2013年2月26日火曜日

もう一つのノルレボ物語(11)隠された情報

緊急避妊を日本の女性から取り上げ、
国家管理の下で限定的に利用させる「適正使用」政策にとって、
どうしても隠しておかなければならない不都合な事実が2つあります。
1つ目は、緊急避妊は早ければ早いほど効果的という事実です。
たとえば、アメリカ家庭医協会のサイト(英語)です。
無防備な性交渉から緊急避妊薬服用までの時間と妊娠率の関係が図示されています。
下の図も同様です。


一般に時間と妊娠率はサンプル数が多ければ多いほど、きれいな比例関係を示します。
大雑把に言えば、服用が24時間遅れると妊娠率は約2倍高くなります。
これは緊急避妊を必要とする女性にとって重要な事実です。

海外の緊急避妊薬の添付文書には、必ずと言ってよいほど、
「十分な避妊措置を講じない性交後、可及的速やかに、望ましくは12時間以内に遅くとも72 時間以内に本剤を2錠服用する」
などと書かれています(このことは発売前のノルレボ「添付文書案」にも出てきます)。
ところが、日本のノルレボの添付文書はあっさりしたものです。
【用法・用量】
性交後72時間以内にレボノルゲストレルとして1.5mgを1 回経口投与する.
<用法・用量に関連する使用上の注意>
本剤を投与する際には,できる限り速やかに服用するよう指導すること


ノルレボの添付文書は、「性交渉後」ではなく、
「処方後できるだけ早く服用するように指導する」と書いているように読めます。
無防備な性交渉から服用までの時間が早いほうがよいとは、
読めないように細工しているのです。
服用までの時間を問題にすると、ノルレボの処方施設を限定する政策の障害となります。
緊急避妊薬は「より早く」が意味を持つ薬です。
だから、各国では女性がより早くアクセスしやすいように、
店頭販売に変わっていったのです。
より手の届きにくいものにしようとしている日本で、
早く服用すればするほど効果が高いと言うことを秘密にしておく必要がありました。
しかし、そのことをいくら秘密にしても、
「72時間以内」と聞けば、72時間以内なら効果は同じなどと誰も思わないでしょう。
常識的に考えても、72時間以内なら効果は同じで、
72時間を過ぎるとぱったり効果がなくなるなどとは考えません。
ヤフー知恵袋に、
「アフターピルは72時間以内なら
いつ飲んでも効果は同じなんですか?」
との質問がなされています(ウェブ魚拓が開きます)。
この質問に自信満々に答えているのが親衛隊の幹部です。
72時間以内というくくりで臨床の結果を出しています。
性行為から何時間後なら何%などという論文も見たことがありませんよ。
>unya_unya_papaさん
どの医学雑誌でしょうか。
近年出された緊急避妊についての雑誌・文献は比較的チェック済みですが、
見落としているようであれば、ぜひ雑誌名を教えていただけますか?
著者だけでも結構です。
まさかどこかのHPの情報ですなんてことはないと思いますので、
文献名をいただければ購入したいと思います。
質問に答えるのではなく、
質問自体がナンセンスだと一蹴しています。
早く服用すればするほど効果が高いとの言説を必死で否定しているのです。

そのツイッターアカウントも、早いほうがよいとの認識が広がらないよう必死で防御線を張っています。
二つ目は、薬の譲渡の問題です。
自分の風邪をうつしてしまった旦那に自分が病院でもらった薬をあげると、
それは法律違反になるかという問題です。
この問題の答えは、「好ましいことではないが、法律違反にはならない」です。
意外に思われる方が多いかもしれません。
医薬品の個人的授与に関係する薬事法の条文は第24条です。
この条文には「業として」の限定があり、個人的な授与を対象としていません。
なお、同法第50条の規定は基準を満たさない医薬品の流通を禁じたもので、
個人的授与とは関係ない条文です。
これは法曹資格を持つ3人の友人の一致した意見なので間違いないと思います。
法的規制がないので、危険性を喚起して注意を呼びかけることが行われています。
参照世におもねる専門家はいらない / 行列のできる法律相談所 
ただ、ここにノルレボ「遠ざけ」政策の穴があります。
先に、家族計画協会は緊急避妊転用可能薬品から低用量ピルをこっそり除外した、
と書きました。
それは「遠ざけ」政策を強めれば強めるほど、
この「穴」が意味を持ってくる可能性があったからです。
「ピルとのつきあい方」の開設当時、
緊急避妊を知らない産婦人科医が多数でした。
当サイトをプリントアウトして病院に持参し、
やっと処方してもらえたケースもあります。
そのような事情を見て当サイトに以下の一文を付け加えました。

■いざというときにはお友達に
 ユーゴの内戦では、レイプ事件が多発しました。このユーゴでは、緊急避妊薬が相当の効果を上げたとも言われています。緊急避妊薬がこのような使われ方をするのは、涙が出るほど悲しくなります。日本では内戦はないと思います。しかし、低用量ピル・中用量ピルは高価なものではありませんから、いつも手元に置いておけば安心です。 
 緊急避妊法について知らないお友達に緊急事態が起きたときには、緊急避妊法のことを知らせて上げて下さい。緊急避妊法は24時間以内だと効果が高まります。病院で緊急避妊法のためにピルが処方してもらえないときには、ご自分で服用しているピルを分けて上げて下さい。他人にお薬をあげることは決して好ましいことではありません。しかし、たとえ法的に問題があっても、自己責任を前提にして道徳的には許されることだと思います。女性同士、悲しい思いをする方を少しでも少なくしていきましょう。

上に書いた3人のチェックは、この文章を付け加える際にお願いしたものです。
この文章では、病院に行くななど決して書いていません。
病院に行っても処方してもらえない場合には、自分のピルを上げると書いています。
このケースで責められるのは、緊急避妊の処方をしない病院ではないでしょうか?
病院が責められずに、
かえって譲渡した女性が責められる筋合いはないのではないか、
と思います。
ノルレボの「遠ざけ」政策が浸透すれば、
ノルレボにアクセスできない女性が生み出されます。
その時、緊急避妊を必要としている女性に自分のピルを渡す女性が責められるべきでしょうか、
それともノルレボへのアクセスを狭めた政策が責められるべきでしょうか。
ノルレボにアクセスできない女性を生み出す政策こそ責められるべきだと考えます。

私はこのように考えるのですが、
親衛隊の考えは全く異なります。
彼女たちによると、
ノルレボ「遠ざけ」政策の邪魔をする「ピルとのつきあい方」が悪者となります。
こちらが親衛隊のネット工作です (ウェッブ魚拓が開きます)。
なお、質問投稿時間と各回答の投稿時間は以下の通りです。
質問日時:2011/12/31 09:14:59
回答日時:2011/12/31 09:20:30
回答日時:2011/12/31 09:20:36
回答日時:2011/12/31 09:21:28
質問を探し、読み、書いて、投稿するのに5分。
3つの回答の投稿時間は60秒以内。
偶然なのでしょう。

農民が刀を持つのは違法だとして、農民から刀を取り上げるのが刀狩り政策でした。
刀狩り政策が農民の反抗を封じ込める政策であったことは言うまでもありません。

もう一つのノルレボ物語(12)に続きます。

2000年に起きた異変
緊急避妊フィーバー
「適正使用」路線の第一歩
ソフィア狩り
プラノバール潰し
ノルレボ高価格の舞台裏
奇妙な親切
乱用幻想のプロパガンダ
良心的医師の悲鳴
親鸞は弟子一人ももたず
隠された情報
「適正使用」の代償

2 件のコメント:

横浜駅取材班 さんのコメント...

「病院で緊急避妊法のためにピルが処方してもらえないとき」なんて想定をしないといけない我が国って、いったいどんな後進国なのか……。

RURIKO PIRUTON さんのコメント...

コメントありがとうございました。
togetterで、
「日本では緊急避妊薬(アフターピル)ノルレボのOTC(市販薬)化がなぜ困難なのか(3) 」
をまとめた事があります。
http://togetter.com/li/369723
その時使用させていただいたツイートに、
「夏休み最後の夜は、大好きな友達のためにノルレボ探しに明け暮れました。
くそう!(*_*)はやく医者になりたい!!」
がありました。
このツイートは昨年8月のツイートです。
「ピルとのつきあい方」が緊急避妊法についてのページを公開した初期には、
10の産婦人科を回ったという方もいました。
「病院で処方してもらえなかったら諦めましょう」と言うのが正義とは思えません。
このような事は、実は日本だけの事ではありません。
アメリカには当時もそして今も、
宗教的信条から緊急避妊薬の処方や販売を拒否する病院薬局があります。
アメリカ産婦人科学会が緊急避妊薬の事前処方運動を行ったのは、
それに対抗するためでもありました。
現時点で17歳以下への処方箋なし販売は認められていません。
この規制に対して18歳以上の友人家族による代理購入は当然のように行われています。
緊急避妊薬を必要とする女性がそれにアクセスできない状況は、
どの国にも多かれ少なかれ存在しています。
その状況を改善しようとする運動が存在するかしないかの違いと考えています。