2013年4月13日土曜日

中間集計② アンケート:ピル1シートの代金はいくら?

実施中のアンケートの6個の内、「アンケート:ピル1シートの代金はいくら?」の回答数が約100になりました。
ありがとうございました。
アンケートは引き続き継続しますが、
中間集計してみました。


中用量ピル・個人輸入は除いたアンケートですが、1500円以下はおそらく中用量ピル・個人輸入のユーザーと考えられます。
1500円以下の回答を除いてみても、大きな価格差があるのがわかります。
平均的には2500円程度となるでしょう。

図右側の円グラフは回答者の地域分布です。
上位には政令指定都市のある都道府県が並びます。
6都道府県で過半を超えています。
ピルの普及に地域偏在性のある事が示唆されます。

ピル1シートの値段は、2000円前後が最安値ゾーンです。
1801-2100円と回答したユーザーの地域分布が下の円グラフです。
東京・大阪・神奈川の3都府県で過半を超えています。
安い値段の病院が大都市に集中している事がわかります。

ルナベル・ヤーズの個人負担額が約2100円です。
ピルの最低価格がこの2100円近辺となっている事に注目したいと思います。
ルナベル・ヤーズの薬価が下がれば避妊ピルの価格も下がるでしょう。
逆に言うと、ルナベル・ヤーズの高薬価が避妊ピルの価格低下の障害になっています。

余談ですが、他のアンケートでも京都と広島が「その他」に含まれてしまいます。
当サイト「ピルユーザーが作る病院リスト」にも、
京都と広島の登録は少なめと感じます。
ピルの普及率にはかなりの地域差があるのかもしれません。

【関連アンケート】
アンケート:「女性手帳」に賛成?反対?
アンケート:緊急避妊薬(アフターピル)服用までの時間は?
アンケート:ピル(中・低用量)で生理日が調整できるって常識?
アンケート:あなたのピル(OC)の服用目的は何ですか?
アンケート:ピルの服用をパートナーに知らせていますか?
アンケート:ピル1シートの代金はいくら? →中間集計②
アンケート:今、飲んでいるピルの種類は何?中間集計①

回答がまだであれば是非ご協力願います。

2013年4月8日月曜日

ピルと肥満4つの言説


ピルの服用で太ることはあるのでしょうか?
この問題は関心の強い問題です。
ピルには多くの偏見や誤解がありますが、
ピル服用による肥満については他の誤解や偏見と異なる性質があります。
ピル服用と肥満の関係については、4つの言説があります。

第1 憶測的言説

ピルと肥満に関する言説の第1は、他のピルについての偏見と同じく、憶測に基づく言説です。
ピルを服用すると不妊になるとか、乳がんになりやすいとかの偏見があります。
それは不妊になったり乳がんになったピル服用者の経験から生じたものではありません。
何らかのデータに基づく物でもありません。
妊娠中に体重が増加するならピル服用中にも体重増加があるのではないか、
等の憶測がこの言説を生んでいます。
ピルについての偏見や誤解と同種類の言説です。

第2 経験的言説

ピルと肥満に関する言説には、他の偏見言説とは異なる性質の言説が混じっています。
血栓症リスクや癌リスクの上昇は10万人中数人レベルのリスクを統計的に評価した物です。
服用者が実感できるものでは決してありません。
ところが、ピルの服用による体重変化は、
変化があるにしてもないにしても全ての人が経験できます。
全てのピルユーザーは体重が増えた、減った、変わらなかったと言えるのです。
これは疾病リスクと決定的に異なる点です。
ダイエットのためにウォーキングを始めた人に体重変化を聞くと、
全員が体重が減るわけではなく中には体重が増える人もいます。
ウォーキングでダイエットできたという人もいれば、
逆に体重が増えたという人も出てきます。
ピルを服用して体重が増加したとか、ダイエットしても体重が落ちなくなったとの言説が現れるのは当然とも言えます。

第3 エビデンス的言説

経験的言説では、ピル服用で体重が増えたという人も、変わらないという人も出てきます。
そこで、ピルの服用で体重が増加することはあるのか、
統計的に調べる研究が行われています。
それらの調査結果は、ピル服用で体重が増加することはないとの結論です。
正確にいうと、ピル服用で体重が増加するとの証拠はなかったなのですが、
しばしばピルにより体重が増加しないエビデンスがあるとの言説になっています。

実はピルの服用で体重増加があるかどうのかの研究は、
意外とむつかしいのです。
ピルの場合、被験者を実験群と対照群に分けて、二重盲検テストを行えません。
厳密な実験的研究がむつかしいことに留意する必要があります。
ピル服用者と非服用者の比較研究がむつかしいのに対して、
ピルの種類による体重変化の研究やピルユーザーの属性(人種や服用前体重など)と体重変化の研究は厳密な方法が可能です。
もし、ピルの服用で体重増加がないのなら、
ピルの種類やユーザー属性による違いはないはずですが、
結果はそうなっていません。
ピルは誰にでも体重増加がないのではなく、
一定条件下で肥満の原因となるかもしれません。

コマーシャリズムと肥満言説

アメリカで脱ピル(服用理由に変化はないのに服用を中止する)ユーザーの中止理由を調査すると、約1割が肥満をあげています。
これは製薬メーカーにとってかなり頭の痛い問題です。
メーカーは、上記の「ピルが肥満の原因になることはない」とのエビデンスを最大限に利用しようとします。
しかし、その宣伝は余り効果的でないようにも見えます。
肥えにくいとうたうピルを発売しているメーカーもあるわけで、
ピルで体重増加はないとの言説は説得力を欠いているかもしれません。
プロバイダー(医師等)はというと、2通りに分かれます。
ピルで体重増加がないとエビデンス強調する医師もいますが、
「ピルで体重が増えることはないと思うよ」程度のアドバイスをする医師が多いでしょう。
メルクマニュアルには、「1年に4.5kg以上増加した場合はアンドロゲン作用の弱いOCを用いるべきである」と書かれています(メルクマニュアル日本語版)。
「ピルで体重が増えることはない」は製薬メーカーの台詞で、
医師がその台詞をオウム返しする事はまれです。
なぜなら、そのような断定をすると、体重の増加した女性にアドバイスできなくなってしまうからです。

第4 「ピルとのつきあい方」的言説

日本のガイドライン改訂版には、
「OCの使用による体重増加の根拠は認められないと指導してもよい。」(グレードA)
と書かれています。
グレードAのエビデンスがあるというのです。
だから、どの病院サイトもどのピルサイトも、
判で押したようにピルで体重が増加することはないと書かれています。
ピルで太るというのは中用量ピル時代のことだとか、
ピルで肥るというのは都市伝説だとかきっぱりした書かれ方がなされています。

当サイトはピルで体重が増加しないとのエビデンスも紹介していますが、
ピルの服用で体重の増加する人がいる事も否定しません。
自動車メーカーが車は100%安全だと証明されたと言っても、
運転者には運転には気をつけようという方が親切だと思うからです。

ピルユーザーと向き合う

「ピルとのつきあい方」は開設以来13年余、
一貫してピルユーザーと向き合う姿勢を貫いてきました。
ピルユーザーが妊娠しやすくなる服用法を書くことはできません。
緊急避妊の成功率が低くなるようなことを書くことはできません。
ピルユーザーが肥満のストレスに悩むようなことを書くことはできません。
そして、用心して防げる事なら用心しようと考えるのが、
「ピルとのつきあい方」流ピルとのつきあい方です。
その場合、全く根拠なく慎重対応を求めているのではありません。
合理的説明がつく限りで慎重対応を奨めているつもりです。

このような当サイトの言説は、日本のメジャーなピル言説と齟齬する状況が生じました。
低用量普及推進委員会なるNPOは、「(日本の)文献に書かれている内容と違うので、
当サイトの内容は信用できない」と当サイト攻撃を繰り返してきました。
私がツイッターを始める前に以下のようなツイートが流れました。


 「医学書は一切無視、ネットでこのサイトより医者の指示を無視した内容を見たことがない」と書かれています。
たしかに、「ピルで肥るというのは都市伝説です」(キッパリ)が、
日本の医学書かもしれません。
私には心配があります。
肥満は都市伝説と言い放つ医師は、
ピルの服用で体重増加が見られたユーザーにどのように言うのでしょう。
「思い違いよ!」と突っぱねるのでしょうか?
ヨーロッパには卒ピルが多く、アメリカには脱ピルが多いと書きました。
そのアメリカの脱ピル理由の1割は体重増加です。
ピルユーザーに向き合わない言説は、
脱ピルの累々たる山を築きます。
日本で脱ピルの山が築かれていないか心配です。

たとえ日本にピルユーザーと向き合う「医学書」がないとしても、
ピルユーザーと向き合う医療者はいます。
先日「エナ大通クリニックのこと」を書きました。
yun@えな低用量ピルアドバイザーさんの「ぴるぶろ」も少し紹介しました。
彼女の「OCと体重増加」を見てみましょう。
ぴるぶろ>OCと体重増加

とても説得力のある書き方になっているのですが、
ピルによる体重増加の可能性を全面否定はしていません。
これは彼女が真剣にピルユーザーと向き合ってきたことの証明です。
「ピルで肥るというのは都市伝説」と言ってしまっては、
ユーザーをサポートすることはできません。
それを経験的に理解し実践する方が現れていることは、
ピル13年の進歩と言えるでしょう。

しかし、一方でピルユーザーに向き合わない情報が増えたことも事実です。
当サイトと出会い、脱ピルすることなく卒ピルまでピルとつきあうピルユーザーに対して、「つきあい方信者」とレッテル貼りするグループまで生じました。
その結果が卒ピルユーザーの増加ではなく、
かえって脱ピルユーザーの増加ではなかったでしょうか。
ツイッターに以下のツイートが流れました。
「ずっとありがとう」と書かれていました。
ずっとピルとつきあい続けるユーザーがずっと当サイトを信頼してくれていたことに、
感激しました。

ピルユーザーと向き合う医療者、ピルユーザーと向き合う情報。
派手さはなくてもそのような小さな一つ一つが、
この国にピルを定着させていく力だと思います。



2013年4月5日金曜日

脱ピルと卒ピル

下の図は当ブログで何度も使っている図です。
フランスの避妊法選択が年齢別に示されています。
 「ピルのみ」と「ピル+コンドーム」の合計がピルユーザーです。



18-19歳のピルユーザーは78.2%(55.2+23.0)で、この年齢層でピークとなります。
20歳を過ぎるとピルユーザー率は減少していくのですが、
ピルから移行する避妊法は、主として「他のホルモン避妊法」と「IUD」です。
「他のホルモン避妊法」は、パッチ・膣リング・インプラントなど非経口避妊薬です。
特に30歳を過ぎると「IUD」への移行が目立ちます。
大雑把に見ると出産前年齢のピル、出産後年齢のIUD、
という選択がなされているのがわかるでしょう。

ピルできっちり避妊しピルを卒業するの卒ピルです。

ピルユーザー80%の秘密

上の統計ではピーク時年齢層でのピルユーザー率は78.2%にも達しています。
このような高いピルユーザー率は、フランスなど西ヨーロッパにだけ見られる特色です。
アメリカではこのような高いピルユーザー率になりません。
なぜ、ヨーロッパではこのような高いピルユーザー率になるのでしょう。
その理由は3つあります。

①値段

フランスのピルの値段は、2ユーロ程度。1シート300円しない値段です。
フランス在住日本人女性のブログには驚きが以下のように綴られています。



「それがフランスでは! 保険が効くとは聞いていたが、こんなに安いとは…。日本と同じタイプを処方してもらって、薬局に行くと、3ヶ月分が1セットになった箱があり、それがなんと5.09ユーロ。で、保険適用後の値段が1.78ユーロ! 1ヶ月分で91円、100円もしないのだ! これにミューチュアルと呼ばれる、任意加入タイプの保険に入っておくと、保険でカバーされない部分を払ってくれるのでタダになるんだとか。
そしてこれまた驚いたのが、フランスでは高校生はピルがタダ。STDはどうしてるのか別として、望まない妊娠を極力減らし、女性の選択した時期に、職も失わず、経済的な不安もなく、妊娠・出産してほしいという政府の狙いでしょう。これは大当たりだと思う。なぜってフランスの出生率はヨーロッパの中でもトップレベルなのだから。」
http://asparagus99.blog94.fc2.com/blog-entry-34.html

フランスのピルの値段は異常なのでしょうか。
違います。
日本で中用量ピルのプラノバール・ソフィアAの薬価(1錠)は、
それぞれ13.9円・8.2円です。
1シート21錠の価格はフランスと変わりません。
これがピルの適正価格なのです。
フランスでは低用量ピルも適正価格なのに対して、
日本では低用量ピルの価格が異常価格になっているだけの事です。

②脱ピルの少なさ

上の表をもう一度見てみましょう。
18-19歳のピルユーザー率は78.2%です。
この年齢層がピークなのですが、
20-24歳でも75.2%でほとんど変わっていません。
20-24歳の年齢層ではピルユーザーの一部が「他のホルモン避妊法」に移行しています(5.1%)。
この二つの年齢層を通じてみると、
18歳から24歳まで80%弱のユーザー率がキープされているのがわかります。
いったんピルユーザーになるとほとんどピルユーザーを止める女性はいなくて、
少数のピルユーザーを止めた女性は「他のホルモン避妊法」に移行するのです。
継続率が高くなければ80%弱のユーザー率をキープすることはできません。
アメリカのピルユーザー率がヨーロッパと較べて低いのは、
継続率が低いためです。
高い継続率は安い価格と関係しますが、
それだけでは高い継続率は実現できません。
もう一つの理由が関係しています。

③自立的ピルユーザー

頭痛で鎮痛剤を飲む事はそれほど難しくありません。
頭痛薬に限らず治療薬には明確な動機付けがあります。
症状が服用を促すのです。
ピルは、たとえ治療目的で服用するにしても、
症状が服用を促しません。
それでも毎日規則正しく服用し続ける薬です。
ピルを服用した事のある人でないと、
毎日飲み続ける事の困難さは理解しにくいかもしれません。
さらに、服用初期には少なくない人が不正出血などのトラブルを経験します。
それもピルの服用をくじけさせることがあります。
アメリカでもヨーロッパでもピルを一度は試してみる女性は9割程度いるでしょう。
ヨーロッパでは脱落者が少ないのに、
アメリカでは脱落者が非常に多くいます。
ピルユーザーがピルの服用から脱落することを脱ピルと言います。
脱ピルの多寡がピル普及率の差になっていると言ってもよいでしょう。
では、アメリカのユーザーとヨーロッパのユーザーの違いは何でしょうか。
アメリカのピルユーザーはピルの服用をハウツー的に理解する傾向があります。
ヨーロッパのユーザーピルの服用を原理的に理解する傾向があります。
ピルを原理的に理解するヨーロッパのユーザーは、
問題が起きてもくじけずに継続的ユーザーになるのではないかと感じます。
逆にハウツーマニュアルでピルを服用しているアメリカのユーザーは、
少しトラブルがあるとピルの服用を止めてしまうのかもしれません。

日本の状況

下は、日本のピル普及率を示した図です。



2008年調査では3.0%に達していますが一時的な増加にとどまり、
基本的には2%弱の水準で変化していない事がわかります。
この10年間、新たにピルユーザーになる女性の数とピルユーザーを止める女性の数は、
毎年同じであった事を示しています。
このデータはとても恐ろしい事実を暗示しています。
10年の間に新たにピルユーザーになった女性の数と、
この間にピルユーザーを止めた女性の数が同じです。
毎年30万人が新たにピルユーザーとなっても、
毎年30万人が脱ピルしている事になります。
これを10年間繰り返すと300万人の元ピルユーザーを生み出す事になります。
ピルを止めた元ピルユーザーの中には、
出産のために卒ピルした女性も含まれています。
しかし、恐らくそれはピル普及率停滞の理由ではありません。
アメリカのピル普及率がヨーロッパと較べて低くなる条件があります。
その条件を更にひどくしたのが日本の条件です。
現在のピルの利用環境が続く限り、
日本のピル普及率は低迷を続けるでしょう。