1.「心身反応」は危険な結論
水俣病の原因確定には時間がかかりました。
チッソ廃液説が確定するまでの紆余曲折には仕方のなかった側面もあるのですが、
結果的にはその時間が被害を拡大させてしまいました。
HPVワクチンの副反応については原因がよくわかっていません。
私はアルミニウム毒性反応ではないかとの疑念を持っていましたが、
個人的見解なので表明することを控えてきました。
厚生労働省の合同会議が出した結論は、「心身反応」でした。
合同委員会では、考えられる原因について検討し、
消去法で「心身反応」との結論が導かれました。
アルミニウム毒性反応についても検討されましたが、
動物実験結果を根拠に否定されました。
少し乱暴な言い方をすると、よくわからないから【気のせいと考えられる】という結論です。
この結論は問題のある結論だと思います。
もし、この委員会が水俣病の原因調査に当たったなら、
「心身反応」との結論を導き出すでしょう。
患者の救済や被害の拡大防止に何の役にも立たない結論です。
副反応が存在する以上、副反応にきっちり向き合って行かなくてはなりません。副反応に苦しむ人を支えなくてはなりません。HPVワクチンを推進するなら、最も必要なことは被害者をサポートすることです。http://t.co/YA2ywrvffy
— ピルとのつきあい方(公式) (@ruriko_pillton) 2014, 6月 22
2.難病治療研究振興財団チームの奮起
6月21日、毎日新聞は以下のように報じました。
「患者の多くに線維筋痛症にほとんどない物忘れなどの『高次脳機能障害』が起きている可能性が示唆され、西岡所長は『ワクチン接種によって新たな病気が起きている恐れがある』と分析する。・・・HANS症候群の診断基準案を作り、治療法確立や症状の周知を急ぐ方針だ。」
新聞記事は淡々と事実を報道しています。
しかし、難病治療研究振興財団チームの行動は賞賛されるべきとても勇気ある行動です。
記事には「新たな病気」の表現が使用されています。
実は昨年、定期接種停止前後に2つのブログ記事を書いた時、
「新たな病気」の疑念が頭の片隅にありました。
そのような観点から記事を書くことも考えたのですが、
実態を精査すべきと書くにとどめました。
難病治療研究振興財団チームは、副反応を「新たな病気」と捉え診断基準案を作成しました。
それは、副反応の解明に大きな一歩を踏み出したことを意味します。
3.無名ブログの行った大きな仕事
「新たな病気」が何であるのかは、まだ明らかでありません。
浜六郎氏などは抗リン脂質抗体ではないかとの見解を表明しています。
注目されてよい仮説だと思うのだが。>
HPV ワクチン接種後疼痛・神経症状:抗リン脂質抗体症候群では?https://t.co/ZQGPQ8ZEFh
— ピルとのつきあい方(公式) (@ruriko_pillton) 2014, 6月 21
立論にやや強引さが感じられますが、検討に値する見解と思われます。私が「新たな病気」の疑念を抱いたのは、
副反応がアルミ毒性反応のように思えたからです。
HPVワクチンの副反応を心身反応とすることは納得できない。個人的にはアルミニウム毒性反応ではないかと疑っている。→アルミニウムワクチンアジュバントは重大な免疫学的障害を誘発する可能性/アルミワクチンアジュバントの神経毒性など
http://t.co/XE1LxEURDw (英語)
— ピルとのつきあい方(公式) (@ruriko_pillton) 2014, 6月 22
副反応に関する知見の蓄積は、アルミ毒性反応で最も整合性をもって説明できるように思われます。
浜氏らの所説とも矛盾しないかもしれません。
「新たな病気」を解明していくためには、
副反応に関する内外の知見を蓄積整理することが必要と考えていました。
そのように考えている時見つけたのが、
外国でのサーバリックス副作用という名のブログです。
被リンクがほとんどない無名ブログですが、
膨大な外国文献を翻訳してアップしていました。
海外にも副反応について定説があるわけではありません。
模索の過程にあります。
日本の合同委員会の結論「心身反応」も一つの見解ですが、
数多くの知見の中にそれを位置づけるとかなり異端の見解と見ることができるでしょう。
私の見方にはバイアスがかかっているのかもしれませんが、
アルミ毒性反応と見る見方が強まっているように思えます。
このブログの日本語翻訳は正確になされており、
それなりの素養のある方の仕事です。
STAP細胞事件では長年にわたって論文不正を監視してきた11jigen氏のブログが注目されました。
ブログ外国でのサーバリックス副作用も貴重なブログであると思います。
4.原因解明がなぜ重要なのか
私は副反応について、原因解明が非常に重要と考えています。
それには2つの理由があります。
1つは副反応被害者の治療のためです。
合同会議の結論である心身反応説では、
カウンセリングやリハビリという治療が示されています。
しかし、もしこの副反応の原因が心身反応でないのなら、
正しい治療の機会を奪うことになりかねません。
心身反応でない原因があるのならば、
あるいは心身反応以外の原因がある可能性が否定できない状況であれば、
副反応の原因を心身反応と断定してしまうことは許されません。
万一結果的に副反応の原因が心身反応であったとしても、
他の原因を模索することは必要です。
2つ目は潜在被害者の問題です。
水俣病を例に考えてみましょう。
水俣病が心身反応と結論づけられたとします。
その時、水俣病は現に症状のある患者だけの問題となります。
しかし、実際は有機水銀中毒でした。
有機水銀中毒が原因であるとなれば、
有機水銀に曝露した多くの人達が、たとえ症状は軽くても、あるいは胎児被爆した人も、水俣病の患者として適切な治療を受ける機会を持ちます。
原因次第で患者の範囲は大きく異なるでしょう。
本来適切な治療を受けなければならない人が放置されるのを防ぐためにも、
原因をしっかり究明する必要があります。
原因解明を加速すべきです。
5.子宮頸がん検診を受けよう
HPVワクチン副反応は心身反応であるかもしれません。
その可能性は非常に低いと考えますが、
他の原因が確定していない現時点ではその可能性も皆無ではありません。
その場合、リスクよりもベネフィットの方が明らかに大きいと言えます。
リスクを知った上でワクチン接種を受ける選択は合理的選択です。
もし副反応の原因が他にある場合、たとえばアルミ毒性反応であった場合、
リスクは現在考えられている所よりも大きくなるでしょう。
重篤な症状の患者数をかなり上回る数の人が、
自覚症状のない程度の症状(たとえば軽度の記憶力低下)を経験するかもしれません。
私見では、その場合でもリスクよりもベネフィットの方が大きいのではないか、
と現時点では考えています。
未確定の要素はありますが、現時点で考えればHPVワクチンのベネフィットはリスクよりも大きい、と個人的には考えています。
しかし、副反応について十分解明されているとは言えない現状では、
HPVワクチン接種を受けないという選択もまた合理的な選択だと思います。
そこで、皆さんに伝えたいことがあります。
HPVワクチンを選択するにしても、選択しないにしても、
子宮頸がん検診は必ず受けるようにしましょう。
子宮頸がん検診を忌避する理由は何一つありません。
日本の子宮頸がん検診率は恥ずかしいほど低いレベルです。
HPVワクチン問題を契機として検診率が他の先進国並みになれば、
子宮頸がん死亡率は劇的に下がります。
一人でも多くの女性が子宮頸がん検診を受けるようになる事を願っています。