2013年2月18日月曜日

頭痛とピル

日本の添付文書の頭痛に関する禁忌事項について考えてみましょう。

まず、「避妊法使用に関する医学的適用基準(WHOMEC)」の頭痛に関する事項は以下のようになっています。


アメリカのピルの絶対禁忌条項の10番目は以下のようになっています。
Have headaches with focal neurological symptoms or have migraine headaches with or without aura if over age 35 [see Warnings and Precautions ]

局在性神経徴候を伴う頭痛を有するか、前兆の有無にかかわらず35歳以上で偏頭痛を有する場合[警告及び注意事項を参照]


そして「警告及び注意事項」には以下のように記されています。
Headache
If a woman taking *製品名* develops new headaches that are recurrent, persistent, or severe, evaluate the cause and discontinue *製品名* if indicated.
An increase in frequency or severity of migraine during COC use (which may be prodromal of a cerebrovascular event) may be a reason for immediate discontinuation of the COC.
頭痛
繰り返し、あるいは持続的な、あるいは激しい頭痛が、*製品名*を服用中の女性に新たに生じた場合、原因を調べること。*製品名*が処方されているなら中止すること。
混合ピルの使用中の片頭痛頻度の増加や症状の激化(それは脳血管性発作の前兆かもしれない)は、混合ピル即時中止の理由たり得る。


WHOMECとアメリカの添付文書は、
①35歳以上の片頭痛について絶対禁忌としていること、
②35歳未満の頭痛について前兆の有無により、あるいはその症状により絶対禁忌としている、
の2点で共通しています。

一方、日本のガイドライン(改訂版)は、WHOMECに準じたとしています。
世界保健機関の「避妊法使用に関する医学的適用基準(WHOMEC)」に則って指導することにより、最適な避妊法を選択することが可能であり医学的障害を回避できる(表8)。不適用基準(または禁忌)のみではなく、適用基準についても述べているが、表8にOCの使用による利益がリスクを上回る状況(WHO‐1、「使用制限なし」およびWHO‐2、「リスクを上回る利益」)およびOCの使用によるリスクが利益を上回る状況(WHO‐3、「利益を上回るリスク;原則的禁忌」およびWHO‐4、「容認できない健康上のリスク;絶対的禁忌」)を要約する。


その片頭痛に関する要約は以下の通りです。
OC処方ができない場合
WHO分類3-利益を上回るリスク
片頭痛-局限的症状のない35歳以上の女性
WHO分類4-容認できない健康上のリスク
片頭痛-年齢に関わらず局在性神経兆候を有す


超要約?のためなのか、「片頭痛」について「局限的症状のない35歳以上の女性」を禁忌としています。
「局限的症状のある35歳以上の女性」は当然禁忌と推測できるだろうということなのでしょうか?
翻訳で、aura(前兆)がどこに消えたのかもよくわかりません。
わざわざ、わかりにくい要約にしたのかと考えたくなるほどです。

多くの医師が見るのはガイドラインではなく添付文書なので、
添付文書を見てみましょう。
低用量ピルの絶対禁忌・相対禁忌の記述内容は全製品共通です。
その絶対禁忌に、
6. 前兆(閃輝暗点,星型閃光等)を伴う片頭痛の患者
[前兆を伴う片頭痛の患者は前兆を伴わない患者に比べ脳血管障害(脳卒中等)が発生しやすくなるとの報告がある.]
があります。
相対禁忌には、
(8)前兆を伴わない片頭痛の患者
[脳血管障害(脳卒中等)が発生しやすくなるとの報告がある.]
があります。


①前兆(閃輝暗点,星型閃光等)を伴う片頭痛の患者を絶対禁忌とするのは合理的で、
WHOMECともアメリカ添付文書とも合致します。
②WHOMECに準じるならば、前兆を伴わない片頭痛の患者についても、ケースにより絶対禁忌または相対禁忌に指定すべきです。
現状は一律に相対禁忌となっています。
③アメリカの添付文書に倣うならば、
前兆がなくても髄膜腫が疑われる頭痛は、年齢に関係なく禁忌とすべきです。

ピルの服用と髄膜腫リスクについては、こちら

※補足をコメント↓として記しています。

2 件のコメント:

RURIKO PIRUTON さんのコメント...

本文の画像は、WHOMEC第3版です。2009年には第4版が出ていますが、片頭痛の評価は変わっていません。(Medical eligibility criteria for contraceptive use – 4th ed.2009.)
説明は以下のようになっています。

Clarification:
Classification depends on accurate diagnosis of those severe headaches that are migrainous and those that are not.
Any new headaches or marked changes in headaches should be evaluated. Classification
is for women without any other risk factors for stroke.
Risk of stroke increases with age,hypertension and smoking.
解説:

リスク分類は、片頭痛との正確な診断のついている重症頭痛についてです。
新たに頭痛が生じたり頭痛に顕著な変化のある場合には、評価が必要です。

リスク分類は他のリスク要因のない女性の脳卒中リスクについてです。
脳卒中リスクは、年齢、高血圧、喫煙により増加します。


Evidence:
Among women with migraine,women who also had aura had a higher risk of stroke than those without aura.(267-269)
Women with a history of migraine who use COCs are about two to four times as likely to have an ischaemic stroke as non-users with a history of migraine.
(174;189;210;211;268-273)
エビデンス
片頭痛を有する女性の中でも、前兆を伴う片頭痛のある女性は、前兆を伴わない片頭痛の女性よりもより高い脳卒中リスクを有します。
片頭痛歴のあるピル服用者は、片頭痛歴のある非服用者と比較して、約2ないし4倍の虚血性脳卒中リスクを有するでしょう。

(174) Gillum LA, Mamidipudi SK, Johnston SC. Ischaemic stroke risk with oral contraceptives: a meta-analysis. Journal of American Medical Association, 2000, 4:72-78.
(189) Schwartz SM, Petitti DB, Siscovick DS et al. Stroke and use of low-dose oral contraceptives in young women: a pooled analysis of two US studies. Stroke, 1998, 29:2277-2284.
(210) Lidegaard O. Oral contraception and risk of a cerebral thromboembolic attack: results of a case-control study. British Medical Journal, 1993, 306:956-963.
(211) Lidegaard O. Oral contraceptives, pregnancy and the risk of cerebral thromboembolism: the influence of diabetes, hypertension, migraine and previous thrombotic disease. British Journal of Obstetrics & Gynaecology, 1995, 102:153-159.
(267) Carolei A, Marini C, De Matteis G. History of migraine and risk of cerebral ischaemia in young adults. The Italian National Research Council Study Group on Stroke in the Young. Lancet, 1996, 347:1503-1506.
(268) Chang CL, Donaghy M, Poulter N. Migraine and stroke in young women: case-control study. The World Health Organisation Collaborative Study of Cardiovascular Disease and Steroid Hormone Contraception. British Medical Journal, 1999, 318:13-18.
(269) Tzourio C, Tehindrazanarivelo A, Iglesias S et al. Case-control study of migraine and risk of ischaemic stroke in young women. British Medical Journal, 1995, 310:830-833.
(270) Oral contraceptives and stroke in young women. Associated risk factors. Journal of American Medical Association, 1975, 231:718-722.
(271) Etminan M, Takkouche B, Isorna FC et al. Risk of ischaemic stroke in people with migraine: systematic review and meta-analysis of observational studies. British Medical Journal, 2005, 330:63.
(272) Lidegaard O. Oral contraceptives, pregnancy, and the risk of cerebral thromboembolism: the influence of diabetes, hypertension,migraine and previous thrombotic disease. (Letter). British Journal of Obstetrics & Gynaecology, 1996, 103:94.
(273) Nightingale AL, Farmer RD. Ischaemic stroke in young women: a nested case-control study using the UK General Practice Research Database. Stroke, 2004, 35:1574-1578.

RURIKO PIRUTON さんのコメント...

添付文書改正私案
絶対禁忌条項
●35歳以上の片頭痛の患者
[片頭痛の患者は、虚血性脳卒中が発生しやすくなるとの報告がある.]
●前兆を伴う片頭痛の患者
[前兆を伴う片頭痛の患者は、虚血性脳卒中が発生しやすくなるとの報告がある.]
●局在性神経徴候を伴う頭痛のある患者
[髄膜腫の成長を促進するとの報告がある.]

相対禁忌条項
●35歳未満の前兆を伴わない片頭痛の患者。ただし、頭痛の激化や頻度の増加が見られる場合は服用を中止させる。
[片頭痛の患者は、虚血性脳卒中が発生しやすくなるとの報告がある.]