2013年2月13日水曜日

中国の避妊事情

中国の避妊事情の一端は、林謙治ほか「上海市における女性の人工妊娠中絶及び避妊に関する意識について」によって知ることができます。
この調査は上海で行われ、ほとんどが既婚者というサンプルの偏りがあります。
サンプルの偏りがあるにしても、中国の避妊事情の一面を示しているでしょう。
調査では興味深い結果が示されています。
1ヶ月の性交回数は、東京が2.6回であるのに上海では5.4回でした。
他の調査でも、日本の性交回数の少なさが明らかになっています。
しかも、さらに減少傾向をたどっているように見えます。
この性交回数の少なさが、避妊法の選択に影響しているかもしれません。


上海ではIUD利用率の高さが際立っています。
これは調査対象が既婚者であり、出産経験者比率が高いことと関係しています。
その点を考慮しても、IUDの利用率67.6%は注目されます。
欧米でも出産後はIUDが選好される傾向があり、
既婚者については欧米と似通った避妊選択が行われていると言えるでしょう。
同調査では、避妊についてパートナーとの話し合いが、
上海では90%の高率であることを指摘しています。
この指摘は非常に重要な指摘です。
上海では近代的避妊法(ホルモン避妊法・IUD・手術)の普及率が79%に達しています。
東京では、わずか5.6%です。
近代的避妊法の普及している国には、
必ず男女で避妊について話し合う文化があります。
近代的避妊法普及の鍵はこの文化ではないかと考えています。
カップルの話し合いを援助するシステムも重要です。
同調査によると、中絶後の避妊カウンセリングの満足度は、
上海で55%東京で23%でした。
それぞれのカウンセリングの内実はわかりませんが、
一般論としてカップルそれぞれの事情に則したアドバイスが満足度を高めます。
誰にでもピル推奨とか、誰にでもIUD推奨とかは、
カウンセリングとは言えません。
決めるのはあくまでカップル2人の話し合いで、
カウンセラーは2人の話し合いにアドバイスするという形です。
コンドーム普及推進とか、IUD普及推進とか、ピル普及推進とか、
それらは「避妊法を話し合う文化」となじみません。
ピルは中出しアイテムと勘違いされるといけないからこっそり使おうとか、
ピルこそベストな避妊法だとか、
個人的信条を振り回す人がいる限り近代的避妊法を受け入れる文化は育ちません。
近代的避妊法は避妊を話し合う文化という土壌に根付くものだと思います。

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