ヨミウリ・オンライン内の「発言小町 」です。
「発言小町 」は参加者・閲覧者も多く、
一方的な意見のチェックが機能しているように見えます。
その「発言小町」に「子宮頸がんワクチン、夫と意見が合いません 」とのトピが立てられました。
このトピには148もの意見が寄せられました(2013.2.3現在)。
子宮頸がんワクチンに対する積極派と消極派の意見はそれぞれ一理あります。
完全にどちらかが正しいという問題ではありません。
だから、両者は数の上でほぼ均衡しています。
(※ワクチンはHPV感染を予防するもので、子宮頸がんワクチンの用語は正確さに欠けますが、通称を使用しています。)
ピルと子宮頸がんワクチンの類似点
子宮頸がんワクチンに対する積極派と消極派の意見を読んで感じるのは、
ピルに対する見方とあまりにも類似していることです。
ピルと子宮頸がんワクチンのそれぞれについての見方が類似するのは当然のことです。
ピルと子宮頸がんワクチンの類似点を列挙してみましょう。
①セックスを前提 ピルと子宮頸がんワクチンの両者は、セックスをしないのであれば無用です。
両者はセックスをする前提で意味のあるものです。
②予防的 ピルは妊娠のリスクを、子宮頸がんワクチンは子宮頸がんのリスクを、低減するものです。
既に生じた問題を解決するものではなく、これから起きるかもしれないリスクを低減するという点でも共通しています。
③リスクの度合い そのリスクの頻度は誰もが高いと感じるほどには高くない点も共通しています。
予期しない妊娠は誰にも起きることではありませんし、
子宮頸がんの罹患は誰にも生じるのではありません。
④不完全性 リスクを低減するもので、完全になくすものでない点も共通しています。
ピルは妊娠リスクを低減しますが、避妊の失敗が全くなくなるわけではありません。
ワクチンは一定の型のウイルスに有効なのであり、
子宮頸がんを完全に予防するものではありません。
また有効性の持続期間は十分検証されていません。
⑤マイナートラブル ピルの服用初期には、吐き気があったり不正出血があったりのマイナートラブルが現れることがあります。
ワクチン接種時の強い痛みはピル服用初期のマイナートラブルと似ています。
⑥重篤な副作用 ピルには血栓症のような重篤な副作用の生じることがあることも事実です。
しかし、リスクが高まる副作用がある一方で、疾病予防効果もありトータルではメリット・デメリットが相殺されます。
一方、ワクチンが不妊の副作用を引き起こすという根拠はありませんが、
長期的にみると何らかの疾病リスクを高める可能性は皆無ではありません。
⑦「代替手段」 どちらにも「代替手段」が存在します。
予期しない妊娠を避けるためにコンドームの正しい使用は有効な方法です。
定期的検査は子宮頸がんの予防に有効な方法です。
「代替手段」に「」を付けたのは、二者択一的な意味の代替手段ではないためです。
⑧女性だけが ピルは女性が服用します。
ワクチンは男性も接種できますが、主たる対象は女性です。
そのため、女性だけが負担を強いられると考える人がいます。
⑨異性関係の乱れ どちらも異性関係の乱れを連想する人がいます。
予期しない妊娠、望まない妊娠は、パートナーが一人でも生じます。
HPV感染も同様です。
しかし、ピルを必要とするのは多くの異性関係を持つ女性とする偏見があり、
同様に異性関係の乱れがなければHPV感染は防げるとの偏見があります。
⑩性行動の抑止力 ピルやワクチンを服用すれば妊娠や感染の恐怖が減少し、
性行動の抑止力が小さくなり、性行動を促進してしまうと考える人がいます。
⑪コスト どちらも高価です。ピルの年間コストとワクチンのコストはどちらも5万円程度と高価です。
⑫ビジネス言説 ピルとワクチンは医療関係者が推奨することが多く、
その言説がお金儲けのための言説と受け取られることがあります。
⑬途中で脱落 ピルは毎日継続的に服用することが必要だし、ワクチンは3回接種することが必要です。
ところが、途中で脱落するケースがかなり多いのも事実です。
⑭過敏反応 他のワクチンや他の薬品にもリスクはあります。
ピルや子宮頸がんワクチンは、それらと較べてリスクが大きいとか大きなリスクが予見されるわけではありません。
しかし、ピルや子宮頸がんワクチンについては何故かリスクについて過敏です。
⑮安心心理 予期しない(望まない)妊娠も子宮頸がん罹患も確率的には高いとは言えず、
自分は大丈夫と思いやすいものです。
ピルと子宮頸がんワクチンの相違点
①公衆衛生上のメリット 子宮頸がんワクチンには公衆衛生上のメリット(社会全体の感染を減らす)があります。
ピルにはそのようなメリットはありません。
②未解明の副作用 ピルの副作用リスクはほぼ解明されているのに対して、
子宮頸がんワクチンには未解明の副作用リスクがある可能性は否定できません。
③効果の検証 ピルの効果は十分に検証されているのに対して、
子宮頸がんワクチンの効果は十分検証されているとは言えません。
④リスクの度合い ピルの回避する妊娠リスクと較べて、子宮頸がんリスクは頻度的には格段に少ないけれども、
死亡する事もありリスクの程度は重いと言えます。
⑤親の意思 ピルの服用を決めるのは服用者本人ですが、
子宮頸がんワクチンの服用では親の意思が多分に影響します。
⑥公費助成 ピルのコストは本人負担ですが、
子宮頸がんワクチンには公費助成があります。
⑦経験者の発言 子宮頸がん経験者は積極的に発言する傾向があるのに対して、
予期しない(望まない)妊娠の経験者が積極的に発言することは稀です。
⑧副作用を煽る情報 根拠なく副作用を煽る情報は、
子宮頸がんワクチンの方がピルより多いでしょう。
⑨医療関係者 医療関係者の認識は子宮頸がんワ
クチンでブレが小さく、
ピルでブレが大きい傾向があるように思えます。
ピルと子宮頸がんワクチンの阻害要因
子宮頸がんワクチンの接種率は60%を越えたのに対して、
ピルの普及率は2%程度です。
子宮頸がんワクチンの接種率60%は、
必ずしも高い数字とは言えません。
何がピルと子宮頸がんワクチンの阻害要因になっているのか考えてみました。
①医療情報の不備
「発言小町」で子宮頸がんワクチンに対する消極的意見を見てみると、実は「打たない」理由になっていないものも多く見られます。
たとえば、「全ての型のウイルスに有効ではないのに副作用リスクが心配だ」という意見があります。
このような意見は、「無知」な人の意見ではありません。平均以上によく知っている人の意見です。
詳しく知りたい人の情報需要に応じる情報提供になっていないのではないでしょうか。
私なら、以下のような情報提供をします。
現在、年間約12000人が子宮頸がんを発症し、3500人が死亡しています。 その内、HPV(16型と18型)による子宮頸がんは約6割です。 仮に全員が子宮頸がんワクチン(16型と18型に有効)を接種すると、 発症者は年間約4800人少なくなり、死亡者は年間約1400人減少すると期待できます。 子宮頸がんワクチンには、未知の副作用があるかもしれません。 もし、ワクチンにより年間4800人以上に重篤な副作用が生じ、 年間1400人以上の副作用死亡者が出るとします。 その場合、史上最大規模の薬害事件となり、 メリットよりもデメリットの方が大きかったことなります。 ワクチンの関連が疑われる死亡例は現在のところ世界で数例です。 なお、現在約25%の検診率が100%になると、 死亡者数を更に大幅に減らすことができます。 |
上は特段目新しいことを書いているわけではありません。
メリットとデメリットを率直に知らせて、
判断は患者自身に委ねる基本に則って書いてみただけです。
このような情報提供の形が取られれば、
子宮頸がんワクチンに未知の副作用があったとしても、
メリットの方が格段に大きいと判断する人が増えるのではないでしょうか。
ちなみに、子宮頸がんワクチン推進の代表的なサイト。
子宮頸がん予防情報サイト もっと守ろう.jp
しきゅうのお知らせ 子宮頸がん基礎知識
同じ事は、ピルの情報についても言えます。
②医療不信
発言小町の意見表明を見ていくと、
医療不信の影が色濃いことに気づきます。
これは上の①で述べた情報提供の形とも関係しています。
医療情報の提供と意見表明は異なります。
医療系サイトは医療情報を提供しているつもりなのでしょうが、
往々にして意見表明になっています。
判断するのはユーザーとの姿勢が徹底していないからです。
本来、ユーザーにとって不利益となる情報は最大限に記載すべきなのです。
ところが、不利益情報については簡単にしか書かなかったり、
場合によっては不利益情報の否定に力を入れています。
そのような情報提供の形が医療不信を醸成します。
日本人は知的レベルの高い国民です。
客観的な情報を提供することに徹底すれば、
国民は正しく判断するでしょう。
ところが、馬鹿な国民に正しい情報を教えてあげるという姿勢が見え隠れします。
日本のインフォームドコンセントが、
選択を委ねる形になっていない事とも関係しているでしょう。
ピルについてこの傾向はさらに顕著です。
恥ずかしくなるようなバラ色のピル説明はざらにあります。
③動機付け
不十分さを持つ情報の中で6割の人が、
子宮頸がんワクチンを受け入れています。
それは動機付けが明瞭だからです。
子宮頸がんに罹患する確率は低くても可能性は排除できない、
罹患すれば死亡のリスクまで生じる、
ワクチンは罹患のリスクを低減する。
ここには明確な動機付けがあります。
そして、子宮頸がん経験者の声がこの動機付けを強化しています。
その結果が6割の人々の受容に結びついています。
ピルの普及している国では、
上記と同じ動機付けが作用しています。
ところが、日本のピルはこの動機付けが不明瞭になっています。
ピルは性感染症を防げない不完全避妊法であるとされる一方で、
生理痛の緩和効果などが強調されます。
その結果が普及率の停滞となっていると考えています。
④価格
子宮頸がんワクチンの接種率は全体で6割ですが、
ばらつきも大きくなっています。
子宮頸がんワクチン接種率6割超え 受診率ばらつきも
上記の記事では、自治体による補助率がばらつきの要因だと指摘しています。
日本のピルのコストは高すぎです。
ピルの高いコストがピルの普及の阻害要因になっています。
※アンケートはワクチン反対派の方が作成したものの借り物です。
(正)接種(誤)摂取
当ブログにアンケート設置時点(2013.2.13) 42件(11.9%) 31件(8.8%)268件(75.7%) 13件(3.7%)
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