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2013年7月23日火曜日

ピルにより影響を受ける薬(相互作用4)

ピルユーザーがある種の薬を服用すると、
効き目が強く出たり弱まったりすることがあります。
FSRH.,Drug Interaction with Hormonal Contraception,2012年版の記述を紹介します。
本来、一個人がこのような情報の紹介を行うことは、好ましいことではありません。
しかし、不思議なことに日本ではピルの安全な服用など眼中にないのではないか、
と疑いたくなる状況があります。
たとえば、テオロングという薬はテオフィリン製剤です。このテオロングの添付文書を見ると、ご丁寧にタバコまで相互作用薬に挙げられていますが、ピルは無視されています。
一方、日本産科婦人科学会編「低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン」にも、
経口避妊薬の添付文書にも、テオフィリン製剤の相互作用は全く記述されていません。
お寒い状況を放置し、誰も動こうとはしないのです。
日本のピルは「気にするな」が、まかり通っています。
見るに見かねて、簡単に紹介することにしました。


薬効減弱のおそれ、または臨床的影響

分類 薬品等 備考
抗てんかん剤 ラモトリギン(lamotrigine)の作用を減弱する。 .
血圧降下剤 ピルと拮抗作用があるかもしれない。

.
抗糖尿病薬 ピルとの拮抗作用がある。 .
利尿剤 利尿効果と拮抗する。 .
甲状腺ホルモン エストロゲンは甲状腺機能低下症の患者の甲状腺ホルモン要求量を増加させるかもしれない。 .
FSRH.,Drug Interaction with Hormonal Contraception,2012年版.参照



薬効増強のおそれ、または副作用

分類 薬品等 備考
抗真菌薬 ボリコナゾールの作用を増強。 .
抗不安剤、
催眠薬
メラトニン濃度が上昇。

.
気管支拡張薬 エストロゲンはテオフィリン排泄を減少させ、結果的に濃度が上昇する。テオフィリン用量の減少を推奨。 .
ドーパミン作動薬 ロピニロール濃度が上昇。BNFは危険性なしと判定。
免疫抑制剤 タクロリムスの濃度が上昇のおそれ。シクロスポリンの濃度が上昇のおそれ。
.
免疫抑制剤 タクロリムスの濃度が上昇のおそれ。シクロスポリンの濃度が上昇のおそれ。
筋弛緩剤 チザニジンの濃度が上昇し毒性化のおそれ。
.
筋弛緩剤 チザニジンの濃度が上昇し毒性化のおそれ。 .
カリウム保持性利尿剤、アルドステロン拮抗薬 ドロスピレノン(ヤーズ)で高カリウム血症の理論上のリスク。ただし、ドロスピレノン(ヤーズ)は高血圧女性に通常使用されない。 .
レチノイド  イソトレチノイン(ニキビ治療薬、未承認)

.
トリプタン製剤
(片頭痛治療薬) 
フロバトリプタン、ナラトリプタン、ゾルミトリプタンで軽度の濃度上昇、スマトリプタンで軽度の濃度上昇。

.
FSRH.,Drug Interaction with Hormonal Contraception,2012年版.参照

2013年7月21日日曜日

ピルの作用が強まる薬など(相互作用3)

ピルのホルモンは肝臓の酵素で代謝されます。
薬の中にはこの酵素を強める薬がありピルの効果を弱めますが、
逆に酵素の働きを弱める薬もあります。
酵素の働きが弱まると、ピルのホルモンが代謝されずにピルの作用が強まることになります。
このようにピルの作用を強めるおそれのある薬剤の一覧です。

酵素阻害剤

分類 薬品等 備考
抗生物質 エリスロマイシン .
抗真菌薬 フルコナゾール
イトラコナゾール
ケトコナゾール
ボリコナゾール
ケトコナゾール(内服薬未承認)
抗レトロウイルス剤 アタザナビル(単剤使用) .
免疫抑制剤 タクロリムス .
非ステロイド性抗炎症薬 エトリコキシブ (未承認)
スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)
高コレステロール血症治療薬
アトルバスタチン
ロスバスタチン
.
血管拡張剤 シタクスセンタン ナトリウム .
FSRH.,Drug Interaction with Hormonal Contraception,2012年版.参照

ピルの作用が強まっても、通常は大きな不都合はありません。
場合によっては、吐き気や頭痛などの症状が出ることがあります。

グレープフルーツ
上記の薬品のほか、グレープフルーツには上記の薬品と同様に酵素の働きを弱める作用があります。
グレープフルーツだけでなく、多くの柑橘類には酵素を阻害する物質が含まれています。
グレープフルーツが酵素を阻害する仕組みは未解明な点もありますが、
肝臓の酵素よりも腸内の酵素を阻害するとも考えられています。
酵素阻害薬同様にピルの副作用が強く出る可能性がありますが、
あくまで可能性程度の話です。
服用初期に吐き気などの副作用がある場合には、
グレープフルーツは避けるのが賢明でしょう。
逆に飲み忘れがあり不正出血が見られる場合や、
休薬期間に体調が悪くなる場合にはグレープフルーツが役に立つかもしれません。

2013年7月17日水曜日

ピルの代謝を早める薬(ピルの効果を低下させる相互作用)

ピルは肝臓の酵素で代謝されます。
以下の薬品は酵素を誘導し、その結果としてピルの代謝が早まります。
その仕組みをアルコールで説明してみましょう。
お酒に強い人と弱い人の違いは、アルコールを分解する酵素の強弱です。
お酒に強い人は摂取したアルコールを次から次に分解(代謝)していきます。
血中のアルコール濃度は上がらないので、水を飲むようにお酒が飲めます。
一方、お酒の弱い人はアルコールを分解する力が弱いので、
血中のアルコール濃度が下がりません。
もし、アルコールを分解する酵素を強める薬があれば、
お酒を飲んでも飲んでも酔わないでしょう。
お酒は酔わない方がいいかもしれませんが、
ピルの成分が早く消えてしまってはピルの効果がなくなります。
下の表の酵素誘導薬はピルの分解(代謝)を早めてしまうので、
ピルの効き目が低下するのです。

酵素誘導薬
分類 薬品等 備考
抗てんかん薬 カルバマゼピン
エスリカルバゼピン
オクスカルバゼピン
フェノバルビタール
フェニトイン
プリミドン
ルフィナマイド
影響あり
トピラマート 影響は弱い
ラモトリギン 評価は未定
抗生物質 リファンピシン
リファンピン
結核やハンセン病の治療
抗レトロ
ウイルス剤
プロテアーゼ阻害剤 リトナビル 抗HIV薬
リトナビル&アタザナビル
リトナビル&チプラナビル
リトナビル&サクイナビル
リトナビル&
他のプロテアーゼ阻害剤
非核酸系
逆転写酵素阻害剤
エファビレンツ
ネビラピン
ハーブ セイヨウオトギリソウセント・ジョーンズ・ワート
肺高血圧治療薬 ボセンタン
(トラクリア)
.
向精神薬 モダフィニル
(モディオダール)
.
制吐薬
NK-1受容体遮断薬
アプレピタント
(イメンドカプセル)
.
FSRH.,Drug Interaction with Hormonal Contraception,2012年版.参照

酵素誘導薬以外

分類 薬品等 備考
黄体ホルモン受容体調節剤 ウリプリスタール酢酸エステル 日本未承認
筋弛緩回復剤 スガマデクス
(ブリディオン)
包接体形成。
1回ボラース=1錠飲み忘れ相当
FSRH.,Drug Interaction with Hormonal Contraception,2012年版.参照

上の表を見ればわかるように、風邪を引いて病院で処方されるような薬は含まれていません。
持病の治療薬と言ってもよいでしょう。

一つだけ気をつけたいのは、セント・ジョーンズ・ワートです。
セント・ジョーンズ・ワートはポピュラーなハーブなので、
口にする機会が多いかもしれません。
ただ、セント・ジョーンズ・ワートがピルの効果を低下させる作用はそれほど強くありません。
気をつけるに越したことはありませんが、
たまたまセントジョーンズワート入りのキャンディを口にしたくらいでは、
あわてる必要はないでしょう。
どうしても心配ならば、服用定時と定時の間にもう1錠追加服用します。
あるいは、7日の休薬期間を4日に短縮します。
コンドームを併用すればもっと確実です。

2013年7月8日月曜日

ピルと抗生物質(非酵素誘導抗生物質)

※この記事は、酵素誘導抗生物質であるリファンピシン(リファンピン)を除く抗生物質・抗菌剤について書いています。

ピルユーザーは蚊帳の外

ピルユーザーに渡されることになっている「服用者向け情報提供資料」という冊子があります。
この「服用者向け情報提供資料」には、飲み合わせ(薬品相互作用)については、
以下のような簡単な記述があるだけです。
「・セイヨウオトギリソウを含有する食品はこの薬に影響しますので、控えて下さい。
・他の医師を受診する場合や、薬局などで他の薬を購入する場合は、必ずこの薬を飲んでいることを医師または薬剤師に告げて下さい。」
「服用者向け情報提供資料」は必ず渡されているわけでもないし、
渡されても読まれているわけではありません。
読んだとしても、飲み合わせに注意する薬があると認識されるかは、
微妙な気がします。
もっとも、相互作用をチェックするのは専門家の役割なので、
ピルユーザーは専門家に任せればよいとの考える事もできます。


添付文書の相互作用記述


相互作用については、医師・薬剤師の役割が重要になります。
医師・薬剤師はというと、添付文書の記述に従うことになるでしょう。
そこで、ピルの添付文書を見てみましょう。
添付文書には、テトラサイクリン系抗生物質・ペニシリン系抗生物質について、
「本剤の効果の減弱化及び不正性器出血の発現率が増大するおそれがある。」「これらの薬剤は腸内細菌叢を変化させ、本剤の腸管循環による再吸収を抑制すると考えられる。」との記述が見られます。
ピルの添付文書は、腸内細菌叢に影響を及ぼす抗生物質としてテトラサイクリン系抗生物質・ペニシリン系抗生物質をあげていますが、
この系統の抗生物質に限定されるのでしょうか。
この点については、疑問が残ります。
「日経DI」(2007年11月「やってみよう!一歩進んだ抗菌剤の服薬指導」)では、テトラサイクリン系抗生物質・ペニシリン系抗生物質に限定せずに、抗菌剤全般と読み替えています。


抗生物質(非酵素誘導抗生物質)とピルの相互作用は否定される方向なのだが・・・


2010年、WHOはMedical Eligibility Criteria for Contraceptive Use(3rd edn)を公表しました。イギリスではそれを受けて翌年、Drug Interactions with Hormonal Contraceptionがまとめられました。新しいガイドラインについての当時の記事です。
このガイドラインでは、酵素誘導抗生物質以外の抗生物質では、抗生物質がピルの避妊効果を低下させるエビデンスはないとし、他の避妊法の併用などは不必要としました。
つまり、テトラサイクリン系抗生物質やペニシリン系抗生物質も含めて、
非酵素誘導抗生物質はすべて避妊効果に影響しないとされたのです。
日本の現在のガイドラインがもし改訂されるなら、
WHOやイギリスのそれを踏襲することになるでしょう。
しかし、このガイドラインは医療関係者に評判がよくありませんでした。
上記の記事には、医療関係者のコメントが寄せられています。
中には新ガイドラインをボイコットすると宣言するコメントもあります。

抗生物質相互作用の難しさ


酵素誘導薬品の相互作用は、わかりやすさがあります。
酵素誘導薬品を服用すると、
ほぼ例外なく体内の代謝酵素が増加しますから、
多かれ少なかれ服用者は誰でも影響を受けます。
ところが、非酵素誘導抗生物質の場合は、
誰にでも影響が出るわけではありません。
非酵素誘導抗生物質の相互作用は、
非酵素誘導抗生物質によって腸内細菌叢が影響を受けるという
一種の「副作用」によるものです。
非酵素誘導抗生物質で腸内細菌叢が影響を受けると、
しばしば下痢の症状が現れます。
しかし、非酵素誘導抗生物質を服用しても、
下痢の副作用が出る方はまれです。
非酵素誘導抗生物質の「副作用」の出方には、
個人差があります。
さらに、同一人であっても腸内細菌の耐性菌ができると、
「副作用」が出なくなったりします。

ピルユーザーを守る非酵素誘導抗生物質の対処法


非酵素誘導抗生物質の相互作用は否定される方向です。
日本で非酵素誘導抗生物質の相互作用を否定するガイドラインが作られても、
非酵素誘導抗生物質の相互作用に警戒するように「ピルとのつきあい方」は勧め続けます。
たとえ、数百人に一人、数千人に一人の確率であっても、
非酵素誘導抗生物質の「副作用」が出るユーザーがいるかもしれない、
と考えるからです。
それに、そうすることでピルユーザーにとって大きなデメリットはないのですから。
ピルユーザーは、非酵素誘導抗生物質を服用する際には、
「副作用」が出ると想定して警戒すればよいのです。
数日間様子を見て下痢も不正出血もなければ、
腸内細菌はダメージを受けなかったと判断して警戒解除すればよいだけです。

「ピルとのつきあい方」は頑迷なサイトです。