2013年10月28日月曜日

「ピルは性感染症を予防できない欠陥避妊法」のウソ、ホント

タイトルを変更しました。
(新)「ピルは性感染症を予防できない欠陥避妊法」のウソ、ホント
(旧)クラミジア感染が酷いことになっている件
----------------------------------------------------------------
日本でピルの利用者にはコンドームの使用を推奨することになっており、
以下の文章が冊子に書かれています。

この薬は、HIV感染症(エイズ)および他の性感染症(たとえば梅毒、性器ヘルペス、淋病、クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、膣トリコモナス症、B型肝炎など)を防止するものではありません。これらの感染防止にはコンドームを使用することが大切です。

この文章を受けて、

ピルでは、性感染症(STD)を予防できません。性感染症予防には、コンドームを使用することが必要です。

などの啓発が行われています。
コンドームに言及する後段は日本独特ですが、前段は日本も欧米も同じです。
欧米の啓発は、以下のような表現です。

They do not protect against HIV infection (AIDS) and other sexually transmitted diseases.
Birth control pills do not protect you against any sexually transmitted disease,

including HIV, the virus that causes AIDS.
The Pill will not protect you against sexually transmitted diseases.


前段部分については、日本と諸外国に大差のないのがわかるでしょう。

言説は社会的文脈の中で、異なった意味を持ちます。
ピルとSTD予防についての言説は、まさにその典型とも言えるものです。
ピルが普及している社会では、
「ピルでは、性感染症(STD)を予防できません」
はどのように受け取られるでしょうか?
STD不安を持つピルユーザーとパートナーは、予防の方法を相談します。
相談を受けた医療者は検査を提案し、必要があれば治療するでしょう。
ただ、それだけのことです。
「ピルでは、性感染症(STD)を予防できません」は、
ピルでの避妊を忌避する理由になりません。
欧米の未婚ピルユーザーの間では、
ピルとコンドームのデュアルメソッドが取られることも少なくありません。



 19歳以下の年齢層では、約30%弱のピルユーザーがコンドームを併用しています。
 STDフリーが証明されていないとか、パートナー関係が不安定であるとかの理由もありますが、
避妊の切実度がより大きいことが関係しています。
(デュアルメソッドは2つの避妊法の組み合わせの意味です。
避妊にピル・STD予防にコンドームは、
デュアルメソッドの本来の意味ではありません。)
ピルが普及している社会では、
「ピルでは、性感染症を予防できません」との言説が、
ピル利用を抑制する効果はほとんどありません。

ところが、日本のようにピルでの避妊が普及していない社会では、
別の意味を持ってきます。

「ピルでは、性感染症(STD)を予防できません。性感染症予防には、コンドームを使用することが必要です。」

この言説が発するメッセージは、
ピルは性感染症を予防できない欠陥避妊法
となります。
1999年ガイドラインの作成者がピルの普及を阻止するために頭を絞って考え出したのが、
ピルは欠陥避妊法とのメッセージを伝えるコピーでした。
ピルは性感染症を予防できない欠陥避妊法
このメッセージはさらに一人歩きを始めます。
ピルは性感染症を予防できない欠陥避妊法だと考えれば、
ピルユーザーが増えれば性感染症が蔓延するのではないかとの憶測が広がります。
※ツイッターアカウント9Save は、
1年以上にわたり現在も毎日このフレーズを呟いています。
このフレーズは他のロボットにパクら拡散しています。

さらには、ピルユーザーはふしだら女との偏見まで生み出します。
(→広がる偏見「ピルはビッチな薬、ヤリマンの薬」についてのツイート

ところで、ピルは欠陥避妊法であると思い込ませるためには、
性感染症予防のためにはコンドームが有効との前提が必要です。
もちろん、コンドームは性感染症予防に有効です。
しかし、最も有効な方法であるのか、あるいは唯一の方策であるのか、については検討が必要です。

性感染症の一つにクラミジア感染症があります。
このクラミジア感染症は日本人の5%(20人に1人)が感染するとの推測があります。
クラミジア感染の広がりはSTDに対して無防備な性交渉がなされていることを示す指標ともなります。
上のフランスの避妊法利用グラフを見て下さい。
最もコンドーム併用率の高い年齢層でも30%弱です。
ピルだけで避妊しているカップルはゴマンといます。
しかし、フランスで性感染症が蔓延しているわけではありません。

むしろ、日本の方がクラミジアは蔓延しているのです。
コンドームがクラミジアの予防に有効だとすれば、
コンドームの使用率が世界有数の日本でクラミジア感染率が高いのはなぜか、となります。
考えられるのは、
①日本人はセックスパートナー数がやたら多い。
②日本人はコンドームを正しく使っていない。
の2つです。
①については、信頼できる比較データがありませんが、
おそらく大きな差はないでしょう。
②についても信頼できる比較データがありませんが、
これも大きな差はないでしょう。
たしかに、コンドームが正しく使用されていない現実があります。
しかし、考えてみるとフランスではコンドームを使用しないカップルが過半数以上いるわけですから、
トホホ群の比ではありません。

日本とフランスの違いは性感染症戦略の違いではないかと考えます。
下の図は、日本のクラミジア感染の年齢分布です。



グラフは2012年のデータですが、傾向は時代をさかのぼっても同じです。
この図から、クラミジア感染は20代をピークに減少するのがわかります。
また、30歳を境に男女の罹患率が逆転します。
 つまり女性は25歳を境にして急激に罹患率が低下するので、
男女の罹患率逆転が起きるのです。
なぜ、女性では25歳を境に罹患率が急激に低下するのでしょう。
その理由は恐らく妊娠出産と関係しています。
妊娠して産婦人科を受診してはじめてクラミジア感染が発覚するケースは少なくありません。
女性の産婦人科受診が25歳以後に多くなることと、
クラミジア罹患率の低下はリンクしているのではないかと考えます。
これが日本の現実だとすると、
日本のクラミジア感染率を下げるには早期の検査と治療が有効な方策となります。
ピルの普及している国でクラミジア感染が広がらないのは、
検査と治療で低年齢層のクラミジア感染率を低く抑えているからではないかと思います。
 上のツイートは2013年10月28日のツイートですが、
感染症との戦いはまさに戦争なのです。
性感染症にはワクチンという武器は使えません。
我が大本営はコンドームという武器で戦えと言います。
しかし、竹槍の使い方をいくら訓練しても戦争に勝てるとは思えません。
性感染症との戦争では、男の戦い方と女の戦い方が別ではないかと考えています。
ピルユーザーにはコンドームの使用が強く推奨されています。
男性以上に、です。
奇妙だと思いませんか?
ピルユーザーは女性です。
ピルユーザーがコンドームを使用するわけではありません。
大本営のオジサンの言に従っても性感染症戦争に勝てないなら、
女性は検査と治療という武器を考えるべきだと私は思います。

ピルが広く普及している国で性感染症感染の拡大が抑制され、
ピルがほとんど普及してない日本で性感染症が拡大しています。
この事実はピルが普及すれば性感染症感染が拡大する、
との考えが妄想に過ぎないことを示しています。
日本のピル政策はこの妄想に呪縛され続けています。
しかし、その結果は何だったのでしょう?
性感染症の拡大が抑制されることはありませんでした。
私たち女性は性感染症罹患のリスクに脅かされ続けています。
それだけではありません。
ピルユーザーと性感染症を結びつける偏見が蔓延ることになりました。
また、ピルは欠陥避妊法との偏見が生み出され、
女性の選択を歪めています。
ピルは性感染症を予防できない欠陥避妊法ではありません。
欠陥性感染症対策が性感染症の抑制に失敗しているだけのように思えます。





※不特定のパートナーと性交渉があるなら、
性感染症予防のためにコンドームを使うべきです。
もし、特定のパートナーとの性交渉ならば、
コンドームでの予防と検査・治療での予防のどちらかを選択することができます。
(もちろん、どちらも選択することを妨げる理由はありません。)
コンドームでの予防はコンドームを正しく使用しても失敗があるように、性感染症予防も失敗するリスクを持ちます。
検査・治療での予防は、お互いが不倫をしない限り、
明らかに有効性の高い合理的な予防法です。

2013年10月20日日曜日

黒を白と言う産婦人科界隈による「啓発」

グーグルでHRTを検索すると検索結果トップに出てくるのは、
エンジョイ エイジング【更年期障害の情報サイト】」です。
HRTはホルモン補充療法(hormone replacement therapy)のことです。
久光製薬の提供サイトですがサイトには同社のロゴが表示されるだけで、
ほぼどのページにも監修者の日本女性医学学会理事長名が最上部に表示されます。
日本女性医学学会理事長の監修した信頼できるサイトのようです。
「HRTの気になる副作用」のページを見てみました(保存ページが別窓で開きます)。
HRTと乳癌の関係をめぐっては延々と議論が繰り返されていますが、
HRTによって乳癌リスクはやや高くなるとするのが一般的見解で、
一部に変わらないとする見解があります。
ところが、「エンジョイ エイジング」では以下のように説明されています(クリックで拡大)。


同ページでは、
HRT経験者に乳がんが増えるわけではなく、むしろHRT未経験者に比べて乳がんになる危険性は半分以下だったのです。」
とわざわざ赤字で書かれています。
目を疑ってしまいました。
説明を読んでみると、トンデモなトリックが使われていることがわかります。
乳癌罹患と年齢の関係は、40歳代までの罹患が45%、50歳代までの罹患が77%です。
乳癌に罹患するとHRTの絶対禁忌に該当しますので、
HRTは行われません。
乳癌罹患者にHRT経験者が少なくなるのは当然のことです。
乳癌罹患者のHRT経験率が低いからといって、
乳癌罹患者はHRTをしなかったから乳癌リスクが上がったのではありません。
逆にHRTを経験すると乳癌リスクが低くなるなども言えません。
HRTの乳癌リスクはHRT経験者とHRT非経験者で比較しなければ意味がありませんし、
そのような比較データなど山ほどあります。
わざわざ意味のないデータを持ち出して、
HRT経験者の乳癌リスクは半減するなどトンデモにもほどがあります。

女性医療における情報提供の重要性


ピルもそうですしHRTもそうなのですが、
女性医療には殊の外に選択に委ねられる事柄が多くあります。
HRTにはメリットもリスクもあります。
更年期の症状を抱える女性にとってHRTは選択肢の一つです。
乳癌リスクが多少上がっても現在の症状がなくなるなら選択する女性もいるでしょうし、
乳癌リスクが多少とも上がるのなら他の選択をするという女性もいるでしょう。
この選択決定において重要なのは、
リスクについての正確な情報です。
正確な情報がなければ選択の決定ができません。
医療の役割は正確な情報提供を行い、女性の選択をサポートすることです。
その情報提供が、HRTで乳癌リスクが半減するかのようなトンデモではお話になりません。
これはたんにHRTの乳癌リスク問題ではなく、
非常に根の深い問題です。
他のエントリーで1970年米国上院のピルについての公聴会は、
女性医療ひいては医療全般の転換点になったと書きました。
以来、医療の役割は決定する人から情報提供する人に変わっていきます。
日本ではこの転換がなかったので、いまだに医療が決定する人を演じています。
医療が決定する人であれば、決定を合理化(正当化)する言説になるのもやむを得ないでしょう。
HRTで乳癌リスクが半減するかのようなトンデモは、そのような背景から生まれます。

ピルやHRTが普及しない理由


1970年米国上院のピルについての公聴会は歴史的な事件でした。
製薬メーカーの提供するバラ色の情報に対抗する客観的な情報を
どのように提供するかが課題となりました。
1970年公聴会事件の背景には女性運動の高まりがあり、
女性団体は客観的な情報の提供に力を入れていくことになります。
欧米のフェミニズムは当初より身体への関心を強く持っていましたが、
日本のフェミニズムはその側面を切り捨ててきました。
そのため日本では「選択する人」の側からの情報提供がなされませんでした。
また、欧米では政府など公的機関による情報提供も充実していきました。
公的機関による情報提供も「選択する人」のための情報提供です。
製薬メーカーと医師が一体となってビルやホルモン補充療法の【推進派】が形成される日本の状況は、
異常な光景なのです。
この異常な光景の中でビルやホルモン補充療法が普及することは、
絶対にあり得ません。
ビルやホルモン補充療法を選択するかどうかは、
個人個人で皆異なる事情があります。
遠距離恋愛で年に数回婚約者と会う女性と、
結婚後だが数年は仕事に力を入れたい女性と、
ボーイフレンドができたばかりの女性では、
避妊法の選択が異なっても不思議ではありません。
一律にピルという選択がよい、とは他者には言えないことです。
ビルやホルモン補充療法の【推進派】などというものが存在すること自体、
奇妙なことなのです。
選択と言うことに着眼しなければ、
【推進派】がいくら旗を振ってもピルやホルモン補充療法は普及するものではありません。
「ピルとのつきあい方」は選択のための情報提供を目指した日本では異端の、
世界では当たり前のサイトでした。
手前味噌ですが、おそらく「ピルとのつきあい方」ほど日本でのピル受容に貢献したサイトはありません。
ビルやホルモン補充療法は個々人の選択に委ねられるべきもの、との本質に立脚しているからこそと考えています。


【推進派】の生み出す不毛な光景


旅行には移動手段が必要です。
飛行機、新幹線、列車、バス、自家用車、タクシー、船、・・・。
それぞれはそれぞれにメリットがあるので使い分けます。
飛行機は新幹線より運賃は多少高いし事故のリスクもないわけではないが、
早さを考えればそれは問題ないと考える人もいるでしょう。
費用が一番の問題と考え夜行バスを選ぶ人もいるでしょう。
人によっても、場合場合によっても、選択は異なります。
それぞれのメリットとデメリットがわかっていれば、
選択はだいたい落ち着くところに落ち着くものです。
ビルやホルモン補充療法は飛行機のようなものかな、
と私は思っています。
メリットもあればデメリットもあります。
情報化時代にデメリットを隠しても意味はありません。
飛行機はとても低い確率ですが事故はあります。
航空会社は事故がないとは言わないでしょう。
飛行機に乗ると、世界中どこの航空会社も緊急時の対応をうんざりするほど繰り返します。
事故があるかもしれないとの前提で対応しているのです。
緊急時の対応をアナウンスすれば事故を心配して利用者が減る、
などと考える航空会社はありません。
もしそんな航空会社があれば、
私は利用したいとは思いません。
ところが、日本の【推進派】は副作用(事故)の情報を知らせると、
利用者が減ると考えているようです。
NPOは「日本国内では(ピルは)「怖い薬」が先行しているため、利点をツイートする」と述べました。(血栓症初期症状を説明している医師は21% 参照)
副作用隠しです。
上で見た「HRT経験者に乳がんが増えるわけではなく、むしろHRT未経験者に比べて乳がんになる危険性は半分以下だったのです。」
などは、もっと悪質な副作用隠しです。
このように副作用隠しを行っても、副作用の情報は広がります。
いや、副作用隠しを行うから、尾ひれの付いた副作用情報が広まってしまうのです。
その中には確かに偏見もあるでしょうが、
根本の問題は【推進派】の副作用隠しです。
一般の人々に選択するための情報提供が行われないから偏見的副作用情報が広まるのです。
そこで【推進派】は副作用の偏見を取り除くためと称してバラ色情報を振りまきます。
完全に悪循環になってしまいます。
この悪循環から脱するためには、
「ピルとのつきあい方」のような情報提供のあり方が有効なのです。
ところが実際は「ピルとのつきあい方」は、【推進派】から毛嫌いされているようです。
私は、HRTで乳癌が半減するなどと言うのはトンデモだとはっきり言います。
トンデモをトンデモと言われると【推進派】は逆ギレするようです。
※ピルの普及推進を唱えるグループは2005年以来、「ピルとのつきあい方」を中傷する活動を行ってきました。捨てアカの使用はこのグループの常套手段です。なお、このツイートは@ruriko_pilltonがツイッターを始める(2012年08月28日)前のもの。

2005年から延々と繰り返された【推進派】による当サイト中傷を6年間無視してきましたが、
2年ほど前からはきっちり反論するようにしました。
結果的に【推進派】のトンデモぶりが露呈されることになりました。
【推進派】的な啓発が逆効果しか生まないことは証明されています。
荒療法が必要なのです。

抜きがたい権威主義


「どこの誰が書いたのかわからないようなサイトを信用するな」
ピル【推進派】が唱え続けている呪文です。
そして、信頼できるのは監修つきの製薬メーカー情報だと主張します。



ため息が出そうです。
ピルの歴史は1970年の米国上院公聴会から大きく変わりました。
製薬メーカーが流すバラ色のピル情報が糾弾され、
女性はピルを与えられる人から選択する人に変わりました。
情報の質も大きく変わりました。
この歴史を知っていれば、
彼らのやっていることは歴史の針の40年逆戻しのように思えます。
歴史の針を40年逆戻ししてピルが普及するわけがありません。
ピルやHRTは医師が与える薬ではなく、女性が選択する薬です。
選択する女性にとって必要な情報は、
隠すところのない客観的な情報です。
「エンジョイ エイジング」は日本女性医学学会理事長の監修であることを強調しています。
そのこと自体が既に権威主義的です。
現在の日本には権威主義が通用する状況があることは事実です。
もし当サイトが「HRTのうれしい副効果、HRTで乳癌が半減すると判明」などと書いたら、
すぐにトンデモ扱いされるでしょう。
しかし、日本女性医学学会理事長監修だとだれもトンデモをトンデモ扱いしません。
ニセ科学クラスターの方々はさまざまなトンデモをあげつらうのが趣味ですが、
権威者のトンデモに異議を唱えたのを見たことがありません。
彼らもまた権威主義の枠内の人のように見えます。
メーカーはこのような状況を利用しようとしているのですが、
それは選択する薬であるピルやHRTには通用しません。
自分の飲む薬については納得できるまでよく考えるからです。
よく考えるとトンデモクラスターに引きつけられる人も出てきます。
「ピルとのつきあい方」にはトンデモな内容は含まれていないと考えていますが、
当サイトをトンデモ扱いすれば真性トンデモの肥料となるでしょう。
ここでも悪循環が生じます。


ピルは自由の薬です。
ピルは女性の自立と密接に関係した薬です。
このことが理解されるのには100年かかるかもしれません。
しかし、いつかきっと理解される日が来ると信じています。

2013年10月13日日曜日

血栓症初期症状を説明している医師は21%

ピル服用開始時に血栓症の初期症状を知っていましたか?」のアンケート回答が100件になりました。
ご協力ありがとうございました。
下の画像は2013年10月12日現在の結果です。



1.サンプルの代表性

回答数は100と少ない段階です。
しかし、回答数30以後の各項目の回答率は、ほとんど変動していません。
年齢分布や地域分布も、当ブログで行っている他のアンケートと近い数字になっており、
サンプル数の少なさによる誤差はあまりないと考えます。
もっとも、アンケートへの誘導リンクは「ピルとのつきあい方」関連サイトが主なので、
回答者の偏りはあるかもしれません。
血栓症の初期症状を服用前から知っていたとの回答は、19%に達します。
血栓症の初期症状を知っている一般女性はごくわずかなはずなので、
回答者には知識レベルの高い女性が多く含まれていると推測されます。

2.知らせようとしている医師は38%


1: 服用前から知っていたし、医師の説明もあった。8件  (8.0%)
3: 処方時に医師から説明を受けて知った。 13件  (13.0%)
4: 処方時にもらったパンフレットで知った。16件  (16.0%)
6: 服用開始後に、医師の説明で知った。 1件  (1.0%)

以上を合計すると、38件(38.0%)となります。
パンフレットを渡すだけでも医師が知らせる努力をしていると見なせば、
38%になります。
4と6の回答を差し引くと、処方時に血栓症初期症状を説明している医師は21%です。
ただ、どの程度の説明が行われているのか、
このアンケートからはわかりません。
コメント欄には以下のようなコメントがあります。
「付け足すと、血栓症の初期症状についての説明は非常に簡素なものでした。『ピルの注意事項を読んで、なにか異常があればまたきてください』というようなもの。」
「まずないと言われた、副作用はほとんどなく安全だと。初期症状が今知れてよかったです」
「でも覚えていなかった。」
「こちらから聞いたら説明してくれましたが、聞かなければそのままだったと思う。」
「パンフには血栓症とは書いてなかった。サイトで初めて知りました。」
「その後医師に記載があり、自分がその症状がありそうと相談しにいったときも特に説明はなく2〜3ヶ月はよくあることだから続けてくださいといわれただけでした」

38件(38.0%)には、医師によるごくごく簡単な説明があった場合も含まれています。
初期症状を知らせているケースでも、
血栓症の副作用を重要視しない慢心が医師にあるように感じられます。

3.自己学習したユーザーは35%


1: 服用前から知っていたし、医師の説明もあった。 8件  (8.0%)
2: 服用前から知っていたが、医師の説明はなかった。 11件  (11.0%)
5: 服用開始後にネット等の情報で知った。16件  (16.0%)

以上の回答を合計すると、35件(35.0%)となります。
このアンケートからはどこで学習したのか明らかにできません。
コメント欄の記載からは、ネットが重要な情報源ではなかったかと推測できます。
「ネット情報で知っていたが、副作用が出やすい体質を知っている医師からも説明はあった。」
「ピルとのつきあいかたで情報収集してましたので知っていました。ですがお医者様から血栓症のことは一度もきいたことありませんね…」

医師がきちんと説明することはもちろん重要ですが、
それとともにネット等の情報も非常に大切です。
短い診察時間での医師の説明が頭に残ることはむしろ稀です。
ピルユーザーがアクセスするサイトで血栓症の初期症状について注意を呼びかけることは、
情報の浸透に大きな意味を持ちます。
2000年代前半までのユーザーはほとんどが「ピルとのつきあい方」を知っていましたし、
初期症状についての情報も学んでいました。
2000年代前半までの血栓症発症数はきわめて少なく、
重篤化するケースもほとんどありませんでした。
「ピルとのつきあい方」は微力ながら一定の貢献をしてきたと自負しています。

4.知らされていないユーザーが35.0%


アンケートでは、
7: 今まで知らなかった。  35件  (35.0%)
という結果になっています。
コメント欄には以下のような記述が見られます。
「子宮内膜症の治療として、ルナベルを処方された時にOCには血栓症になるリスクがあるということを軽く言われたくらいで初期症状については一切知らされませんでした。」
「服用していたのは20代で今はしていない医師も薬剤師も何も言わなかった・・・」
「リスクが上がるのは聞きましたが具体的な症状については説明されませんでした。」
「血栓のリスクが高まる説明は受けたが、初期症状等の説明はありませんでした。」
「服用する前にある程度情報は集めて病院も選んだつもりでしたが…。このサイトで始めて知ることが多いです。」
「血栓症って言って血が固まりやすくなるから、よく水分を取るように…としか聞いていません。諸症状などは今初めて知りました。」

血栓の副作用について話しても初期症状まで話していないケースが多いとの印象です。
血栓症の副作用があるとだけ知っても、ユーザーには何の役にも立ちません。
このアンケートでは「知らなかった」は35%ですが、
全ピルユーザーではもっと高い比率になるでしょう。
早急にピルユーザーに初期症状の情報を提供していく必要があると思います。

5.初期症状を知ることの重要性


深部静脈血栓症の多くは先天的・後天的素因と環境条件が重なって生じると考えられています。
ピル(ホルモン)は環境条件の一つです。
素因がなくても(不明でも)深部静脈血栓症を発症することはありますが、
素因があると格段に発症リスクが高まります。
素因を持つ人はピルの服用で発症しなくても、
他の環境条件や加齢などの条件で発症するリスクを抱えています。
日本人で最も問題となる素因は抗リン脂質抗体と考えていますので、
抗リン脂質抗体を例に説明します。
上のツイートでは抗リン脂質抗体を持つ女性を1万人につき85人としましたが、
これはアバウトな数字です。
日本では抗リン脂質抗体の多くが不育症がらみで見つかっていますので、
実際はもっと多いかもしれません。
抗リン脂質抗体を持つ人がピルを服用すると血栓ができやすくなります。
血栓の初期症状で気づけば大事に至らずにすみますし、
自身の抗リン脂質抗体についても知ることができます。
それはとてもメリットの大きいことなのです。
抗リン脂質抗体がわかっていればそれなりの妊娠管理の方法もありますし、
妊娠以外でも大事に至るのを避ける方策を講じることができます。
血栓症の初期症状を知っていれば、
抗リン脂質抗体に比較的低リスクで気づくことができます。
ところが、血栓症の初期症状を知らなければ、
重篤な症状まで放置することになりますし、
ある場合にはそのまま死に至ります。
知っているのと知らないのでは雲泥の差があるのです。
ピルは環境条件の一つと書きましたが、
他の環境条件と異なりピルは服用を中止すれば消失する環境条件です。
ピルで血栓症リスクが高まるとも言えますが、
ピルで血栓症素因を比較的安全に発見できるとも言えるのです。
そのためには血栓症の初期症状の周知徹底が不可欠です。

6.ピルユーザーの死より普及の方が大事なOC推進派


2000年代半ば以後、副作用について知らせることはピル普及の障害になると考える人々が台頭してきます。
副作用隠しとも言える状況が生じてきます。
いわゆるOC推進派が血栓症や血栓症の初期症状に触れないのは、偶然ではないでしょう。
ピル服用中に肺閉塞が生じて入院中だった白井由香氏が、怒りを込めてOC推進派の言説を批判しました。
白石氏の批判に対して、NPOは「ただ日本国内では「怖い薬」が先行しているため、利点をツイートすることが多いのです。」と弁明しました。
この弁明は、ユーザーの安全よりピルの普及の方が大事と考える彼らの思考を余すところなく示しています。
弁明では「利点をツイートすることが多い」と書いていますが、副作用情報については何も語らないと言えるほどです。
それだけではありません。
「これもピルの副作用?…と思う前に、生活リズムを見直してみて。」は、
たまたまの発言ではなく、確信犯なのがわかるでしょう。
このような言説がいかに危険であるか、具体的に指摘しておきましょう。
ヤフー知恵袋における相談とNPO副理事長氏の回答です。
相談者は、以下のように相談しています。

「ピルの副作用。血栓症とあります。ピルをきちんと服用しだして2シート目です。1シート目から、両足のふくらはぎのだるさ、軽い痛みがあります。 夜、寝ている時に目が覚めてなんか足がだるいなぁということがありました。片方のふくらはぎが少し痛むこともあるし、寝ている時は両足がだるいです。2シート目からも多少あります。これは血栓症を心配したほうがいいのでしょうか?それとも、しばらく飲み続けると治まるのでしょうか?」

相談者は血栓症の初期症状について知識を持っているようで、
血栓症の初期症状ではないかと心配しています。
この相談者に血栓が生じているか否かは別にして、
血栓症の初期症状を疑わなくてはならない症状を訴えています。
以下はこの相談に対する副理事長氏の答えです。

「むくみと考えて良さそうですが。
血栓症の初期症状は激しい胸や頭の痛み・刺すようなふくらはぎの痛みなどです(^-^)」

「紙上診断」で血栓症の初期症状を否定してしまっています。

もし相談者に血栓ができていたとしたら、
放置して重篤な状態に陥ったとしたら、
あるいは死亡してしまったとしたら、
どう責任を取るのでしょうか?
現時点でこのやり取りの閲覧数は824です。
閲覧者の中にはこのやり取りを参考にし適切な対応を取らないピルユーザーも出るでしょう。
「これもピルの副作用?…と思う前に、生活リズムを見直してみて。」
このような考えでピルの「啓発活動」が行われては、
日本のピルユーザーはいくら命があっても足りません。
 

7.ピルは頭で飲む薬

 
1970年、アメリカ上院の公聴会でピルの副作用問題が取り上げられました。
副作用についてしっかり情報提供してこなかった医療に対する怒りが全米に広がります。
この一件を契機にしてピルをめぐる医療と女性の関係は大きく転換していきます。
「ピルとのつきあい方」初編では、「ピルは頭で飲む薬」と書きました。
それは1970年以後の欧米における状況を念頭に置いたものでした。
日本では既に2人の犠牲者が出ています。
この犠牲を無駄にしてはなりません。
自分の身体について知り、ピルについて知る女性。
私は全てのピルユーザーがそんな女性であってほしいと願っています。
そのためには、正確な情報の提供が不可欠です。
副作用隠しがあってはなりません。
頭でピルを飲む女性は副作用をおそれることはないのですから。

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