1.供給量
緊急避妊薬が店頭販売されているスイスでは、人口76人あたり1パックの販売量となっています。
緊急避妊薬が処方薬である韓国では、人口83人あたり1パックの販売量となっています。
その数値を日本の人口に当てはめると、それぞれ157万パック、144万パックとなります。
コンドーム避妊が主流の日本の必要需要は、400万パック程度と推測しています(参照)。
この数字を頭に置いて、あすか製薬の会見記事を読み直してみましょう。
あすか製薬の売上げ目標は20億円ですから、20万パック程度です。
日本と同じ処方箋販売の韓国と較べても、目標値が1/7に過ぎません。
「適正使用」という名の普及抑制政策で、
人口5000万人の韓国に遥かに及ばない1/7程度にしか普及しない、
とみているのです。
20万パックの売上げが目標ですが、
初年度の売上は5万パックに過ぎませんでした。
実に韓国の1/28の普及率です。
それでは、目標の20万パックが達成されたとき、
どれほどの妊娠中絶減少が見込めるのでしょうか。
服用者の妊娠(緊急避妊失敗)率を2%とすると、
20万パックで1万2千人の望まない妊娠を防ぐことができます。
20万パックでは、年間22万件の妊娠中絶を10%削減することもできないのです。
ノルレボへのアクセスを容易にすれば、
最大75%の削減が可能なのに、
「適正使用」を優先する政策がそれを不可能にしています。
2.効果
2つ目の問題は、避妊効果の問題です。
ノルレボの作用機序には不明な点があるにしても、
排卵抑制が重要な作用機序であることに異論はありません。
そうであるならば、より早い服用がより高い効果をもたらすことは論を待ちません。
ところが、現状のノルレボは週初めに処方が集中する傾向が見られます。
週末に避妊失敗があり週初に来院するケースが多いからです。
72時間以内であっても、より低い避妊効果しか得られないケースが多い実情があります。
ノルレボの価格は世界一高く、
その実際の避妊効果は世界一低いのが日本かもしれません。
こんな人を馬鹿にしたような話はありません。
3.ノルレボ弱者
ノルレボはアクセスしにくいようにわざと高い価格設定になっています。
高い価格設定にすると、誰でもアクセスしにくくなるわけではありません。
アクセスできなくなるのは誰でしょうか。
お金のない女性です。
10代の女性は概してお金のない女性です。
ノルレボの「適正使用」推進とは、
お金のない女性を緊急避妊の恩恵から排除することを意味します。
かつて、日本の家族計画運動はもっぱら既婚女性の避妊に関心を集中させ、
新たに生じていた未婚女性の避妊需要に目をつぶりました。
日本でピルが解禁されなかったのは、
弱者に目を配れなかった家族計画連盟による反対のためでした。
また、弱者切り捨ての歴史を繰り返すのでしょうか。
4.ノルレボ砂漠
ノルレボの「適正使用」推進では、実質上、産婦人科病院を指定する国家管理が行われています。
全ての産婦人科病院でノルレボが処方できるようになったとしても、
産婦人科病院の都市集中の問題があります。
人口過疎地域から産婦人科病院が消える傾向は現在も続いています。
郡部では産婦人科病院へのアクセス難が生じているのに、
産婦人科病院でしか処方できないとなれば緊急避妊の選択が困難になる女性が生じます。
さらに郡部の産婦人科医は、概して高齢化が進んでいます。
その中には、ノルレボ処方病院となるのに消極的な医師もいます。
ノルレボ処方病院は都市に集中する傾向が生じているように感じられます。
ノルレボの「適正使用」推進が、ノルレボ砂漠を生んでいることも大きな問題です。
「ピルとのつきあい方」は避妊を女性の権利と考えています。
権利は誰でも等しく享受できてはじめて権利と言えるものです。
この観点から見ると、ノルレボの「適正使用」推進は、
あるべき姿の逆方向を向いています。
人口300人の離島に住む女性でも緊急避妊にアクセスできる方策を考えるのが、
行政や家族計画協会の役割だと思います。
ノルレボの販売量が現在の100倍(500万パック)になれば、
妊娠中絶は劇的に減少するでしょう。
ノルレボの「適正使用」は女性の、とりわけ弱い立場の女性の犠牲を代償として成り立っています。
「適正使用」推進を唱えながら、「望まない妊娠をなくしたい」と言っても、
私はその言葉を信じません。
もう一つのノルレボ物語(1)に戻ります。
2000年に起きた異変
緊急避妊フィーバー
「適正使用」路線の第一歩
ソフィア狩り
プラノバール潰し
ノルレボ高価格の舞台裏
奇妙な親切
乱用幻想のプロパガンダ
良心的医師の悲鳴
親鸞は弟子一人ももたず
隠された情報
「適正使用」の代償
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