2013年4月3日水曜日

世におもねる専門家はいらない / 行列のできる法律相談所

行列のできる法律相談所」の放送内容

「行列のできる法律相談所」は人気のテレビ番組です。
同番組では、2013年2月17日、医者から処方された薬を人にあげるのは違法なのか?を放送しました。 
以下は番組公式サイトの保存ページです。
まずは問題設定場面です。

この問題に北村晴男弁護士が答えます。
以下が番組公式サイトの保存ページです。

サイトの内容をそのまま記述してみます。

違法
< 北村弁護士の解説 >
違法です。
処方箋薬というのは、
使い方によっては深刻な副作用・中毒作用があり得るものなのですね。
これは医師が診断をして、その結果として処方する。
そうでないのに渡すという事は、
深刻な健康被害が発生する可能性がありますから違法です。
ちなみに処方箋薬を他人に渡すと、
2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、
または科料に処せられることがありますから、
絶対にしないで下さい。

以上が番組の内容です。

朕は法律なり

前近代国家にも法律はありましたが、弁護士はいませんでした。
法律は君主が民を従わせる決まりだったからです。
君主の意志が法律なのですから、
法律に多様な解釈が成り立っても正解は君主の頭の中にあります。
君主が法律はこういう意味だと言えば終わりです。
近代国家の法律は同じ法律でも全く性質が異なっています。
何人も、たとえ君主であっても、法律に従わなくてはなりません。
法律は権力者の横暴に抵抗する武器ともなりました。
法律は国民が従うべきものから国民を守るものに変わったのです。

条文に基づかない法律解釈

北村弁護士の解説を見て下さい。
法律は条文に則して考えるものなのに、
どの条文に違法という記述が全くありません。
北村弁護士が違法と考える理由は、
法に則して考えたものではなく、
「深刻な健康被害が発生する可能性がありますから違法です」
となっています。
それは法律家の言葉ではありません。
北村弁護士は朕は法律なりの時代の人のようです。
北村弁護士にとって法律は民を従わせる決まりなので、
罰則だけはしっかりと強調しています。

薬事法第55条

北村弁護士は、
「2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金」だと脅します。
薬事法で「2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金」なのは、
以下の条文違反です。
第八十五条  次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一  第三十七条第一項の規定に違反した者(販売方法等の制限)
二  第四十七条の規定に違反した者(交付の制限)
三  第五十五条第一項(第六十条、第六十二条、第六十四条及び第六十八条の五において準用する場合を含む。)の規定に違反した者(販売、授与等の禁止)
四  第六十六条第一項又は第三項の規定に違反した者(誇大広告等)
五  第六十八条の規定に違反した者 (承認前の医薬品等の広告の禁止)
六  第七十五条第一項又は第三項の規定による業務の停止命令に違反した者(許可の取消し等)
七  第七十六条の五の規定に違反した者(広告の制限)

上記の中で処方薬の譲渡に関係するように見えるのは、三の第五十五条第一項だけです。
第五十五条第一項を見てみましょう。

第五十五条  第五十条から前条までの規定に触れる医薬品は、販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列してはならない。

第五十五条第一項には確かに、「授与」を禁止しています。
では授与を禁止されている「第五十条から前条までの規定に触れる医薬品」とはどのようなものでしょう。
薬事法50条51条は「(直接の容器等の記載事項)」で、52条53条は(添附文書等の記載事項)、54条は 「(記載禁止事項)」です。
50条から54条はメーカー等の遵守事項を記載しているのです。
50条から54条に違反する医薬品の流通を禁止しているのが第55条です。
出荷したメーカーや処方した病院薬局の責任が問われても、
患者の責任が問われるケースではないでしょう。
北村弁護士は、メーカーや病院薬局の責任を患者に転嫁しようとしているのでしょうか。

薬事法第24条

もともと薬事法は効果的で安全な薬品等を供給するための法律で、
市民を規制する法律ではありません。
したがって、市民が市民に薬品を譲渡する事は薬事法の規制対象となってはいません。
それは薬事法24条を見れば明らかです。
「(医薬品の販売業の許可) 」について規定した条文は以下の通りです。

第二十四条  薬局開設者又は医薬品の販売業の許可を受けた者でなければ、業として、医薬品を販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列(配置することを含む。以下同じ。)してはならない。ただし、医薬品の製造販売業者がその製造等をし、又は輸入した医薬品を薬局開設者又は医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者に、医薬品の製造業者がその製造した医薬品を医薬品の製造販売業者又は製造業者に、それぞれ販売し、授与し、又はその販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列するときは、この限りでない。

行列のできる法律相談所で問題となった事例は、「医薬品」の「授与」です。
「医薬品」の「授与」について薬事法24条は、「業として」行う事を禁じています。
市民が市民に医薬品を「授与」する行為は、「業として」行ったとは言えないでしょう。
したがって、薬事法第24条からも違法性はないと考えられます。
なお、薬事法24条違反は「三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金」です。

世におもねる専門家はいらない

北村弁護士の「解説」は余りにお粗末です。
専門家の発言は専門家としての知見に基づくから尊重されます。
北村弁護士は法律の専門家です。
しかし、譲渡を違法とする理由を見ると、
「深刻な健康被害が発生する可能性がありますから違法です」となっており、
法律の専門家としての発言ではなく医学の専門家のような発言となっています。
医薬品の譲渡は健康被害の原因になりますから好ましいことでないことは言うまでもありません。
北村弁護士が一市民としてそのような発言をしても、
それは問題ではありません。
問題は一市民としての意見を法律の専門家として発言し、
さも法律の専門家らしく「違法」と言ってのける事です。
たとえ一般国民の多数派の意見と異なっても、
そして自身の意見と異なっても、
あくまで専門家としての知見から発言するのが真の専門家です。

追記
このブログ記事は北村弁護士にお知らせ致しました。
北村弁護士が放送での発言を訂正して下さる事を期待します。
もちろん、もしこの記事に思い違いがあれば、
訂正し謝罪することは当然の事と考えています。

この記事はもう一つのノルレボ物語(11)隠された情報の関連記事です。

(参考)譲渡が禁止される薬品等
「麻薬及び向精神薬取締法」により規制される麻薬と向精神薬については譲渡が禁止されており、譲渡されて所持することも違法となる。薬事法は毒薬・劇薬について、「前二項の規定に触れる毒薬又は劇薬は、販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列してはならない。」(44条第3項)と規定し、譲渡を禁止している。
なお、「毒物及び劇物取締法」には譲渡禁止規定があるが、同法の対象は「医薬品及び医薬部外品以外のもの」である。
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※2013年4月10日以下を追加させていただきました。

世の専門家が皆、北村弁護士のようだったら、日本はもっといい国になれると思う。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

このブログの記事を読んだ人が「処方箋薬を誰かにあげても違法じゃない」と勘違いしませんかね(違法じゃない薬があるのはわかってますよ)?
処方箋薬の中には向精神薬とか劇薬とかもあるでしょうし、ものによっては違法になると思うんですけど、深く考えずに流し読みしてる人は「全ての処方箋薬で譲渡は問題ない」と思ってしまうかもしれませんよ。
管理人さんは分かってるんでしょうけど、注釈入れてもいいんじゃなかろうかと・・・

RURIKO PIRUTON さんのコメント...

せっかくのご意見なので注釈を入れましたが、
どうなんだろうと思わなくもない。
マル麻、マル向、マル毒、マル劇印の薬剤など圧倒的に少数だし、
見た事ない方が大部分のはず。
注釈を入れればかえってという気がしないでもないのだが。