため、利点をツイートする」と述べました。(血栓症初期症状を説明している医師は21% 参照)
副作用隠しです。
上で見た「HRT経験者に乳がんが増えるわけではなく、むしろHRT未経験者に比べて乳がんになる危険性は半分以下だったのです。」
などは、もっと悪質な副作用隠しです。
このように副作用隠しを行っても、副作用の情報は広がります。
いや、副作用隠しを行うから、尾ひれの付いた副作用情報が広まってしまうのです。
その中には確かに偏見もあるでしょうが、
根本の問題は【推進派】の副作用隠しです。
一般の人々に選択するための情報提供が行われないから偏見的副作用情報が広まるのです。
そこで【推進派】は副作用の偏見を取り除くためと称してバラ色情報を振りまきます。
完全に悪循環になってしまいます。
この悪循環から脱するためには、
「ピルとのつきあい方」のような情報提供のあり方が有効なのです。
ところが実際は「ピルとのつきあい方」は、【推進派】から毛嫌いされているようです。
私は、HRTで乳癌が半減するなどと言うのはトンデモだとはっきり言います。
トンデモをトンデモと言われると【推進派】は逆ギレするようです。
※ピルの普及推進を唱えるグループは2005年以来、「ピルとのつきあい方」を中傷する活動を行ってきました。捨てアカの使用はこのグループの常套手段です。なお、このツイートは@ruriko_pilltonがツイッターを始める(2012年08月28日)前のもの。

2005年から延々と繰り返された【推進派】による当サイト中傷を6年間無視してきましたが、
2年ほど前からはきっちり反論するようにしました。
結果的に【推進派】のトンデモぶりが露呈されることになりました。
【推進派】的な啓発が逆効果しか生まないことは証明されています。
荒療法が必要なのです。

抜きがたい権威主義


「どこの誰が書いたのかわからないようなサイトを信用するな」
ピル【推進派】が唱え続けている呪文です。
そして、信頼できるのは監修つきの製薬メーカー情報だと主張します。



ため息が出そうです。
ピルの歴史は1970年の米国上院公聴会から大きく変わりました。
製薬メーカーが流すバラ色のピル情報が糾弾され、
女性はピルを与えられる人から選択する人に変わりました。
情報の質も大きく変わりました。
この歴史を知っていれば、
彼らのやっていることは歴史の針の40年逆戻しのように思えます。
歴史の針を40年逆戻ししてピルが普及するわけがありません。
ピルやHRTは医師が与える薬ではなく、女性が選択する薬です。
選択する女性にとって必要な情報は、
隠すところのない客観的な情報です。
「エンジョイ エイジング」は日本女性医学学会理事長の監修であることを強調しています。
そのこと自体が既に権威主義的です。
現在の日本には権威主義が通用する状況があることは事実です。
もし当サイトが「HRTのうれしい副効果、HRTで乳癌が半減すると判明」などと書いたら、
すぐにトンデモ扱いされるでしょう。
しかし、日本女性医学学会理事長監修だとだれもトンデモをトンデモ扱いしません。
ニセ科学クラスターの方々はさまざまなトンデモをあげつらうのが趣味ですが、
権威者のトンデモに異議を唱えたのを見たことがありません。
彼らもまた権威主義の枠内の人のように見えます。
メーカーはこのような状況を利用しようとしているのですが、
それは選択する薬であるピルやHRTには通用しません。
自分の飲む薬については納得できるまでよく考えるからです。
よく考えるとトンデモクラスターに引きつけられる人も出てきます。
「ピルとのつきあい方」にはトンデモな内容は含まれていないと考えていますが、
当サイトをトンデモ扱いすれば真性トンデモの肥料となるでしょう。
ここでも悪循環が生じます。


ピルは自由の薬です。
ピルは女性の自立と密接に関係した薬です。
このことが理解されるのには100年かかるかもしれません。
しかし、いつかきっと理解される日が来ると信じています。

2013年6月29日土曜日

ルナベル・ヤーズの錬金術

イギリスのピルの値段についてツイートしました。

リンク先は医療関係者向けのプレゼンテーション資料を保存したサイトです。
イギリスではピルの処方をするのは産婦人科医だけではありません。
日本でいえば保健師さんもピルの処方をしています。
地域でピルの処方をしている医療関係者向けのトレーニング資料ですが、
ピルは若い女性向けの避妊法であるとか、
種類の選択が重要とか興味深い内容となっています。
ピルには相性があるので相性にあわせてと選ぶと、
「ピルとのつきあい方」は14年前から書いてきました。
それと重なる内容が示されています。
ピルの選択と関係してピルの価格も示されているのです。
ツイートしたようにNorinyl1というピルは日本円換算で1シート110円です。
Norinyl1はノリニール1と読みます。
日本ではシンフェーズとノリニールという3相性低用量ピルが認可されましたが、
そのノリニールと名前は同じでノリニール1となっているのは1相性のノリニールという意味です。
このNorinyl1はオーソM・ルナベルと成分用量がまったく同じです。
全く同じ成分用量のピルの価格を図にしてみました。
図にソフィアAを入れたのは、中用量ピルに分類されるピルですが、
オーソM・ルナベルと同じ黄体ホルモンの似たピルだからです。
(※Norinyl1には、Norinyl1+35とNorinyl1+50の2種類がある。この記事のNorinyl1はNorinyl1+35について書いている。)



図を見るとNorinyl1とソフィアAは、ほぼ同じ薬価になっているのがわかります。
つまり、百数十円の薬価となっており、その中にコストと利益が含まれています。
オーソM・ルナベルはNorinyl1と同じピルなので、Norinyl1とコストはほぼ同じと考えられます。
コストにNorinyl1やソフィアAなみの利益を上乗せしたものが、
オーソMやルナベルの適正価格と考えられます。
つまり、表に示した4製品の適正価格は皆ほぼ同じで、百数十円となります。
ところが、オーソM・ルナベルの実売価格・薬価は、それぞれ約2600円と約7000円です。
適正価格との間には大きな差があります。
それを政策プレミアムとしてモザイクで示しました。


ルナベルの薬価6990円は、政府が政治的判断で決めた政治薬価です。
適正価格との差が6800円にもなります。
つまり、ルナベルの薬価の大部分は政策プレミアムからできているのです。
政府がルナベルに法外な高い薬価を設定したのは、
2つの目的からだったと推測できます。
ピルの値段が下がってはピルが普及してしまいます。
ピルの普及を阻止するためには、ピルの価格が下がらないようにする必要がありました
7000円の薬価を設定すると個人負担額は2100円程度です。
自由診療のピルに価格の標準を作ることを意図したのでしょう。
実際、保険適用でないピルの価格はこの2100円程度を指標とした物になっています。

もうひとつの狙いは、業界の懐柔でした。
原価が100円以下の薬を約7000円で販売すれば、
売上のほぼ全てが業界の利益となります。
ケタ違いの利益が業界に分配されることになったのです。
ルナベル認可後、ピルは避妊だけでない、子宮内膜症や月経困難症にも効果があると啓発されることになりました。
ピルは避妊などと言うしみったれた効能の薬ではなく、「ライフ・デザイン・ドラッグ」だというわけです。
脱避妊薬路線を誘導するのに政策プレミアムが利用されたのです。

ルナベル認可前の2004年、「ピルとのつきあい方」は、
ルナベルの薬価は中用量ピル並の「適正価格」以外あり得ない、
との主張を展開しました。
もし、適正価格150円のルナベルが実現していれば、
オーソMはもちろん他のピルも皆150円に近づいていったでしょう。
イギリスは、ドイツは若者のピルが無料だと羨まなくてすむ国になっていたのです。
治療目的でピルを服用する女性の経済負担も極小にすることができたのです。


「ピルとのつきあい方」は2004年から異端児になりました。(参照ピルユーザーの願いが実現しない仕組み)
私は、間違った主張をしたから異端児になったのではなく、
まっとうな主張をしたから異端児になったのだと考えています。




2013年4月5日金曜日

脱ピルと卒ピル

下の図は当ブログで何度も使っている図です。
フランスの避妊法選択が年齢別に示されています。
 「ピルのみ」と「ピル+コンドーム」の合計がピルユーザーです。



18-19歳のピルユーザーは78.2%(55.2+23.0)で、この年齢層でピークとなります。
20歳を過ぎるとピルユーザー率は減少していくのですが、
ピルから移行する避妊法は、主として「他のホルモン避妊法」と「IUD」です。
「他のホルモン避妊法」は、パッチ・膣リング・インプラントなど非経口避妊薬です。
特に30歳を過ぎると「IUD」への移行が目立ちます。
大雑把に見ると出産前年齢のピル、出産後年齢のIUD、
という選択がなされているのがわかるでしょう。

ピルできっちり避妊しピルを卒業するの卒ピルです。

ピルユーザー80%の秘密

上の統計ではピーク時年齢層でのピルユーザー率は78.2%にも達しています。
このような高いピルユーザー率は、フランスなど西ヨーロッパにだけ見られる特色です。
アメリカではこのような高いピルユーザー率になりません。
なぜ、ヨーロッパではこのような高いピルユーザー率になるのでしょう。
その理由は3つあります。

①値段

フランスのピルの値段は、2ユーロ程度。1シート300円しない値段です。
フランス在住日本人女性のブログには驚きが以下のように綴られています。



「それがフランスでは! 保険が効くとは聞いていたが、こんなに安いとは…。日本と同じタイプを処方してもらって、薬局に行くと、3ヶ月分が1セットになった箱があり、それがなんと5.09ユーロ。で、保険適用後の値段が1.78ユーロ! 1ヶ月分で91円、100円もしないのだ! これにミューチュアルと呼ばれる、任意加入タイプの保険に入っておくと、保険でカバーされない部分を払ってくれるのでタダになるんだとか。
そしてこれまた驚いたのが、フランスでは高校生はピルがタダ。STDはどうしてるのか別として、望まない妊娠を極力減らし、女性の選択した時期に、職も失わず、経済的な不安もなく、妊娠・出産してほしいという政府の狙いでしょう。これは大当たりだと思う。なぜってフランスの出生率はヨーロッパの中でもトップレベルなのだから。」
http://asparagus99.blog94.fc2.com/blog-entry-34.html

フランスのピルの値段は異常なのでしょうか。
違います。
日本で中用量ピルのプラノバール・ソフィアAの薬価(1錠)は、
それぞれ13.9円・8.2円です。
1シート21錠の価格はフランスと変わりません。
これがピルの適正価格なのです。
フランスでは低用量ピルも適正価格なのに対して、
日本では低用量ピルの価格が異常価格になっているだけの事です。

②脱ピルの少なさ

上の表をもう一度見てみましょう。
18-19歳のピルユーザー率は78.2%です。
この年齢層がピークなのですが、
20-24歳でも75.2%でほとんど変わっていません。
20-24歳の年齢層ではピルユーザーの一部が「他のホルモン避妊法」に移行しています(5.1%)。
この二つの年齢層を通じてみると、
18歳から24歳まで80%弱のユーザー率がキープされているのがわかります。
いったんピルユーザーになるとほとんどピルユーザーを止める女性はいなくて、
少数のピルユーザーを止めた女性は「他のホルモン避妊法」に移行するのです。
継続率が高くなければ80%弱のユーザー率をキープすることはできません。
アメリカのピルユーザー率がヨーロッパと較べて低いのは、
継続率が低いためです。
高い継続率は安い価格と関係しますが、
それだけでは高い継続率は実現できません。
もう一つの理由が関係しています。

③自立的ピルユーザー

頭痛で鎮痛剤を飲む事はそれほど難しくありません。
頭痛薬に限らず治療薬には明確な動機付けがあります。
症状が服用を促すのです。
ピルは、たとえ治療目的で服用するにしても、
症状が服用を促しません。
それでも毎日規則正しく服用し続ける薬です。
ピルを服用した事のある人でないと、
毎日飲み続ける事の困難さは理解しにくいかもしれません。
さらに、服用初期には少なくない人が不正出血などのトラブルを経験します。
それもピルの服用をくじけさせることがあります。
アメリカでもヨーロッパでもピルを一度は試してみる女性は9割程度いるでしょう。
ヨーロッパでは脱落者が少ないのに、
アメリカでは脱落者が非常に多くいます。
ピルユーザーがピルの服用から脱落することを脱ピルと言います。
脱ピルの多寡がピル普及率の差になっていると言ってもよいでしょう。
では、アメリカのユーザーとヨーロッパのユーザーの違いは何でしょうか。
アメリカのピルユーザーはピルの服用をハウツー的に理解する傾向があります。
ヨーロッパのユーザーピルの服用を原理的に理解する傾向があります。
ピルを原理的に理解するヨーロッパのユーザーは、
問題が起きてもくじけずに継続的ユーザーになるのではないかと感じます。
逆にハウツーマニュアルでピルを服用しているアメリカのユーザーは、
少しトラブルがあるとピルの服用を止めてしまうのかもしれません。

日本の状況

下は、日本のピル普及率を示した図です。



2008年調査では3.0%に達していますが一時的な増加にとどまり、
基本的には2%弱の水準で変化していない事がわかります。
この10年間、新たにピルユーザーになる女性の数とピルユーザーを止める女性の数は、
毎年同じであった事を示しています。
このデータはとても恐ろしい事実を暗示しています。
10年の間に新たにピルユーザーになった女性の数と、
この間にピルユーザーを止めた女性の数が同じです。
毎年30万人が新たにピルユーザーとなっても、
毎年30万人が脱ピルしている事になります。
これを10年間繰り返すと300万人の元ピルユーザーを生み出す事になります。
ピルを止めた元ピルユーザーの中には、
出産のために卒ピルした女性も含まれています。
しかし、恐らくそれはピル普及率停滞の理由ではありません。
アメリカのピル普及率がヨーロッパと較べて低くなる条件があります。
その条件を更にひどくしたのが日本の条件です。
現在のピルの利用環境が続く限り、
日本のピル普及率は低迷を続けるでしょう。


2013年4月4日木曜日

エナ大通クリニックの事

鬼のお気に入り

北海道にエナ大通クリニックという病院があります。
といっても、実際に行った事も見た事もありません。
当サイトには、「ピルユーザーが作るまあまあ病院リスト」があります。
エナ大通クリニックも登録された病院の一つです。
このリストに登録された病院はチェックするようにしています。
病院のサイトはどこもあまり変わり映えしません。
ところが、エナ大通クリニックのサイトには、
何か惹きつけられるものがありました。
この病院ならオススメできるのではないかと考え、
おすすめマークをつけました。
鬼のオススメは迷惑かもしれませんが。(阿修羅だったイエス 参照)

不打落水狗(中国の諺)

中国の古いことわざに不打落水狗があります。
直訳すると水に落ちた犬を打つな、です。
窮地にある人に更に追い打ちをかけるような事をしてはいけない、という意味です。
(この諺の「不」を取り逆の意味の諺もあります。)
避妊に失敗し意図しない妊娠のリスクに直面している女性は、
水に落ちた子犬のようなものです。
何とか妊娠を回避しようと、
緊急避妊をしてくれる病院を探します。
緊急避妊が必要な女性をいかに救うか各国は腐心してきました。
日本には緊急避妊薬の値段をこともあろうに高くするよう進言した医師がいるようなのです。
その結果、ノルレボの価格は15000円前後となっています。
ヨーロッパ諸国では、1000円以下だったりせいぜい3000円程度です。
ノルレボの異常価格の内幕については、
「もう一つのノルレボ物語1-12」で書きました。
その話の第9回は「良心的医師の悲鳴」です。
ノルレボの異常価格に異議を唱えた医師がいました。
それはそれで評価できる事なのですが、
口先で嘆いてもやはり15000円前後の代金となっています。
その中で、ノルレボをほぼ納入原価で提供している病院があります。
その一つがエナ大通クリニックです。
その決断にはただただ頭が下がります。

避妊で利益を求めない欧米の病院

ノルレボタイプの緊急避妊薬の値段は、
フランスで8ユーロ、ドイツで17ユーロ、イギリスで25ポンド程度です。
日本円では1000円から3000円程度です。
メーカーも病院もこの価格で赤字ではありません。
メーカーは500円でも利益が出ますから、
上記の値段でも病院は赤字にならないのです。
500円でもよい納入価格を1万円などというふざけた価格にしているのが日本です。
メーカーもメーカーなら病院も病院です。
ヨーロッパで小売価格が1000円から3000円なのですから、
病院や薬局の利益は当然それより小さい額です。
日本の価格が15000円とすると病院利益は約5000円です。
病院の得ている利益もヨーロッパより数倍高いのです。
なぜ日本とヨーロッパはこんなに違うのでしょう。
このことについては別エントリーで書く事があるかもしれません。
簡単に言うと、確実な避妊はほとんど全ての女性の抱えている問題です。
その避妊に関与すれば、ほぼ全ての女性と、しかも年齢の低いときから、
コンタクトを持つ事ができます。
避妊薬の販売で利益を上げるのではなく、
生涯にわたる健康管理が病院の役割になっています。
先進国の子宮癌検診率は軒並み日本の3倍ですが、
それはピルや緊急避妊薬の超お手頃価格によって実現しているとも言えます。

ピルの勉強会を行う病院

日本はピルや緊急避妊薬の病院納入価格が国策統制価格なので、
ピル1シートがランチ代程度の価格は実現しません。
病院が利幅を薄くしてもヨーロッパのようにはならないのです。
避妊用として普及しない価格のピルを普及させようとすると、
副効果を強調せざるを得ないという構造になっています。
このような環境の中でもがんばっている病院があります。
エナ大通クリニックもその一つです。
エナ大通クリニックの低用量ピルアドバイザーyunさんのブログは、
ぴるぶろ」です。
この病院にしてこの人あり、この人あってこの病院あり、
と感じました。
2010年05月30日のブログには、以下のように書かれていました。

ピルの仕組みを理解して
自分自身で自由に生理をコントロールして
自分の生活をもっともっと楽しめるようにしましょう
自分で出来るってところがポイントです
自立したピルユーザーになっていきましょ
もちろん、
不安がある時などはいつでもピル外来で聞いてくださいね
誰もが最初は不安ですが、大丈夫ですよ
(私が内服し始めた頃は誰も周りに内服していた人がいなかったので
いつも自分が実験台で、色々試して現在に至っています)
http://ameblo.jp/enaoc/entry-10547409489.html

当サイトは開設当初から自立的ピルユーザーになってほしいとの願いを持っていましたが、
「自立的ピルユーザー」という言葉を使ったのは新編になってからです。
それより先に、「ぴるぶろ」には「自立したピルユーザー」と書かれているのです。
感銘を受けました。
yunさんは「ぴるぶろ」だけでなく、一般向けのピル勉強会も開いているようです。

当サイトは、13年前にピルには相性があると書きました。
当時、全然理解していただけなかった事です。
ところが、「ぴるぶろ」にはピルに相性がある事が当然の事のように書かれていて、
「ピルチェン」(ピルチェンジ)という言葉まで編み出されていました。
エナ大通クリニックでは、全種類の低用量ピルをそろえているとの事です。
感慨深いものがあります。

エナ大通クリニック関係者の他のブログにもざっと目を通してみました。
私の印象は、この病院には自由がある、でした。
私は自由教の信者です。
自由が人を成長させるし、自由がいいアイデアを生み出すと考える人です。
エナ大通クリニックでは、ノルレボにピル1シートがついて1万円です。
上に、避妊で利益を求めない欧米の病院と書きましたが、
それでも赤字でピルを出す病院はありません。
エナ大通クリニックのこの価格は、ある意味でヨーロッパの病院以上です。
この病院にしてこの人あり、この人あってこの病院あり、
と思った所以です。

エナ大通クリニックの努力を忘れまい

エナ大通クリニックが行ってきた事、行っている事は、
必ず札幌の日本の女性の支持を得る事ができるでしょう。
しかし、だからといってこの病院の受診者が急増したり、
ピルユーザーが急増したりする事もないでしょう。
エナ大通クリニックは身を切る努力をしているのですが、
国策価格がある以上その努力は十分に報われません。
病院が身を切る努力をしても、
なおピルが普及する価格よりも遥かに高い価格なのです。
ただ、エナ大通クリニックとyunさんの志を忘れてはなりません。
私はそう思います。

阿修羅だったイエス

避妊薬ピルが解禁になり13年余。緊急避妊薬ノルレボ発売から2年弱。
日本にはOC(ピル)を普及させると唱え、ノルレボを推奨するという人は少なくない。
しかし、現実は中用量ピルが低用量ピルに置き換わっただけだ。
それは当然の事なのだ。
中用量ピルの10倍、20倍の価格にして普及するわけがない。
価格の国家統制を不問にし、女性の無知が普及の障壁だと言う。
望まない妊娠と中絶の問題があるのに、
OC(ピル)はQOC(生活の質)改善薬だと強調する。
ノルレボの価格は、
日本でのピルの第一人者といわれる医師の病院もその値段(27000円)」
だったりする。
何か間違っているのではないか?
OC(ピル)を普及させると唱える仲よしグループが跋扈しても、
何も変わらない。
それどころか、日本のピルの灯は消えてしまうかもしれない。


帝釈天は力の象徴。阿修羅は正義の象徴。
阿修羅は元々善神であったが、その常に闘う心ゆえに鬼神となった。
仏教は阿修羅を仏法の守護神と位置づけた。
阿修羅は鬼の形相と正義の心の両面を持つ。
仏像としての阿修羅像は温和だ。
阿修羅の形相を見ずに心を形にしようとしたからだ。
私には阿修羅とイエスが重なる。
「わたしが来たのは地上に平和をもたらすためだ、と思ってはならない。
平和ではなく、剣をもたらすために来たのだ。」(「マタイ伝」10)


戦いの鬼神阿修羅が仏法の守護神であったように、
日本のピルを守るのは鬼ではないのか、
鬼が必要なのではないのか。

2013年3月21日木曜日

ピルは和製英語?

ピルは世界共通語

「英語でピルはたんに錠剤の意味で、経口避妊薬をピルというのは和製英語だ」
1999年のピル解禁以来、繰り返されている言説です。
ピルは和製英語なのでしょうか?
答えはノーです。
英語のthe pill、ドイツ語のdie Pille、フランス語のla pilule、イタリア語のla pillolaは全て経口避妊薬の意味を含んでいます。

ピルがピルとなったわけ

ピルは和製英語どころか、世界共通語ともいえます。
もともと錠剤の意味のpillが経口避妊薬を意味するようになるのには、
ある事情が関係しています。
1940年代から50年代にかけて、殺精子剤が避妊薬として各国で認可されます。
日本でも1940年代末には殺精子剤が使用されるようになりました。
この殺精子剤こそ元祖避妊薬です。
殺精子剤はタブレットであったり、ゼリーであったり、後にはフィルムであったりしました。
それに対して経口避妊薬は、錠剤でした。
タブレットやゼリーでない錠剤の避妊薬なので、
ピル(錠剤)と呼ばれたのです。
日本でも避妊ゼリーが単にゼリーと呼ばれたのと同じことです。
なお、tabletは平べったり錠剤、pillは丸い錠剤です。
お菓子のFRISK(フリスク)やカルミンのような形はタブレットで、
ピルとは言いません。

1999年以前のピル

1999年以前、日本ではピルは治療薬として認可されていましたが、避妊薬としては認可されていませんでした。
それでも、混合ホルモン剤は「世界共通語」のピルと呼ばれました。
1970年代には、ピルの避妊薬としての利用が急拡大しました。
(参照1970年代のピルブームについて考える)

 
ピルの避妊利用者数は、短期間に現在水準(2013年)を遥かに超える水準まで急拡大しています。
ピルという名称に問題があるわけではないのです。
現在、ピルユーザー数が低迷しているのは、高い価格など利用環境がピルの選択を阻害しているためです。
 
OCは和製英語?
 
経口避妊薬は英語ではOral contraceptive pillです。略称はOCPsとなります(参照 wikipedia)。
経口避妊Oral contraceptives の略でOCとの用法もあるにはありますが、医学用語としてもそれほど一般的ではありません。
OCPsやOCは医学用語として使用されるのであり、一般用語としては使用されることはありません。
ところが、1999年以後の日本では、ピルをOCに置き換えようとする動きが現れました。
日本家族計画協会の作成したサイトは、「OC for me」ですし、メーカーサイトは「OC情報センター」です。
ピルという名称をOCに置き換えようと必死だったことがわかります。
英語のOCは、一般用語としてオレンジ郡(Orange County)の略です。
ユーザーがピルのことをOCと言うことは世界中どこでもありませんし、
ドクターが患者にOCと言うこともありません。
ピルのことをOCというのは日本だけで、それは和製英語に近いものです。
 
いびつな避妊事情との関係
 
経口避妊薬を意味する「世界共通語」としてピルが使用されているのは、
殺精子剤との対比が意識されるからです。
殺精子剤はコンドームと併用するとピルに匹敵する避妊効果が期待できます。
欧米で殺精子剤は避妊法としてかなり幅広く選択されています(参照 フランスの避妊法選択)。
現在、日本では殺精子剤は発売されていませんので、
個人輸入でしか手に入りません。
日本は殺精子剤のないこれまた変な国なので、
経口避妊薬をピルという意味がわかりにくくなっているのでしょう。
 
よい子のOC
 
「世界共通語」とも言えるピルをわざわざ和製英語に近いOCに変える理由は何でしょうか?
考えられる理由はいくつかあります。
ピルには副作用など負のイメージがあるので、新しい名前を考えたのかもしれません。
しかし、誤解を含む偏見に対してはきちんと説明することで克服するしかありません。
イメージを変える姑息な方法が通用すると考えるのは、女性を馬鹿にしているように思えます。
考えられるもう一つの理由は、ピルの語が持つユーザー主体のニュアンスです。
当局・メーカー・病院からすると、ピルはcombined oral contraceptive pillという物質ですが、
ユーザーからすると数ある避妊法選択肢の中の錠剤の形の避妊法なのでピルとなります。
ピルという言い方自体に女性による選択という意味が含意されています。
世界でピルが共通語になっているのは、
この点を考慮し医師がユーザーの側に歩み寄っているからです。
避妊法の選択が女性の権利であると共通認識されているからピルとなっているのです。
経口避妊薬が権利ではなく医師の管理下で利用できる恩恵であるなら、
ピルよりもOCの方がふさわしい言葉なのかもしれません。
うがちすぎな見方ですが、OCという日本独特な言い方を見る度に不思議に思われます。

2013年3月4日月曜日

聖処女幻想の国(2)けがの功名だった改名


アメリカ産児制限連盟(the Birth Control Federation of America)は、
1942年にthe Planned Parenthood Federation of Americaに改名します。
改名の理由は「産児制限」の名称が、家族否定との誤解を生じる事にあったようです。
サンガーは新名称についてローズ(D. Kenneth Rose)に相談します。
ローズは「産児制限」の名称を捨てて、
代わりに「Planned Parenthood」を用いるように提案しました。
この新名称についてサンガーは難色を示したと伝えられています。
サンガーは自らの造語である「産児制限」に愛着を感じていました。
(以上、Linda Gordon, Woman's Body, Woman's Right (New York: Grossman, 1974, 1976).参照)
 
 
parenthoodの意味は、「親であること」です(参照)。
参照ページには-hoodのつく言葉について解説されています。
1942年の時点でおそらくparenthoodという英語はなく、
ローズの造語であったのではないかと想像します。
少なくとも、ポピュラーな英語ではなかったでしょう。
とすると、なぜローズはわざわざparenthoodという新語を造ったのでしょう。
新名称が家族否定の誤解をなくすためであれば、
Planned ParenthoodではなくPlanned Familyでもよかったはずです。
Planned FamilyでなくPlanned Parenthoodとされた謎は残されたままです。
 
 
新名称Planned Parenthoodは、漠然とした概念です。
Planned Parenthoodへの改称後の活動内容をみると、
避妊に焦点化された活動から周辺領域に拡大しています。
たとえば、結婚教育・相談や不妊治療などです。
避妊についても、出産間隔を空けることを奨励しました。
当時、Planned Parenthoodの活動の担い手は男性になっていました。
彼らによるファミリーセンター化プログラムは、
公衆衛生政策とマッチし政治的反発を避けながら地域に浸透していきました。
Planned Parenthood概念の不明瞭さが、
活動範囲の広がりと関係していたように思えます。
 
 
活動範囲の広がりはいくつかの意味を持っています。
一つは、貧困層を対象とした活動から、全市民対象の活動への広がりです。
二つは、農村部を含めた全米的な活動への地域的広がりです。
三つは、リプロヘルス全般の活動への広がりです。
四つは、対象年齢層の広がりです。
五つは、対象の男性女性両性への広がりです。
 
 
この内、日本との対比で重要なのは、四つ目と五つ目です。
別エントリーで見るように、
日本の家族計画は既婚女性を対象としました。
一方、Planned Parenthoodは早くから婚前の男女を対象とし、
結婚相談などの活動をしていました。
戦後のアメリカでは婚前の性交渉が徐々に広がります。
そこに新たな避妊需要が生じていました。
それにすぐさま気づく体制が、
曖昧概念のPlanned Parenthoodにはできていたと言えます。
当時の主要な避妊手段はペッサリーでした。
ペッサリーは必ずしも未婚女性に適した方法ではありません。
若年層の避妊問題解決が課題となっていたので、
ピルは受け入れられるべくして受け入れられました。
 
 
Planned Parenthoodの名称は漠然性を持つと書きました。
この名称が採用された当時、婚前男女の性交渉はまれなことでした。
だから、この名称は漠然として不明瞭な概念でした。
しかし、時を経て婚前交渉が一般化して行くにつれ、
Planned Parenthoodは新たな意味を持つようになりました。
いつしか、Planned Parenthoodは「脱できちゃった婚」の意味を持つようになっていました。
こうしてPlanned Parenthoodは再び、Birth Controlの意味を持つようになりました。
 
 
以上、Planned Parenthoodの超簡略歴史を振り返りました。
「聖処女幻想の国」のテーマとは、直接関係ありません。
それでも、この話から始めました。
アメリカは聖処女幻想がもっとも希薄な国の一つです。
アメリカでは婚前交渉の広がりを現実として受け取り、
現実的な対応が取られました。
聖処女幻想が希薄な国・地域・階層では、
同様な現実的な対応が取られたように思えます。
聖処女幻想が希薄だから現実的な対応が取られたとも、
現実的な対応が取られたから聖処女幻想が希薄になったとも、
どちらにも考えられます。
私は後者、アメリカでは現実的な対応が取られたから、
聖処女幻想が希薄になったのではないかと考えています。
 
 
歴史的・民俗的な聖処女信仰と、
近代社会のそれが連続していることは否定しませんが、
そこには質的断絶があるように思えるのです。
近代社会における「聖処女」は「ふしだら少女」との対概念ではないか?
「ふしだら少女」イメージの対極として「聖処女」イメージはあるのではないか?
このように考えています。
未婚の性に対して現実的対応を取った国では、
「ふしだら少女」のイメージが膨らむことはなかったように思えます。
逆に現実的対応が取れなかった国では、
道徳的にコントロールする必要があり、
「ふしだら少女」イメージが作られたのではないかと考えます。
そして「ふしだら少女」は現実的存在でもありました。
イメージの、そして現実の「ふしだら少女」が、
反動として聖処女幻想を生み出すことになったのではないか。
このように考えているのです。
 
もしそうだとすると、Planned Parenthoodへの改称は、
多くの怪我の功名を生み出したことになりました。


 

聖処女幻想の国(3)に続く

(1)蘇る聖処女幻想
(2)けがの功名だった改名
(3)国策家族計画運動
(4)「峠の我が家」考
(5)「ふしだら少女」の誕生
(-)

2013年3月3日日曜日

聖処女幻想の国(1)蘇る聖処女幻想

10年あまり前、次の文章を書きました。
■性道徳について     ▼次へ/▲前へ /先頭へ
★かつてピル反対論者の本音は、ピルを解禁すれば性が乱れるというものでした。今でもそのような偏見を持っている方は、少なくないと思います。
★夫や恋人といった特定のパートナーと性的関係を持っていること、これを不道徳というのは、SEXそのものを否定的にしか見ることのできない特殊な方だと思います。私はそういう方を聖人として尊敬します。聖人は山にでも籠もって、仙人のような生活をしていてほしいものです。ところが、町に隠れ聖人が結構たくさんいるようなのです。これはタチが悪い。自分についてはぜんぜん聖人であることを求めないのに、女性に対しては聖人であることを求める輩です。女性が性的関心を抱くことさえ、快く思わないらしいのです。実は日本の男性には、程度の差はあれこの隠れ聖人が非常に多いように思います。もし、あなたがピルに躊躇する気分があるなら、自分の心の中のどこかに隠れ聖人が住んでいないか考えてみて下さい。そして、あなたが隠れ聖人であるなら、ぜひほんとうの聖人になって下さい。そしたら、あなたを尊敬してあげます。しかし、自分自身が聖人になれないのなら、女性にそれを押しつけるのは止めてほしいですね。女性が性的な関心を持つことは不道徳なことではないのです。


この文章は、「ピルとのつきあい方」開設後しばらくたったころに書いたものです。
当時、結婚前の女性が性経験を持つことは、
現在と同じほどに珍しいことではなくなっていました。
むしろ、当然のこととなっていました。
ところが、その現実を受け入れることのできない意識が、
親の世代にも青年世代にも、
男性にもそして女性にも残っていました。
現実に遅れて意識も変わっていくだろう。
当時、そのように考えていました。

しかし、この10年間の日本で、
意識は全く変わらなかったように思えます。
いや、それどころか、むしろ強まっているのではないかとさえ思えます。
現実離れした聖処女幻想が、
逆に現実を動かし始めているように思うのです。

性教育批判
子宮頸がんワクチン反対
ピルの避妊目的使用嫌悪
緊急避妊薬「適正使用」

これらはこの10年の日本で生じた現象です。
それぞれ別の現象のようで、
その背後に聖処女幻想が関係しているように思えてなりません。
このような観点から、日本の聖処女幻想について考えていくことにします。

聖処女幻想の国(2)に続く

(1)蘇る聖処女幻想
(2)けがの功名だった改名
(3)国策家族計画運動
(4)「峠の我が家」考
(5)「ふしだら少女」の誕生
(-)

2013年2月13日水曜日

「避妊を話し合う文化」の奥深さ

OKWaveに「ピルの服用を彼に理解してもらいたい」という質問があります。
私は日本には、「避妊を話し合う文化」がなかったと書きました。
「避妊を話し合う文化」がないから、
近代的避妊法が定着しないとも書きました。
日本にないのはピルやIUDなどの近代的避妊法ではありません。
それらは曲がりなりにも日本にあります。
日本にないのは「避妊を話し合う文化」ではないかと考えています。
前にも書きましたが、コンドーム以外の避妊手段がないに等しい日本では、
「避妊を話し合う文化」が育ちませんでした。
それはある意味当然でした。
ピルの解禁は「避妊を話し合う文化」が日本にも浸透する条件になると考え、
男性向けにピルを解説した「男性に知ってほしいこと」のページを作りました。
そのページをカップルで読まれた方も少なくありません。
日本にも徐々に「避妊を話し合う文化」が根づき始めました。
その延長線上に、OKWaveのその質問があります。


OKWaveの質問は、恋愛相談のジャンルに投稿されています。
相談内容からして当たり前と言えば当たり前です。
しかし、このことは「避妊を話し合う文化」の本質を示しているように思います。
半世紀ほど前、日本では家族計画運動が盛んでした。
その中で使われた言葉は、避妊相談です。
避妊相談と「避妊を話し合う文化」は、似ていて本質が全く異なります。
避妊相談は恋愛相談のジャンルに縁遠いでしょう。
避妊相談は医学的知識を教えてあげる性質でした。
一方、「避妊を話し合う文化」では、
アドバイザーがいても当事者2人の合意が全てです。
別の言い方をすれば、それぞれの人生観の折り合いをつけるのが、
「避妊を話し合う文化」
なのです。
医療関係者の中には、避妊相談的な感覚から脱しきれない方が多く見受けられます。


OKWaveの質問で、質問者は海外生活の経験者です。
彼女は「避妊を話し合う文化」を持った人のようです。
彼女と彼は避妊について話し合って、
意見が合いませんでした。
そこで質問を掲示板に投稿したわけです。
もし彼女にピルという選択肢がなければ、
この投稿自体がなかったでしょう。
ピルという選択肢の登場が「避妊を話し合う文化」の条件になっています。


OKWaveのこの質問をおもしろいと思ったのは、
質問者さんが「避妊を話し合う文化」の核心を語っているように思えるからです。
「避妊を話し合う文化」で話し合うのは避妊ですが、
その核心は「愛を語り合う文化」
なのです。
彼女はさりげなく書いています。

ピルは黙ってでも飲めたはずなのに、今回そうしなかったのは、彼の気持ち、自分の気持ちを量っていたのかも知れません。
ピルを飲んで、或いはコンドームのみの避妊だとしても、
彼とのセックスを選ぶ価値が自分の中に見出せるか、どうか。
今週末、もう一度話してみようと思います。

あえて黙っている人もいるんですよね。そうですよね。
でも… 黙って服用してまで、この彼とのセックスを選ぶべきなのか?
ちょっと考えてしまいます…。



彼とのセックスを選ぶ価値」とは彼女にとって何なのでしょうか。
彼女は、こうも書いています。

反面、女性はセックスと愛情はイコール、とまではいかなくても、ニアリーイコールではあるのじゃないかと思います。
相手からの愛情が感じられなければセックスに至らない。
裏を返せば… 自分が好きで、相手の気持ちも信じられる関係なら、
セックス抜きというのは辛いものがあるのです。

私に興味ないのかな? 私って魅力ないのかな?
飽きられてしまったのかな? つまらなくないかな?
余所で浮気されてしまわないかな?
等、男性側からしたら不可解かも知れませんが、
そういうストレスも発生してしまいます。
セックスでしか愛情を量れない、なんてことはありませんが、
重要な1ピースであるということは言えると思います。



彼女が彼に理解してほしかったのは単に「ピル」のことではなく、
セックスについて愛について共通の価値観を持つことだったのではないかと思えます。
うまく説明できないのですが、
男が愛し女が愛される関係では「避妊を話し合う文化」は育たなくて、
相互に対等に愛しあう愛の関係性と「避妊を話し合う文化」が関係している
ように思うのです。
質問者の彼氏さんは、男が愛し女は愛される関係で考えているので、
彼女の愛の形が理解できていない、
それを彼女はもどかしく感じているのではないか、と。
これは単なる感想ですがそのように思えるのです。


回答者さんの1人は、海外に友人を持っているピルユーザーでした。
彼女は以下のように書いています。
ちなみに、私の周りのピルユーザーは、
パートナーに告げる派と告げない派に分かれています。
避妊は二人で一緒に考えるものだという考えの女性は、
ピルのことをパートナーに告げています。

海外の友人達は、ピルのことを告げた上で、
ピル+ゴムで二重の避妊をしています。

告げない派の女性は、パートナーに「ゴムなし・生中出しでやりたい放題だ!ラッキー!」と思われたくない、
ということでピルのことは内緒にしてゴムを併用していますね(苦笑)


「避妊を話し合う文化」を知っているこの回答者のアドバイスは、
「避妊についてはお二人できちんと話し合って決めるべきだと思います。
(中略)妊娠を望まない状況で避妊は非常に大切なことですので、
お二人でとことん話し合うべきだと思います」でした。
とことん話し合うべき」は、いかにも「避妊を話し合う文化」を知っている人です。
そう、「とことん」なのです。
なぜ「とことん」なのか?
「避妊を話し合う文化」は愛の形まで関係する奥深さを持っているからではないか、
そのように思えるのです。

中国の避妊事情

中国の避妊事情の一端は、林謙治ほか「上海市における女性の人工妊娠中絶及び避妊に関する意識について」によって知ることができます。
この調査は上海で行われ、ほとんどが既婚者というサンプルの偏りがあります。
サンプルの偏りがあるにしても、中国の避妊事情の一面を示しているでしょう。
調査では興味深い結果が示されています。
1ヶ月の性交回数は、東京が2.6回であるのに上海では5.4回でした。
他の調査でも、日本の性交回数の少なさが明らかになっています。
しかも、さらに減少傾向をたどっているように見えます。
この性交回数の少なさが、避妊法の選択に影響しているかもしれません。


上海ではIUD利用率の高さが際立っています。
これは調査対象が既婚者であり、出産経験者比率が高いことと関係しています。
その点を考慮しても、IUDの利用率67.6%は注目されます。
欧米でも出産後はIUDが選好される傾向があり、
既婚者については欧米と似通った避妊選択が行われていると言えるでしょう。
同調査では、避妊についてパートナーとの話し合いが、
上海では90%の高率であることを指摘しています。
この指摘は非常に重要な指摘です。
上海では近代的避妊法(ホルモン避妊法・IUD・手術)の普及率が79%に達しています。
東京では、わずか5.6%です。
近代的避妊法の普及している国には、
必ず男女で避妊について話し合う文化があります。
近代的避妊法普及の鍵はこの文化ではないかと考えています。
カップルの話し合いを援助するシステムも重要です。
同調査によると、中絶後の避妊カウンセリングの満足度は、
上海で55%東京で23%でした。
それぞれのカウンセリングの内実はわかりませんが、
一般論としてカップルそれぞれの事情に則したアドバイスが満足度を高めます。
誰にでもピル推奨とか、誰にでもIUD推奨とかは、
カウンセリングとは言えません。
決めるのはあくまでカップル2人の話し合いで、
カウンセラーは2人の話し合いにアドバイスするという形です。
コンドーム普及推進とか、IUD普及推進とか、ピル普及推進とか、
それらは「避妊法を話し合う文化」となじみません。
ピルは中出しアイテムと勘違いされるといけないからこっそり使おうとか、
ピルこそベストな避妊法だとか、
個人的信条を振り回す人がいる限り近代的避妊法を受け入れる文化は育ちません。
近代的避妊法は避妊を話し合う文化という土壌に根付くものだと思います。

2013年1月30日水曜日

減少に転じた?ピル普及率

ばらつきが大きすぎるピル普及率データ
オーキッドクラブが20~30代の女性400名に行った調査では、ピルの普及率は5.5%</a>でした。
首都圏の男女1000人を対象とした「SOD Sex survey 2012」では、ピルの普及率は8%でした。
おそらく、サンプルの偏りのために高めの数値になっていると思います。
「第6回男女の生活と意識に関する調査」は、16~49歳の男女3,000人を対象としたもので規模も大きくもっとも信頼できる調査ですが、直近のピル普及率は1.9%となっています。(ネット上に未公表/一部結果)
「男女の生活と意識に関する調査」は2002年から2012年まで偶数年に6回の調査が行われました。
各回調査のピル普及率は以下の通りです。
①1.6
②1.9
③1.8
④3.0
⑤2.3
⑥1.9

 
2012年調査では2004年第②回調査のレベルまで普及率が後退しています。
ピルの普及が伸び悩んでいるとの実感と符合する結果です。

岩盤の70%
これまで6回の「男女の生活と意識に関する調査」で注目しているのは、
ピルを「使いたくない」と回答する女性が一貫して70%強存在することです。
この70%強の女性について、
いわゆる「ピル推進派」は無知で偏見を持った70%と考えているように見えます。
だから、「正しい知識」を啓発することに熱心になります。
しかし、10年間啓発活動を続けても70%はびくともしません。
なぜでしょう。
「無知で偏見を持った70%」という認識自体が間違っているのではないかと私は考えます。
70%の女性と30%の女性では、
70%の女性の方がピルについての知識は乏しいでしょう。
しかし、ピルを普及すると活動しているNPOのメンバーがトンデモ情報を連発しているのを見ればわかるように、
両者の知識差は決定的なものではありません。
ピルについての知識差が70%の女性と30%の女性の区別になっているとは思えないのです。
「無知で偏見を持った70%」が微動だにしないのは、
実は彼女たちの方が主体的選択をしている女性だからだと考えます。
彼女たちの特徴は直観的な冷めた判断です。
これを別の言い方で言うと、
宣伝臭にはとても敏感であるとともに、
自らの体験に基づいて判断しようとします。
いくつか例えを上げてみましょう。

例1
「ピルの避妊効果はほぼ100%です。
コンドームの避妊は失敗が多いので、
避妊具と言うよりSTD予防具です。」
このような言説に対する反応は、
「これまでコンドームで別に不都合はなかったし、
ピルだって飲み忘れとかで妊娠すると聞いているのに、
良いことばかり言っているみたい。」

例2
「ピルを飲むと生理は軽くなるし、
卵巣がんや子宮体がんを予防する効果もあります」
このような言説に対する反応は、
「薬だから良い点もあるかもしれないけど、
良い点だけ言われても。
副作用だってあるかもしれないから、
ひとまずはパスしとこう。」

例3
「ピルで乳癌リスクが高くなることはありませんし、
ピルで肥るというのは神話です。」
このような言説に対する反応は、
「以前はピルで乳癌リスクが高くなると言っていたはずなのに、
今になってそんなこと言われてもなぁ。
それに医師の中でも意見が分かれているみたいだし。
ネットにはピルで肥ったとか痩せにくくなるとか言う話がたくさんあるのはなぜなんだろう?」

以上3つの例を挙げましたが、
70%の女性は「無知で偏見を持った70%」ではなく、
主体的に判断しようとする女性なのです。

避妊、避妊、そして避妊
「ピルで血栓症リスクが高まる!」
「ピルを服用すると肥る!」
「ピルは乳癌になりやすくする!」
ピルの歴史はこのようなネガティブ情報の波を跳ね返してきた歴史です。
このネガティブ情報を跳ね返してきた力は、
ただ一つです。
<strong>「確実な避妊をしたい!」</strong>でした。
「ピルで血栓症リスクが高まるってどの程度? だったら、私は確実な避妊をしたい!」
「ピルを服用すると肥るってどの程度? だったら、私は確実な避妊をしたい!」
「ピルは乳癌になりやすくするってどの程度? だったら、私は確実な避妊をしたい!」
ピルの服用を選択する女性の主体的判断に、
誰も口を挟むことはできませんでした。
「確実な避妊をしたい」との切実な思いに対して、
しっかり応えようとしてきたのがピルの歴史です。
1970年代の日本でピルが爆発的に普及したと書きました。こちら
青森県のある地方ではピルが驚くほど普及し定着しています。
卵巣がんが減少すると訴えたからではありません。
「確実な避妊をしよう!」という訴えと「確実な避妊をしたい!」という思いが重なったからです。
これはどこの国でも同じ事なので、
ピルが副効果のために普及した国はないと書いてきました。
日本のピルの13年間は、「確実な避妊をしたい!」との思いを持つ女性に訴えるものではありませんでした。
13年間妊娠リスクを高める服用法を放置してきました。
日本のピルの普及が低迷するのは、
ある意味当然のことのように思えます。

2013年1月27日日曜日

ピルは避妊薬でなかったのか?

下の図はフランスの避妊法選択を示した調査だ。



一番左の15-17歳の年齢で見ると、 ピルだけの避妊が37.3%、ピル+コンドームが14.5%だ。
24歳以下ではピル+コンドームが一定比率を占めているのが分かるだろう。
ところが、25歳を過ぎるとピル+コンドームは激減していく。
これには2つ理由がある。 一つは25歳以下の年齢層には未婚女性が多く、
避妊に対する切実度が高いからだ。
二つ目の理由は25歳以下の年齢層ではパートナーが固定していない事が多いからだ。
相手が性感染症フリーと分からなければ、 コンドームを併用する。
パートナーが固定すると性感染症フリーをお互い確認するので、コンドームの併用が減少する。
きわめて合理的な選択行動が取られているのが分かるだろう。詳しくはこちらで。
フランスで若年層の約80%もがピルを選択するのは、 当たり前だがピルが避妊薬だからだ。
ところが、日本にはピルが避妊薬であることを必死で否定しているかのようなグループがある。
そのグループのツイートだ。

ピルは優れた避妊手段であるから単独で使用できる。
単独で使用するか、コンドームと併用するかは、 ケースバイケースでそれぞれの選択に委ねられることなのだ。
ところが、このグループはそれを真っ向から否定して、
「ピルはナマでするためのアイテムではありません」と断言しているのだ。
同グループはピルの避妊薬としての使用に水を差す一方で、
治療目的使用の普及にはことのほか熱心だ。
ピル解禁前の日本でピル反対派の考えは、 「治療薬としての利用には反対しないが避妊薬としての認可には反対」 だった。
それを「治療薬としての利用は推進するが避妊薬としての利用には反対」と言い換えているかのようだ。
このような隠れピル反対派とも言える同グループの姿勢は、 アンチフェミニズム勢力に支持されている。
たとえば、中迎聡氏だ。 同氏は、「子どもが生まれたら家庭を守る専業主婦になる都市部のサラリーマン妻」が 「女性にとって生きやすい社会」なのだという。(「日本は女性差別国家か?」)
この同氏のピルについての支離滅裂な論理はこちら
この中迎聡氏は同グループの支持者だ。
もっとも、「ピルはナマでするためのアイテムではありません」は同グループの信条であり、
それ自体は思想の自由の範囲だ。
このグループの問題は自らの信条を広めるためなら、 デマでも偏見でも手段を選ばない点だ。
オーキッドクラブの調査によると「将来妊娠しづらくなる」との誤認が22.8%にも達した。
ピル=不妊の奇想天外な誤解を広めるのに貢献したのは、同グループだ。
同グループは古巣のmixiコミュで、 ピルのナマダシで不妊症になるとのキャンペーンを張ったのだ。
彼らの主張は、ピルを服用してナマダシすると抗精子抗体ができて不妊症の原因となるというものだ。
キャンペーンの名残が残っている。
妊娠を希望するなら「ナマダシ」は不可避だ。
抗精子抗体の予防などできるものではないのに、 ピルユーザーに抗精子抗体不妊の不安を煽ったのだ。
彼らのキャンペーンの成果はじんわり広まってしまった。
発言小町では常識的なレスがついているが、 ヤフー知恵袋では偏見の垂れ流しが続いている。
このキャンペーンには「ピル推進派」のある女医が関係していたし、
「ピル推進派」のある病院サイト掲示板でも垂れ流された。
さんざんトンデモ情報を流しながら、
「ネットは便利ですが、その情報は玉石混合。 身元不明な個人のサイトや情報源を併記していない情報は鵜呑みにしないよう注意しましょう。 #loc」
と強弁するのは詐欺師の台詞に似ている。
ピルユーザーに抗精子抗体不妊が多いなどと言うデータはどこにもないはずなのだが、
彼らは何を情報源にしてキャンペーンを張ったのだろうか。
彼らの自らの信条を広めるためには手段を選ばない反社会性は、
ピルユーザーの避妊失敗を誘導する言説にも現れている。