2013年1月27日日曜日

ピルは避妊薬でなかったのか?

下の図はフランスの避妊法選択を示した調査だ。



一番左の15-17歳の年齢で見ると、 ピルだけの避妊が37.3%、ピル+コンドームが14.5%だ。
24歳以下ではピル+コンドームが一定比率を占めているのが分かるだろう。
ところが、25歳を過ぎるとピル+コンドームは激減していく。
これには2つ理由がある。 一つは25歳以下の年齢層には未婚女性が多く、
避妊に対する切実度が高いからだ。
二つ目の理由は25歳以下の年齢層ではパートナーが固定していない事が多いからだ。
相手が性感染症フリーと分からなければ、 コンドームを併用する。
パートナーが固定すると性感染症フリーをお互い確認するので、コンドームの併用が減少する。
きわめて合理的な選択行動が取られているのが分かるだろう。詳しくはこちらで。
フランスで若年層の約80%もがピルを選択するのは、 当たり前だがピルが避妊薬だからだ。
ところが、日本にはピルが避妊薬であることを必死で否定しているかのようなグループがある。
そのグループのツイートだ。

ピルは優れた避妊手段であるから単独で使用できる。
単独で使用するか、コンドームと併用するかは、 ケースバイケースでそれぞれの選択に委ねられることなのだ。
ところが、このグループはそれを真っ向から否定して、
「ピルはナマでするためのアイテムではありません」と断言しているのだ。
同グループはピルの避妊薬としての使用に水を差す一方で、
治療目的使用の普及にはことのほか熱心だ。
ピル解禁前の日本でピル反対派の考えは、 「治療薬としての利用には反対しないが避妊薬としての認可には反対」 だった。
それを「治療薬としての利用は推進するが避妊薬としての利用には反対」と言い換えているかのようだ。
このような隠れピル反対派とも言える同グループの姿勢は、 アンチフェミニズム勢力に支持されている。
たとえば、中迎聡氏だ。 同氏は、「子どもが生まれたら家庭を守る専業主婦になる都市部のサラリーマン妻」が 「女性にとって生きやすい社会」なのだという。(「日本は女性差別国家か?」)
この同氏のピルについての支離滅裂な論理はこちら
この中迎聡氏は同グループの支持者だ。
もっとも、「ピルはナマでするためのアイテムではありません」は同グループの信条であり、
それ自体は思想の自由の範囲だ。
このグループの問題は自らの信条を広めるためなら、 デマでも偏見でも手段を選ばない点だ。
オーキッドクラブの調査によると「将来妊娠しづらくなる」との誤認が22.8%にも達した。
ピル=不妊の奇想天外な誤解を広めるのに貢献したのは、同グループだ。
同グループは古巣のmixiコミュで、 ピルのナマダシで不妊症になるとのキャンペーンを張ったのだ。
彼らの主張は、ピルを服用してナマダシすると抗精子抗体ができて不妊症の原因となるというものだ。
キャンペーンの名残が残っている。
妊娠を希望するなら「ナマダシ」は不可避だ。
抗精子抗体の予防などできるものではないのに、 ピルユーザーに抗精子抗体不妊の不安を煽ったのだ。
彼らのキャンペーンの成果はじんわり広まってしまった。
発言小町では常識的なレスがついているが、 ヤフー知恵袋では偏見の垂れ流しが続いている。
このキャンペーンには「ピル推進派」のある女医が関係していたし、
「ピル推進派」のある病院サイト掲示板でも垂れ流された。
さんざんトンデモ情報を流しながら、
「ネットは便利ですが、その情報は玉石混合。 身元不明な個人のサイトや情報源を併記していない情報は鵜呑みにしないよう注意しましょう。 #loc」
と強弁するのは詐欺師の台詞に似ている。
ピルユーザーに抗精子抗体不妊が多いなどと言うデータはどこにもないはずなのだが、
彼らは何を情報源にしてキャンペーンを張ったのだろうか。
彼らの自らの信条を広めるためには手段を選ばない反社会性は、
ピルユーザーの避妊失敗を誘導する言説にも現れている。

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