2013年2月13日水曜日

「避妊を話し合う文化」の奥深さ

OKWaveに「ピルの服用を彼に理解してもらいたい」という質問があります。
私は日本には、「避妊を話し合う文化」がなかったと書きました。
「避妊を話し合う文化」がないから、
近代的避妊法が定着しないとも書きました。
日本にないのはピルやIUDなどの近代的避妊法ではありません。
それらは曲がりなりにも日本にあります。
日本にないのは「避妊を話し合う文化」ではないかと考えています。
前にも書きましたが、コンドーム以外の避妊手段がないに等しい日本では、
「避妊を話し合う文化」が育ちませんでした。
それはある意味当然でした。
ピルの解禁は「避妊を話し合う文化」が日本にも浸透する条件になると考え、
男性向けにピルを解説した「男性に知ってほしいこと」のページを作りました。
そのページをカップルで読まれた方も少なくありません。
日本にも徐々に「避妊を話し合う文化」が根づき始めました。
その延長線上に、OKWaveのその質問があります。


OKWaveの質問は、恋愛相談のジャンルに投稿されています。
相談内容からして当たり前と言えば当たり前です。
しかし、このことは「避妊を話し合う文化」の本質を示しているように思います。
半世紀ほど前、日本では家族計画運動が盛んでした。
その中で使われた言葉は、避妊相談です。
避妊相談と「避妊を話し合う文化」は、似ていて本質が全く異なります。
避妊相談は恋愛相談のジャンルに縁遠いでしょう。
避妊相談は医学的知識を教えてあげる性質でした。
一方、「避妊を話し合う文化」では、
アドバイザーがいても当事者2人の合意が全てです。
別の言い方をすれば、それぞれの人生観の折り合いをつけるのが、
「避妊を話し合う文化」
なのです。
医療関係者の中には、避妊相談的な感覚から脱しきれない方が多く見受けられます。


OKWaveの質問で、質問者は海外生活の経験者です。
彼女は「避妊を話し合う文化」を持った人のようです。
彼女と彼は避妊について話し合って、
意見が合いませんでした。
そこで質問を掲示板に投稿したわけです。
もし彼女にピルという選択肢がなければ、
この投稿自体がなかったでしょう。
ピルという選択肢の登場が「避妊を話し合う文化」の条件になっています。


OKWaveのこの質問をおもしろいと思ったのは、
質問者さんが「避妊を話し合う文化」の核心を語っているように思えるからです。
「避妊を話し合う文化」で話し合うのは避妊ですが、
その核心は「愛を語り合う文化」
なのです。
彼女はさりげなく書いています。

ピルは黙ってでも飲めたはずなのに、今回そうしなかったのは、彼の気持ち、自分の気持ちを量っていたのかも知れません。
ピルを飲んで、或いはコンドームのみの避妊だとしても、
彼とのセックスを選ぶ価値が自分の中に見出せるか、どうか。
今週末、もう一度話してみようと思います。

あえて黙っている人もいるんですよね。そうですよね。
でも… 黙って服用してまで、この彼とのセックスを選ぶべきなのか?
ちょっと考えてしまいます…。



彼とのセックスを選ぶ価値」とは彼女にとって何なのでしょうか。
彼女は、こうも書いています。

反面、女性はセックスと愛情はイコール、とまではいかなくても、ニアリーイコールではあるのじゃないかと思います。
相手からの愛情が感じられなければセックスに至らない。
裏を返せば… 自分が好きで、相手の気持ちも信じられる関係なら、
セックス抜きというのは辛いものがあるのです。

私に興味ないのかな? 私って魅力ないのかな?
飽きられてしまったのかな? つまらなくないかな?
余所で浮気されてしまわないかな?
等、男性側からしたら不可解かも知れませんが、
そういうストレスも発生してしまいます。
セックスでしか愛情を量れない、なんてことはありませんが、
重要な1ピースであるということは言えると思います。



彼女が彼に理解してほしかったのは単に「ピル」のことではなく、
セックスについて愛について共通の価値観を持つことだったのではないかと思えます。
うまく説明できないのですが、
男が愛し女が愛される関係では「避妊を話し合う文化」は育たなくて、
相互に対等に愛しあう愛の関係性と「避妊を話し合う文化」が関係している
ように思うのです。
質問者の彼氏さんは、男が愛し女は愛される関係で考えているので、
彼女の愛の形が理解できていない、
それを彼女はもどかしく感じているのではないか、と。
これは単なる感想ですがそのように思えるのです。


回答者さんの1人は、海外に友人を持っているピルユーザーでした。
彼女は以下のように書いています。
ちなみに、私の周りのピルユーザーは、
パートナーに告げる派と告げない派に分かれています。
避妊は二人で一緒に考えるものだという考えの女性は、
ピルのことをパートナーに告げています。

海外の友人達は、ピルのことを告げた上で、
ピル+ゴムで二重の避妊をしています。

告げない派の女性は、パートナーに「ゴムなし・生中出しでやりたい放題だ!ラッキー!」と思われたくない、
ということでピルのことは内緒にしてゴムを併用していますね(苦笑)


「避妊を話し合う文化」を知っているこの回答者のアドバイスは、
「避妊についてはお二人できちんと話し合って決めるべきだと思います。
(中略)妊娠を望まない状況で避妊は非常に大切なことですので、
お二人でとことん話し合うべきだと思います」でした。
とことん話し合うべき」は、いかにも「避妊を話し合う文化」を知っている人です。
そう、「とことん」なのです。
なぜ「とことん」なのか?
「避妊を話し合う文化」は愛の形まで関係する奥深さを持っているからではないか、
そのように思えるのです。

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