2013年2月9日土曜日

和田秀樹氏のオフィシャルブログ「テレビで言えないホントの話」に異議あり

精神科医和田秀樹氏のブログは、影響力のあるブログです。
そのブログの中で、和田氏は以下のように述べました。

和田秀樹オフィシャルブログ「テレビで言えないホントの話」
2013-02-04 09:08:22 教育で教えるべきこと
http://ameblo.jp/wadahideki/entry-11463354910.html
さて、また歌舞伎の大御所が亡くなった
ここからは私の勝手な妄想だが、やはり若いころに不特定多数の女性と交わるのは、
がんや白血病や免疫不全の原因になるように思えてならない
ウィルスというのは、少なくともDNAを変質させる
どんな危険があるのかわかっていないウィルスが多いがHPV,HCVをはじめ、
明らかにガンの原因になるものは多数見つかっている
大奥のように生娘を集めていても親から垂直感染を受けるということはあり得るだろうが、
やはりリスクは少ない
しかし、今のご時世は、不特定多数はかなり危険だということだろう
歌舞伎の世界というのは、(中略)
なんで、こんな妄想的な話をしたかというと、
子供の教育には、子供の性教育には使えると思ったからだ
日本じゃAIDSなんかないと思っているガキでも、あるいは少女でも、ガンは現実のものだ
あんまり遊んでいると、あるいはゴムを使わないと、
ガンになって若死にするぞと、こういうニュースを聞いて、子供に教える
テレビでは言えないが、子供にだって多少こたえるのではないか?
性教育というのは、セックスの勧めでなく、セックスがいかに怖いか、
リスクがあるか、妊娠などで女性を傷つけるかを教えるべきだ
自殺予防教育と、性の危険を教える教育は、ちゃんと保健体育の時間に入れてほしい
それが子供の命、大人になってからの命を守る教育というものだろう

体罰の全否定2013-02-05 16:34:09
http://ameblo.jp/wadahideki/entry-11464230104.html
昨日のブログで、不安になった人や、若くてがんになった人を責めるようで不快に思った人がいるようだ
私としても、そういう人を責めるつもりはさらさらない
また、もちろん若くてがんになった人がみんなセックスでウィルスが入ってきたせいだ
という非科学的なことを言うつもりはない
そういう人もいる可能性があると私が信じているだけだ
子宮頚がんだって、セックスの多い人のほうがなりやすいし、
HPVの感染症の説が強まっているが、
だからといって、なった人がみんな不純な交遊ということはないだろう
エイズにしても当初は性感染ばかりが注目されたが、薬害の人だっている
ただ、だからといって、エイズの予防のために不特定多数とセックスをするのはよくないとか、
きちんとゴムをつけろというのがいけないということにはならないだろう
そのほうが公益にかなっているし、若者には必要な啓蒙だからだろう
まだセックスでどのようにウィルスの感染が起こり、それがどの程度がんにつながるのかは、
よくわかっていないというのが真相だろう
でも、多少のリスクはあるのは確かだ
だから、私は自分の子どもにだったらそういうリスクを伝えると思う
少なくとも放射能が怖いからと言って、外に出さないというよりは、
リスク回避の上ではまともな親のやることだとは思う
学校現場でも、今、確実に、ゴムをつけないセックスが危ない例として、
エイズのほか、HCV、HPVの感染くらいは教えていいだろう


和田氏は精神科医ですが、一応医師です。
しかも、影響力のあるブログに書く内容としては、
杜撰すぎるのではないかと思います。
和田氏によれば、エイズもHCV(C型肝炎ウィルス)もHPVも同列になっています。
HCVは性交渉による感染はまれです。
HPVはエイズ(HIV)と大きく異なる点があります。
HPVとHIVの相違点を2点指摘しておきたいと思います。
まず、HPVですが良性・悪性の腫瘍を引き起こします。
悪性の腫瘍が子宮頸がんです。
HPVはHIVと異なり、常在菌とも言えるほどありふれたウイルスです。
女性で言えば少なくとも5割以上、恐らく8割の人が感染を経験します。
感染は非常に多いけれども、癌化を引き起こすのは1/1000とかの非常に低い確率です。
和田氏はHPVをコンドームで予防すると言います。
たしかに、コンドームで感染を一定程度抑えることはできますが、
常在菌とも言えるほどポピュラーな菌なのでコンドームの効果は限定的です。
コンドームをつけて子どもを作るわけにはいきませんから、
コンドームで予防するというのは万能の予防法ではありません。
このような事情で、5割とか割の人が感染を経験することになります。
この点が、HPVとHIVの相違点の第1です。
第2点は、別のエントリーでモデルを示して説明しました。
繰り返しになりますが、もう一度説明します。

第1のモデルは、男性1000人中1人が感染者である場合です。
男性経験の人数が多いほど感染者と当たる確率が高くなります。
100人の男性経験  10%
10人の男性経験  1%
3人の男性経験  0.3%
2人の男性経験  0.2%
1人の男性経験  0.1%
男性経験数と感染者に当たる確率は比例します。
このモデルでは男性経験が多いほど、感染リスクは高いことになります。

第2のモデルは、男性1000人中450人が感染者である場合です。
100人の男性経験  100%
10人の男性経験  100%
3人の男性経験  100%
2人の男性経験  90%
1人の男性経験  45%
この結果を統計処理すれば、
やはり男性経験数が多いほど感染者に当たる確率は高いということになります。
しかし、男性経験数が2人であろうと、3人であろうと、100人であろうと、
ほとんど確率は変わりません。

第1のモデルは感染者比率の低いHIV感染などに当てはまります。
このモデルでは「男性経験が多いほど、感染リスクは高い」は妥当します。
第2のモデルは感染者比率の高いHPV感染などに当てはまります。
このモデルでは「男性経験が多いほど、感染リスクは高い」は必ずしも妥当しません。
和田氏は、「子宮頚がんだって、セックスの多い人のほうがなりやすいし」と述べています。
「セックスの多い人」が単にセックスか数を意味するのなら全く当てはまりませんし、
男性経験が多い人を意味するのであっても当てはまりません。
このような偏見が百害あって一利もないことは、
こちらで述べています。
和田氏はご自身の考える性教育を行う目的のために、科学を手段として利用しようとするものです。
その言説はまさに政治目的のために科学をねじ曲げるものと言わねばなりません。

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