2013年2月28日木曜日

20-24歳女性の1/4が使用経験/アメリカの緊急避妊に関する調査

アメリカの緊急避妊についての調査(Use of Emergency Contraception Among Women Aged 15–44: United States, 2006–2010 ウェッブ魚拓が開きます)を紹介します。
調査結果は4つのグラフになっていますので、
それぞれの表の要点を書いてみます。

Figure 1.
2006-2010年に行われた調査によると、15-44歳で性経験のある女性のうち緊急避妊の使用経験者は11%(580万人)でした。2002年の調査では、4%でした。
緊急避妊経験者の59%は1度だけ、24%は2度、17%は3度以上の使用経験がありました。
Figure 2.
年齢別に見ると、20-24歳の女性では23%の女性が使用経験を持っていました。
一方、30歳以上では5%でした。
学歴が高くなるほど使用率が高くなり、大学卒以上の女性では12%でした。
Figure 3.Figure 4.
①使用避妊法で避妊できていない心配②避妊していなかった③その他の選択肢から緊急避妊の使用理由をたずねると、①と②がほぼ同数になりました。
15-19歳では①が少なく②が多い傾向が見られました(34%対47%)。
学歴が高いほど①の比率が高く、学歴が低いほど②の比率が高い傾向が見られます。

経験者の累積カウントである点に注意が必要。
また、質問内容が各回調査で異なっていて、
カウントされていない緊急避妊もあります。
利用には注意が必要な調査ですが、
20-24歳の女性では約1/4が使用経験を持っている点に注目したいと思います。

2013年2月27日水曜日

もう一つのノルレボ物語(12)「適正使用」の代償

1.供給量

緊急避妊薬が店頭販売されているスイスでは、人口76人あたり1パックの販売量となっています。
緊急避妊薬が処方薬である韓国では、人口83人あたり1パックの販売量となっています。
その数値を日本の人口に当てはめると、それぞれ157万パック、144万パックとなります。
コンドーム避妊が主流の日本の必要需要は、400万パック程度と推測しています(参照)。
この数字を頭に置いて、あすか製薬の会見記事を読み直してみましょう。


あすか製薬の売上げ目標は20億円ですから、20万パック程度です。
日本と同じ処方箋販売の韓国と較べても、目標値が1/7に過ぎません。
「適正使用」という名の普及抑制政策で、
人口5000万人の韓国に遥かに及ばない1/7程度にしか普及しない、
とみているのです。
20万パックの売上げが目標ですが、
初年度の売上は5万パックに過ぎませんでした。
実に韓国の1/28の普及率です。
それでは、目標の20万パックが達成されたとき、
どれほどの妊娠中絶減少が見込めるのでしょうか。
服用者の妊娠(緊急避妊失敗)率を2%とすると、
20万パックで1万2千人の望まない妊娠を防ぐことができます。
20万パックでは、年間22万件の妊娠中絶を10%削減することもできないのです。
ノルレボへのアクセスを容易にすれば、
最大75%の削減が可能なのに、
「適正使用」を優先する政策がそれを不可能にしています。

2.効果
2つ目の問題は、避妊効果の問題です。
ノルレボの作用機序には不明な点があるにしても、
排卵抑制が重要な作用機序であることに異論はありません。
そうであるならば、より早い服用がより高い効果をもたらすことは論を待ちません。


ところが、現状のノルレボは週初めに処方が集中する傾向が見られます。
週末に避妊失敗があり週初に来院するケースが多いからです。
72時間以内であっても、より低い避妊効果しか得られないケースが多い実情があります。
ノルレボの価格は世界一高く、
その実際の避妊効果は世界一低いのが日本かもしれません。
こんな人を馬鹿にしたような話はありません。

3.ノルレボ弱者
ノルレボはアクセスしにくいようにわざと高い価格設定になっています。
高い価格設定にすると、誰でもアクセスしにくくなるわけではありません。
アクセスできなくなるのは誰でしょうか。
お金のない女性です。
10代の女性は概してお金のない女性です。
ノルレボの「適正使用」推進とは、
お金のない女性を緊急避妊の恩恵から排除することを意味します。
かつて、日本の家族計画運動はもっぱら既婚女性の避妊に関心を集中させ、
新たに生じていた未婚女性の避妊需要に目をつぶりました。
日本でピルが解禁されなかったのは、
弱者に目を配れなかった家族計画連盟による反対のためでした。
また、弱者切り捨ての歴史を繰り返すのでしょうか。

4.ノルレボ砂漠
ノルレボの「適正使用」推進では、実質上、産婦人科病院を指定する国家管理が行われています。
全ての産婦人科病院でノルレボが処方できるようになったとしても、
産婦人科病院の都市集中の問題があります。
人口過疎地域から産婦人科病院が消える傾向は現在も続いています。
郡部では産婦人科病院へのアクセス難が生じているのに、
産婦人科病院でしか処方できないとなれば緊急避妊の選択が困難になる女性が生じます。
さらに郡部の産婦人科医は、概して高齢化が進んでいます。
その中には、ノルレボ処方病院となるのに消極的な医師もいます。
ノルレボ処方病院は都市に集中する傾向が生じているように感じられます。
ノルレボの「適正使用」推進が、ノルレボ砂漠を生んでいることも大きな問題です。


「ピルとのつきあい方」は避妊を女性の権利と考えています。
権利は誰でも等しく享受できてはじめて権利と言えるものです。
この観点から見ると、ノルレボの「適正使用」推進は、
あるべき姿の逆方向を向いています。
人口300人の離島に住む女性でも緊急避妊にアクセスできる方策を考えるのが、
行政や家族計画協会の役割だと思います。
ノルレボの販売量が現在の100倍(500万パック)になれば、
妊娠中絶は劇的に減少するでしょう。

ノルレボの「適正使用」は女性の、とりわけ弱い立場の女性の犠牲を代償として成り立っています。

「適正使用」推進を唱えながら、「望まない妊娠をなくしたい」と言っても、
私はその言葉を信じません。

もう一つのノルレボ物語(1)に戻ります。

2000年に起きた異変
緊急避妊フィーバー
「適正使用」路線の第一歩
ソフィア狩り
プラノバール潰し
ノルレボ高価格の舞台裏
奇妙な親切
乱用幻想のプロパガンダ
良心的医師の悲鳴
親鸞は弟子一人ももたず
隠された情報
「適正使用」の代償

2013年2月26日火曜日

もう一つのノルレボ物語(11)隠された情報

緊急避妊を日本の女性から取り上げ、
国家管理の下で限定的に利用させる「適正使用」政策にとって、
どうしても隠しておかなければならない不都合な事実が2つあります。
1つ目は、緊急避妊は早ければ早いほど効果的という事実です。
たとえば、アメリカ家庭医協会のサイト(英語)です。
無防備な性交渉から緊急避妊薬服用までの時間と妊娠率の関係が図示されています。
下の図も同様です。


一般に時間と妊娠率はサンプル数が多ければ多いほど、きれいな比例関係を示します。
大雑把に言えば、服用が24時間遅れると妊娠率は約2倍高くなります。
これは緊急避妊を必要とする女性にとって重要な事実です。

海外の緊急避妊薬の添付文書には、必ずと言ってよいほど、
「十分な避妊措置を講じない性交後、可及的速やかに、望ましくは12時間以内に遅くとも72 時間以内に本剤を2錠服用する」
などと書かれています(このことは発売前のノルレボ「添付文書案」にも出てきます)。
ところが、日本のノルレボの添付文書はあっさりしたものです。
【用法・用量】
性交後72時間以内にレボノルゲストレルとして1.5mgを1 回経口投与する.
<用法・用量に関連する使用上の注意>
本剤を投与する際には,できる限り速やかに服用するよう指導すること


ノルレボの添付文書は、「性交渉後」ではなく、
「処方後できるだけ早く服用するように指導する」と書いているように読めます。
無防備な性交渉から服用までの時間が早いほうがよいとは、
読めないように細工しているのです。
服用までの時間を問題にすると、ノルレボの処方施設を限定する政策の障害となります。
緊急避妊薬は「より早く」が意味を持つ薬です。
だから、各国では女性がより早くアクセスしやすいように、
店頭販売に変わっていったのです。
より手の届きにくいものにしようとしている日本で、
早く服用すればするほど効果が高いと言うことを秘密にしておく必要がありました。
しかし、そのことをいくら秘密にしても、
「72時間以内」と聞けば、72時間以内なら効果は同じなどと誰も思わないでしょう。
常識的に考えても、72時間以内なら効果は同じで、
72時間を過ぎるとぱったり効果がなくなるなどとは考えません。
ヤフー知恵袋に、
「アフターピルは72時間以内なら
いつ飲んでも効果は同じなんですか?」
との質問がなされています(ウェブ魚拓が開きます)。
この質問に自信満々に答えているのが親衛隊の幹部です。
72時間以内というくくりで臨床の結果を出しています。
性行為から何時間後なら何%などという論文も見たことがありませんよ。
>unya_unya_papaさん
どの医学雑誌でしょうか。
近年出された緊急避妊についての雑誌・文献は比較的チェック済みですが、
見落としているようであれば、ぜひ雑誌名を教えていただけますか?
著者だけでも結構です。
まさかどこかのHPの情報ですなんてことはないと思いますので、
文献名をいただければ購入したいと思います。
質問に答えるのではなく、
質問自体がナンセンスだと一蹴しています。
早く服用すればするほど効果が高いとの言説を必死で否定しているのです。

そのツイッターアカウントも、早いほうがよいとの認識が広がらないよう必死で防御線を張っています。
二つ目は、薬の譲渡の問題です。
自分の風邪をうつしてしまった旦那に自分が病院でもらった薬をあげると、
それは法律違反になるかという問題です。
この問題の答えは、「好ましいことではないが、法律違反にはならない」です。
意外に思われる方が多いかもしれません。
医薬品の個人的授与に関係する薬事法の条文は第24条です。
この条文には「業として」の限定があり、個人的な授与を対象としていません。
なお、同法第50条の規定は基準を満たさない医薬品の流通を禁じたもので、
個人的授与とは関係ない条文です。
これは法曹資格を持つ3人の友人の一致した意見なので間違いないと思います。
法的規制がないので、危険性を喚起して注意を呼びかけることが行われています。
参照世におもねる専門家はいらない / 行列のできる法律相談所 
ただ、ここにノルレボ「遠ざけ」政策の穴があります。
先に、家族計画協会は緊急避妊転用可能薬品から低用量ピルをこっそり除外した、
と書きました。
それは「遠ざけ」政策を強めれば強めるほど、
この「穴」が意味を持ってくる可能性があったからです。
「ピルとのつきあい方」の開設当時、
緊急避妊を知らない産婦人科医が多数でした。
当サイトをプリントアウトして病院に持参し、
やっと処方してもらえたケースもあります。
そのような事情を見て当サイトに以下の一文を付け加えました。

■いざというときにはお友達に
 ユーゴの内戦では、レイプ事件が多発しました。このユーゴでは、緊急避妊薬が相当の効果を上げたとも言われています。緊急避妊薬がこのような使われ方をするのは、涙が出るほど悲しくなります。日本では内戦はないと思います。しかし、低用量ピル・中用量ピルは高価なものではありませんから、いつも手元に置いておけば安心です。 
 緊急避妊法について知らないお友達に緊急事態が起きたときには、緊急避妊法のことを知らせて上げて下さい。緊急避妊法は24時間以内だと効果が高まります。病院で緊急避妊法のためにピルが処方してもらえないときには、ご自分で服用しているピルを分けて上げて下さい。他人にお薬をあげることは決して好ましいことではありません。しかし、たとえ法的に問題があっても、自己責任を前提にして道徳的には許されることだと思います。女性同士、悲しい思いをする方を少しでも少なくしていきましょう。

上に書いた3人のチェックは、この文章を付け加える際にお願いしたものです。
この文章では、病院に行くななど決して書いていません。
病院に行っても処方してもらえない場合には、自分のピルを上げると書いています。
このケースで責められるのは、緊急避妊の処方をしない病院ではないでしょうか?
病院が責められずに、
かえって譲渡した女性が責められる筋合いはないのではないか、
と思います。
ノルレボの「遠ざけ」政策が浸透すれば、
ノルレボにアクセスできない女性が生み出されます。
その時、緊急避妊を必要としている女性に自分のピルを渡す女性が責められるべきでしょうか、
それともノルレボへのアクセスを狭めた政策が責められるべきでしょうか。
ノルレボにアクセスできない女性を生み出す政策こそ責められるべきだと考えます。

私はこのように考えるのですが、
親衛隊の考えは全く異なります。
彼女たちによると、
ノルレボ「遠ざけ」政策の邪魔をする「ピルとのつきあい方」が悪者となります。
こちらが親衛隊のネット工作です (ウェッブ魚拓が開きます)。
なお、質問投稿時間と各回答の投稿時間は以下の通りです。
質問日時:2011/12/31 09:14:59
回答日時:2011/12/31 09:20:30
回答日時:2011/12/31 09:20:36
回答日時:2011/12/31 09:21:28
質問を探し、読み、書いて、投稿するのに5分。
3つの回答の投稿時間は60秒以内。
偶然なのでしょう。

農民が刀を持つのは違法だとして、農民から刀を取り上げるのが刀狩り政策でした。
刀狩り政策が農民の反抗を封じ込める政策であったことは言うまでもありません。

もう一つのノルレボ物語(12)に続きます。

2000年に起きた異変
緊急避妊フィーバー
「適正使用」路線の第一歩
ソフィア狩り
プラノバール潰し
ノルレボ高価格の舞台裏
奇妙な親切
乱用幻想のプロパガンダ
良心的医師の悲鳴
親鸞は弟子一人ももたず
隠された情報
「適正使用」の代償