2014年3月10日月曜日

心の内なる滅私奉公

荻生徂徠が作った日本


日本が他のアジア諸国と異なる近代化の道を歩み始めるのは、いつからでしょう?
歴史の教科書では、明治維新が強調されますので、明治維新以後に日本は近代化の道を歩み始めるとの印象を与えています。
しかし、江戸時代の日本では他のアジア諸国にない、さまざまな現象が生じていました。
私がおもしろいと感じるのは、自己の考えを論理的に主張する人々が広汎に出現したことです。
江戸時代、山の所有権や境界をめぐる紛争が頻発しました。
山論と言います。
裁判で争われることもありました。
長期の裁判になることも少なくありませんでした。
そこには甲論乙駁の論理の世界があり、それに関与したのは一般人でした。
現代人が見ても新鮮さを持っています。
江戸時代の日本には、自己の考えを主張する文化があったように思えます。
もし、江戸時代の日本に独自の精神文化があったとすれば、荻生徂徠の影響に注目すべきでしょう。
江戸時代は朱子学の時代ではありませんでした。
中国や朝鮮には科挙(官吏の登用試験)がありました。
試験には正解が必要です。
正解は朱子学の中にあり、正解を学ぶ「試験勉強」が盛んに行われました。
科挙のなかった日本では朱子学は普及しませんでした。
「試験勉強」のような学習はおもしろくなかったからです。
日本で流行ったのは荻生徂徠の学問です。
荻生徂徠の学問は、研究的・論争的・探求的学風でした。
江戸時代の学者の多くは、多かれ少なかれ徂徠学の影響を受けました。
荻生徂徠を通して、江戸時代の日本には論理で決着を付ける文化が浸透しました。
それは唯々諾々と服従する封建時代人のイメージとはかけ離れています。

万機公論に決すべし


明治政府の最初の施政方針は、五箇条の御誓文です。
その第1条には「万機公論に決すべし」と書かれています。
明治維新は欧米の市民革命とは異なる性格を有しています。
しかし、この「万機公論に決すべし」は、明治維新の市民革命【的】な性格を示しています。
市民革命は、【国王による意志決定】方式の否定でした。
【国王による意志決定】に代わるものが【議会による意志決定】でした。
五箇条の御誓文には、【議会による意志決定】を彷彿とさせる文言が唐突に出てくるのです。
いや、唐突にではなく、それは自然に出てきたのかもしれません。
江戸時代の日本は、絶対権力者による意志決定の社会ではありませんでした。
江戸時代の日本には論理で決着を付ける文化が浸透していました。
その延長線上に、「万機公論に決すべし」があるように思えます。
明治の思想家福澤諭吉は、独立自尊を唱えます。
福澤は欧米人の中に独立自尊の精神を発見したのですが、
実は欧米人【を通して】独立自尊の精神を発見したのではないかと思えます。
福澤も論理で決着を付ける文化の中で育った人です。
奴隷の文化の中で育った人ではありません。
だからこそ、独立自尊の精神を発見できたのではないかと思えるのです。

滅私奉公への堕落


気骨のある明治人と言われることがあります。
日本人は近代のある時期まで、独立自尊の近代人に向かって進歩していたように思えます。
しかし、一方でアンチ独立自尊の思想も成長していきます。
楠正成は忠君の人として戦前の教科書で頻繁に取り上げられました。
幕末から始まる楠フィクションを福澤は「楠公権助論」として批判したことがありました。
昭和戦前期に入ると、楠正成賛美は極に達します。
楠正成は滅私奉公のモデルとして祭り上げられました。

滅私奉公は『戦国策』中の言葉のようですが、
楠フィクションを彩る言葉として使用されました。
荻生徂徠に始まる日本の誇るべき文化は、
偏狭な愛国主義イデオロギーによって窒息させられたのです。


内なる滅私奉公


滅私奉公は戦争遂行の標語でした。
戦後、滅私奉公は死語となります。
しかし、はたして日本人は滅私奉公のメンタリティから脱却できたのでしょうか?
「愛する○○と私」の関係を見て見ましょう。
戦前の滅私奉公で「公」は天皇や国家でした。
愛する天皇(国家)のためには私を殺して従う、
これが滅私奉公でした。
現在を見て見ます。
日本で政党と支持者の関係は、
右も左も余り変わりません。
日本では政党の政策が変わっても支持者は変わりません。
政党の政策が変わると、支持者の考えが変わるからです。
「愛する政党と私」の関係で、政党(公)が優先され私が従属してしまうからです。
政党を会社や団体の組織に置き換えても同じような関係が見て取れます。
「愛する彼(彼女)と私」を見て見ましょう。
1969年、奥村チヨの歌「恋の奴隷」がヒットしました。
「あなた好みの、あなた好みの女になりたい」が繰り返されます。
さすがに現在、このような歌詞の歌が作られることはないでしょう。
しかし、この歌詞は現在でも続く日本人の恋愛感情の一側面を表しているように思えます。
彼や彼女(公)が優先され私が従属してしまう関係です。
彼や彼女を個人と個人の一般的な人間関係に置き換えても同じような関係が見て取れます。
日本でピルが解禁されて15年が経ちます。
15年経ちますがピルはメジャーなわけではありません。
そのような中で、熱烈なピルのファンが生まれました。
つまり、「愛するピルと私」の関係ができています。
ピルは完全な薬ではありません。
メリットもあれば、デメリットもあります。
しかし、もしかするとデメリットに目をつぶる恋の奴隷の心理が働くかもしれません。
もしそうであるなら、偏狭な愛国主義者が誇るべき文化的伝統を押し殺したのと同様に、
熱烈なピルファンはピルを押しつぶしてしまうかもしれません。

自立的ピルユーザーであれ


ピルがあって「私」があるのではありません。
「私」があってピルがあるのです。
ピルには長所もあれば欠点もあります。
欠点に目をつぶってはいけません。
私は15年前、「ピルは頭で飲む薬」と書きました。
この考えは最初にピルと出会ったときからずっと変わっていません。
日本バンザーイを叫ぶ人が愛国者でしょうか?
違います。
日本をよりよい国にしていこうとする人が愛国者です。
ピルについても同じです。
変な言い方ですが、私はピルを愛しています。
だから、ピルの欠点も率直に語り、
私たちにとってもっといいピルにしていきたいのです。
自立的ピルユーザーがこの国のピルの歴史を作る、
そんな思いでサイト名を「ピルとのつきあい方」にしました。
ピルとつきあうことは、内なる滅私奉公から脱却することでもあると思うのですが。

2014年3月6日木曜日

35歳からのピル(「プレ更年期」のピル療法について)

ピルについてのWHOガイドラインでは、
喫煙や血圧などの条件がクリアされれば35歳以上でもピルの服用ができることになっています。
日本のガイドラインも同様です。
35歳以上でもピルの服用ができます。
もう一度書きます。
35歳以上でもピルの服用ができます。
なぜ繰り返し書いたのかというと、
この日本語がわからない人がいるからです。
「35歳以上でもピルの服用ができる」は、
35歳以上の年齢でピルの服用が好ましいという意味ではありません。
「20歳を過ぎれば喫煙することができる」は、
20歳を過ぎたら喫煙することが好ましいを意味しません。
当たり前ですね。
ところが「35歳以上でもピルの服用ができる」を逆手にとって、
35歳を過ぎたらピルを服用しようとする言説が蔓延っているのです。
とんでもないことです。

35歳以上のピルが否定されない理由


35歳を過ぎると血栓症リスクが加速度的に上昇します。
それでも、「35歳以上でもピルの服用ができる」としているのです。
なぜでしょう?
35歳以上でのピル服用について英語で書かれたサイトを10個探して読んでみて下さい。
一つの例外もなく、閉経までは妊娠リスクがあるので避妊が重要と強調し、
その文脈で「35歳以上でもピルの服用ができる」と書かれているはずです。
100のサイト、1000のサイトを探しても、一つの例外もないはずです。
海外ではピルは避妊薬ですから、
当然避妊に関して書かれるのです。
その背景には、妊娠のリスク、妊娠に伴う血栓症リスクの上昇に較べると、
ピルによる血栓症リスクは小さいとの認識があります。

35歳以上のピル服用リスクについて説明すること


避妊はきわめて個人的なことです。
お寿司にするかカレーにするかが個人的なことであるのと同様に、
避妊法の選択は個人的なことです。
だから「あなたはカレーにしなさい」など、
誰も指示しません。
避妊法についても同じで、
「あなたは○○にしなさい」など誰も指示しません。
医療者も指示しません。
指示はしませんが、必要な情報を伝えるのは医療者の使命です。
「35歳以上でもピルの服用ができる」は、
ピルを推奨するわけではなく、
リスクを説明した上で選択肢として提示するという意味です。
ピルが避妊薬である時、医療者は副作用のリスクについての情報をきちんと説明します。

35歳以上ではピルによる避妊が半減


下の図はフランス人の避妊法についての調査です。


詳しくは脱ピルと卒ピル参照

34歳まではピルによる避妊が過半数を超えています。
(ピルのみとピル+コンドームの合計)
しかし、35歳以上の年齢層では年を重ねる毎に減少し、
45-49歳では半減しています。
35歳以上のピルによる避妊には、
ミニピルも含まれています。
リスクの説明がきちんとなされているから、
ピルによる避妊が回避されているのです。

ライフデザインドラッグとしてのピル


日本では2004年にライフデザインドラッグ政策が採用され、
以来脱避妊薬路線が推進されました。
ライフデザインドラッグとしてのピルは、
2つの特徴を持っていました。
1つは年齢横断性です。
ライフデザインドラッグ路線では、
思春期から閉経期までの全年齢の女性に対してピルは役立つとします。
年齢によるリスクを考慮すれば、
ライフデザインドラッグとしてのピルは成り立ちませんから、
年齢リスクが警告されることはありませんでした。
2つは非選択性です。
ピルが避妊薬であるとき、ピルの選択は個人の選択に委ねられます。
避妊の切実度は個人によって違いますし、
性交渉の頻度も個人によって違います。
上の図を見るとピルは20-24歳の年齢階層がピークで、
その後は下降していきます。
避妊法が選択されるものであるとき、
ピルを選択する年齢層が異なってくるのです。
ところが、ライフデザインドラッグでは、
ピルはそれぞれの年齢層で有用な薬と位置づけられます。
個人的な選択の薬ではなくなります。
「いつでもピル、みんなのピル」が、
ライフデザインドラッグのピルです。

「プレ更年期」言説に見るピル


ライフデザインドラッグのピルが、年齢横断性・非選択性という2つの特徴を持つと書きました。
ライフデザインドラッグ路線の特徴を端的に示しているのが、
「プレ更年期」言説です。
対馬ルリ子医師は「プレ更年期」にピルを活用することを唱道した医師です。
その考えは、こちらに端的に示されています。
「プレ更年期」は、35歳から45歳とされます。
そして、この年齢期にピルを積極的に服用することが推奨されています。
本来はリスクを警告すべき年齢の女性に、
逆にピルの服用が推奨されているのです。
「プレ更年期」のピルは更年期の不調に備える、
という位置づけがなされています。
まさに、「いつでもピル、みんなのピル」なのです。
ピルがこのように位置づけられると、
リスクを上回るメリットがあるかどうかという指標は意味を持ちません。
ピルの副作用は都市伝説と一蹴することによってしか、
ライフデザインドラッグ路線のピルは成り立たないのです。
もっとも有力な産婦人科医の一人が唱道した「プレ更年期」にピルの言説は、
広く流布することになりました。
オールアバウトにも同趣旨の記事が見られます。


ピルユーザーの過半数は30歳以上


ピルが切実な避妊要求に応える避妊薬であるとき、
ピルユーザーのピークは20歳代(前半)となります。
避妊薬としてのピルはそのような薬なのです。
20歳代(前半)までの女性には未婚の女性も多くいます。
日本では長い間ピルが認可されませんでした。
その背景には「ふしだら少女に避妊手段を与えてしまう」、
とするおじさま方の心配がありました。
ピルが認可されてから後も、
若者がピルにアクセスしにくくする障壁を作りました。
その延長線上にあるのが、
ピルを避妊薬でなくしてしまうという脱避妊薬路線です。
避妊薬であるよりライフデザインドラッグであるピルは、
当然のことながら年齢の高い女性の間に普及しました。
当ブログのアンケートによれば、
ピルユーザーの年齢分布は以下の通りです(2014.3.5現在)。
10歳代28人4.29%、
20歳代233人35.68%、
30歳代250人36.28%、
40歳代140人21.44%
30歳以上が57.7%を占めています。
「プレ更年期にピル」は現実を動かす言説になってきました。

30歳オーバーのピルデビュー


WHOのガイドラインが「35歳以上でもピルの服用ができる」としていること、
そして実際に各国には35歳を超えたピルユーザーがいることを書きました。
そうです、確かにどの国にも一定数の35歳を超えたピルユーザーがいます。
ただ、それは日本の35歳を超えたピルユーザーとはわけが違います。
日本以外の国では、ピルは若者を中心に利用されている避妊薬です。
35歳になると、ピルをこのまま続けるか検討するのです。
そして、ピルを止めるユーザーもいますし、ピルを続けるユーザーもいます。
「35歳以上でもピルの服用ができる」は、ニュアンスとしては35歳を超えてもピルを【継続】できるに限りなく近いものです。
これを言い換えると、35歳を過ぎてピルデビューするユーザーなど、
ほぼ皆無です。
「35歳以上でもピルの服用ができる」は、
5年、10年、15年とピルを使用してきたユーザーについて言っているものです。
若いときからピルユーザーであり続けた女性は、
血栓症になりやすい体質でないことが証明済みです。
また、ピルの血栓症はピルを飲み始めた最初の1年に集中する傾向があります。
数年間服用を続けているユーザーでは、リスクは低くなります。
このようなユーザーを前提に「35歳以上でもピルの服用ができる」とされているのです。
このような事情を考慮せずに、
WHOのガイドラインが「35歳以上でもピルの服用ができる」としているから、
35歳を過ぎてピルデビューしてもかまわないとするのは乱暴すぎます。


斬新な【実験】


「プレ更年期にピル」は斬新なアイデアを実証する【実験】であったと考えられます。
1つ目の【実験】は、35歳を過ぎたピルデビューで血栓症発現率はどのようになるかの【実験】です。
とてつもなく高い発現率になるのではないかとの想像はできても、
実際に【実験】が行われたことはありません。
この【実験】はすでに結論が出ていますので、中止してもよいのではないかと思います。
600人に1人が血栓症に--40歳以上のピル服用について試算などを参照のこと。

2つ目の【実験】は、「プレ更年期」のピル服用が更年期に与える影響の【実験】です。
「プレ更年期」のピル服用が、更年期に好影響を与えるとの仮説が述べられています。
「プレ更年期のうちからホルモンケアをしていると、次に続く更年期も上手に乗り切ることができます」
これはあくまで仮説であって、何らのエビデンスもありませんでした。
あるいは私が知らないだけなのかもしれませんが、
少なくともメジャーな雑誌にはそのような知見は報告されていません。
きっと世界から注目される論文になるでしょう。
※なお、ヘルシンキ宣言を逸脱する研究はどのように優れた研究であっても、
受理されることはありません。

35歳超でもピルが選択できる国


私はピルの副作用被害をなくすための10の提言で、
「35歳以上の女性に対する混合ピルの新規処方を停止する」ことを提唱しました。
実はこの提言は私の主義に反しています。
この提言では処方するかしないかを医師が決定することになっており、
医師が処方しないと決めれば女性の選択権が失われます。
かなり悩みましたがこの1項目を入れることにしました。
現実に生じている副作用をストップする緊急的措置が必要と考えたのが、
大きな理由です。
もう一つ理由があります。
欧米では35歳を過ぎても混合ピルを服用し続ける女性がいます。
そして、その中のかなりの女性が治療目的を兼ねたユーザーです。
そのような女性の一人が話してくれたことがあります。
「このピルを飲み始めたのは19の時だったわ。
かれこれ20年同じピルを飲み続けてるの。
だから、20年間私の身体のホルモンは同じって事よね?
これから10年飲み続けるつもりだけど、
ホルモン状態は19の時と変わらないわ。
ドクターはリスクが高くなるって言うけど、
私について当てはまらないでしょ?」
彼女は自信たっぷりに話しましたが、
実はやはりリスクは高くなります。
しかし、彼女の場合確かにメリットを上回るリスクがあるとは言えません。
ピルが若者の避妊薬として普及している国では、
ピルと長くつきあうことも可能になります。
35歳を過ぎても安全にピルが使える国にするには、
35歳以上の新規処方を停止する方が近道ではないかと考えました。


誰もがいつでも安心して利用できるピルに


ピルが避妊薬であるとき、ピルは女性が選択する薬です。
ピルが治療薬であるとき、ピルは医師が奨める薬です。
ピルが女性の選択する薬であるとき、医師はリスクを丁寧に説明します。
ピルが医師の推奨する薬であるとき、医師はリスクを説明しないか過少に説明します。
1970年を境に、世界のピルは医師がリスクを説明し、
女性が選択する薬に大きく変わりました。
日本のピルは、依然として1970年以前のピルなのです。
発足当初の性と健康を考える女性専門家の会にとってピルは避妊薬でした。
ピルが避妊薬であるとき、性と健康を考える女性専門家の会の理念はすばらしいものでした。
「性と健康を考える女性専門家の会」の理念を賞賛する 参照
興味深いことにライフデザインドラッグ路線にどっぷり関与してきたのは、
同会メンバーです。
対馬ルリ子医師も同会の有力メンバーです。
「プレ更年期にピル」の言説と同会の理念は齟齬しないのか?
同会にはこの点をしっかり考えてほしい気持ちです。
同会のためにも、日本の医療のためにも、そして何よりも日本の女性のために。

2014年3月3日月曜日

ミニピルの導入を望む声について

ミニピル NOW!! にコメントを頂きました。
お返事が長文になるので別エントリーとしました。
黄色の文字が頂いたコメントです。

ミニピルですが、私の場合、かかりつけのお医者さんはノアルテンの処方はして頂けませんでした。
『適応外での処方はしたくない』
という、とても真面目な理由からでした。



ルナベル・ヤーズとノアルテンは効能が重なっていますので、代替可能です。
低用量ピル(避妊効能)ユーザーがノアルテンへの切り換えを希望する場合、
適応外の壁が存在します。
適応外であっても医師の判断で処方することは可能なのですが、
年齢など高リスク要因への認識が薄ければ断られることになるでしょう。
残念なことです。


ならばと、個人輸入のセラゼッタを服用したいと伝えたところ
『ミニピル(黄体ホルモン)でも血栓は起こるよ』
と・・・。
調べてみると、黄体ホルモンは動脈血栓を引き起こす可能性があるという婦人科の先生のHPを発見しました。

実際のところどうなんでしょうか?

イギリスのミニピルガイドライン(2013年改訂版)の「循環器疾患(心筋梗塞・深部静脈血栓症・脳卒中)」には以下のように書かれています。

Few studies have been large enough to evaluate the  risk of cardiovascular disease associated with POP use. Although limited by small numbers of women  using progestogen-only contraceptives, data from a World Health Organization study suggest there is  little or no increase in risk of VTE, stroke or acute myocardial infarction(MI) associated with use of POP(or injectable).(37)
(37)World Health Organization. Cardiovascular disease and use of oral and injectable progestogen only contraceptives and combine injectable contraceptives. Results of an  international, multicentre, case control study. Contraception 1998;57:315-324.
(翻訳)ミニピル使用にともなう循環器疾患リスクを評価しうる規模のいくつかの研究がなされてきた。ミニピル避妊法を使用している女性が少数という制約はあるが、WHOのデータはミニピル(注射剤を含む)使用に伴う深部静脈血栓症・脳卒中・急性心筋梗塞のリスク上昇は、ほとんどないか全くないことを示している。

脳卒中・心筋梗塞は動脈血栓によるものです。
典拠のWHO調査は1998年ですが、その結論は現在まで踏襲されています。
いくつかの産婦人科病院のサイトには、世界で共有されている知見を大胆に否定している記述が見られます。
日本家族計画協会のサイトには精子が着床するなどの記述さえ見られます。
見栄えを優先してサイト作成を業者に丸投げしているからなのでしょうが。。。
困ったものです。

セラゼッタを飲みはじめて、そのことが気になり、これといった副作用はなかったものの、過剰に体の変化がきになってしまい服用をやめてしまいました。
(気にしすぎのせいか、足が痛かったような・・・心臓も圧迫され息苦しいような感覚がありました。ただ混合ピルの時と比べると、気のせいかな?とも思える程度です。)


ノンピルユーザーとの比較でミニピルによる血栓リスクの上昇はありません。
しかし、ノンピルユーザーと同程度のリスクになるわけで、
リスクがなくなるわけではありません。
ノンピルユーザーに血栓が生じるのと同じ程度に、
ミニピルユーザーにも血栓が生じます。
血栓の初期症状に気をつけることは必要だと思います。

ミニピルの副作用についての情報が少なく、また海外からの個人輸入しかないとなると、連続服用する勇気がもてなかったりします。
やっぱり日本で処方してもらい、納得いく情報のもとで服用したい。

私自身、決して若くない年齢ですが、妊娠する可能性もまだまだあり、避妊は積極的にしていきたい。
でも・・今の日本の現状だと・・・。


日本やアメリカなど一部の国を除いて、
薬を個人輸入する患者のいる国はほとんどありません。
薬を個人輸入すると輸送コストが加算され高くなるからです。
個人輸入が悪いのではなく、個人輸入を余儀なくする薬事行政が悪いのです。
個人輸入に頼らなくてよい国になるといいのですが。

rurikoさんを中心に、署名を集めて国に声を届けてみるのはどうでしょうか。
もちろん私も協力したいです。


日本にミニピルは是非とも必要だと考えていますが、
共通認識にはなっていません。
今すぐ出来る対応策を「ピルの副作用被害をなくすための10の提言」にまとめました。
改善すべき10項目があるということは、
問題点が10点あると言うことです。
10点もの問題点があるから、
世界のピル史上最悪の副作用被害が生じています。
公表されているデータを丹念に見れば、
ピル史上最悪の副作用被害が生じていることは簡単に想像できます。
実際はさらに深刻な事態となっていると見ています。
報告されていない副作用が数多く埋もれていると推測できるからです。
しかし、実際のデータを丹念に見なければ、
現在生じている事態を認識できません。
薬には副作用は付きものだとの認識に留まってしまいます。
これが現実です。
まずは実態についての共通認識を広めなくてはなりません。


私の願いはただ一つです。
日本の女性を守るために役立ちたい。
私の知識や経験をそのために使っていただきたい。
その私にできることは何なのかは、模索中です。
日本にはすでにさまざまな運動体があり、活動しています。
私の出る幕などないように思えます。
たとえば、「性と健康を考える女性専門家の会」があります。
その会の理念について書いたことがあります。
アドボカシー活動から始まった会でもあり、
現在も理念が生きているのなら、
ミニピルの導入はこの会が取り組んで下さることではないかなと思います。
アドボカシー活動を目指して設立された団体は、
ほかにも多くあるのではないかと思います。
独自の提案を行っていくことは啓発よりも格段に困難なことですが、
私の考えに参考になる点があれば使って下さればいいのにと考えたりします。

以上、お返事です。

2014年3月1日土曜日

ミニピル NOW!!

少なくとも、先進国でミニピルが認可されていない国はない。





ノアルテンなら3割自己負担で月の薬代は300円強。
600人に1人が血栓症に--40歳以上のピル服用について試算


日本のピルユーザーは30歳以上が過半数を占め、
その年齢の高いユーザーに血栓症などの副作用が集中的に生じているというのが現実だ。
この現実に目をつぶり、問題がないといわんばかりの言説が見られる。
たとえば、
薬には副作用はつきものだ。
低用量ピルの副作用リスクは許容しうる範囲だ。
低用量ピルの恩恵は大きい。
喫煙しなければリスクは小さい。
定期検査でリスクを低減できる。
ピルの副作用を取り上げるのは反ピル思考だ。
などなど。

私は現在日本で生じている問題を直視すべきだと思う。
問題を直視すれば、解決すべき問題は明らかだ。
ミニピルが認可されていないという問題を解決しなければ、
副作用問題は根本的に解決しない。
治療目的ユーザーはヤーズ・ルナベルからノアルテンに切り替えることが出来る。
避妊目的ユーザーは年齢が高くなっても、
ミニピルに切り替えることが出来ない状況は許せない。

ミニピル NOW!!


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