2013年2月25日月曜日

もう一つのノルレボ物語(8)乱用幻想のプロパガンダ

緊急避妊の「適正使用」の本質は、緊急避妊の抑制であり、
緊急避妊の普及阻止にほかなりません。
そのために、低用量ピルの緊急避妊への転用を秘密にし、
中用量ピルの転用を排除し、
ノルレボの価格を異常に高くし、
処方病院を限定する政策(実質登録制)が取られたのです。
世界では望まない妊娠をなくしたいと願う医師と女性が、
緊急避妊薬へのアクセスを容易にするように取り組み、
薬局での処方箋なし販売が多くの国で実現しています。
こともあろうに日本では、
世界の動きに逆行する政策が取られています。
この緊急避妊抑制策に良心的医師が疑問を感じるのは、
当然のことです。
良心的医師に対して「緊急避妊の抑制」を説得することは、
至難といわねばなりません。
どのように「説得」が行われているのでしょうか。

「すこしでも人工妊娠中絶術をおこさなくてもいいように、
望まない妊娠がせいりつしないように、と願い、
ノルレボをより積極的に導入することとしました。」
という良心的医師のブログ(ウェブ魚拓が開きます)を見てみましょう。
「ノルレボを中心とした、緊急避妊法についての講習会」に出席し、
「ノルレボをより積極的に導入」することにした経緯が書かれています。

韓国での話も衝撃的でした。
韓国では、緊急避妊薬を、一般薬として薬局で購入できるようにした結果、
ピルに比べ、緊急避妊薬が広く普及し、
結果としてピルによる避妊ではなくては、緊急避妊薬による避妊という概念が広まってしまった、と。
その結果として予想されるのは、中絶の件数が増えるという皮肉な結果となります。
http://megalodon.jp/2013-0225-1055-11/blog.m3.com/GREEN-HILL/20120801/1

良心的医師に対して緊急避妊抑制の必要を説得するには、
緊急避妊が普及するとかえって望まない妊娠が増える、
と宣伝するのがもっとも効果的です。
そこで韓国の事例が紹介されます。
韓国の事例を聞いて、この良心的医師は衝撃を受けているのです。
しかし、この韓国の話は架空の作り話に過ぎません。
まず、韓国で緊急避妊薬が薬局で購入できるという事実はありません。
韓国で緊急避妊薬は病院だけで処方される処方薬です。
2012年6月7日、韓国当局は処方薬である緊急避妊薬をOTCスイッチとする案(韓国語)を公表しました。
それに対して産婦人科医の団体が反対し、緊急避妊薬の薬店販売は実現していません。
講習会の話は、事実関係を全く逆にした作り話なのです。
韓国では緊急避妊薬の薬店販売はまだ実現していませんが、
韓国当局は薬店販売に転換させようとしています。
韓国だけでなく各国当局が緊急避妊薬の店頭販売転換の方針をとっているのはなぜでしょう。
講習会の話の通りだとすると、
各国政府は中絶件数を増やすために緊急避妊を普及させようとしていることになります。
講習会の話は、いくら何でもあり得ないトンデモ話なのです。

緊急避妊が普及すると望まない妊娠が増えるなど、
全くのインチキ話であることはスイスを見ればわかります。
スイスは緊急避妊薬をいち早く店頭販売とした国です。
そのスイスの事情について「中絶率が低いスイス その理由を探る」(ウェブ魚拓が開きます)という記事を紹介しましょう。

2011年には、妊娠可能年齢の女性(15~44歳)1000人に対し6.8人が中絶した。
これは、イギリスの2011年度の17.5人、フランスの2009年度の15人、アメリカの2008年度の16人などに比べ、極端に少ない。
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モーニングアフターピル
性行為の後で妊娠を回避するために飲むピル「モーニングアフターピル(緊急避妊薬)」は、前述の2002年の改正法以降、医師の処方箋がなくても入手できるようになった。
このピルの自由化は、避妊においてかなり重要な役割を果たすようになった。
スイスでは年間、10万パックが販売されていると医薬品産業界は発表している。

緊急避妊が普及すると中絶が増えるなどの戯言を言っているのは、
韓国の一部の産婦人科医と日本の産婦人科医だけです。
以下は緊急避妊に関する研究の最新レビュー(英文)です。

Published evidence would seem to demonstrate convincingly that making ECPs more widely available does not increase risk-taking or adversely affect regular contraceptive use.
124,125,126,127,128,129,130,131,132,133,134,135,136,137,138,139,140
公表されているエビデンスは、緊急避妊の利用環境の改善によって危険な性交渉が増加することはないし、通常の避妊法の使用に悪影響をもたらすことはないことを明確に示しているように見える。

上記の124から140は文献番号です。
世界的な権威者と数多くのエビデンスを向こうに回して
独自の見解を広めているのが我が日本の産婦人科医です。
しかし、何のエビデンスもない妄想なので、
韓国の作り話を持ち出しているのです。

もう一つのノルレボ物語(9)に続きます。

2000年に起きた異変
緊急避妊フィーバー
「適正使用」路線の第一歩
ソフィア狩り
プラノバール潰し
ノルレボ高価格の舞台裏
奇妙な親切
乱用幻想のプロパガンダ
良心的医師の悲鳴
親鸞は弟子一人ももたず
隠された情報
「適正使用」の代償


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