2013年10月13日日曜日

血栓症初期症状を説明している医師は21%

ピル服用開始時に血栓症の初期症状を知っていましたか?」のアンケート回答が100件になりました。
ご協力ありがとうございました。
下の画像は2013年10月12日現在の結果です。



1.サンプルの代表性

回答数は100と少ない段階です。
しかし、回答数30以後の各項目の回答率は、ほとんど変動していません。
年齢分布や地域分布も、当ブログで行っている他のアンケートと近い数字になっており、
サンプル数の少なさによる誤差はあまりないと考えます。
もっとも、アンケートへの誘導リンクは「ピルとのつきあい方」関連サイトが主なので、
回答者の偏りはあるかもしれません。
血栓症の初期症状を服用前から知っていたとの回答は、19%に達します。
血栓症の初期症状を知っている一般女性はごくわずかなはずなので、
回答者には知識レベルの高い女性が多く含まれていると推測されます。

2.知らせようとしている医師は38%


1: 服用前から知っていたし、医師の説明もあった。8件  (8.0%)
3: 処方時に医師から説明を受けて知った。 13件  (13.0%)
4: 処方時にもらったパンフレットで知った。16件  (16.0%)
6: 服用開始後に、医師の説明で知った。 1件  (1.0%)

以上を合計すると、38件(38.0%)となります。
パンフレットを渡すだけでも医師が知らせる努力をしていると見なせば、
38%になります。
4と6の回答を差し引くと、処方時に血栓症初期症状を説明している医師は21%です。
ただ、どの程度の説明が行われているのか、
このアンケートからはわかりません。
コメント欄には以下のようなコメントがあります。
「付け足すと、血栓症の初期症状についての説明は非常に簡素なものでした。『ピルの注意事項を読んで、なにか異常があればまたきてください』というようなもの。」
「まずないと言われた、副作用はほとんどなく安全だと。初期症状が今知れてよかったです」
「でも覚えていなかった。」
「こちらから聞いたら説明してくれましたが、聞かなければそのままだったと思う。」
「パンフには血栓症とは書いてなかった。サイトで初めて知りました。」
「その後医師に記載があり、自分がその症状がありそうと相談しにいったときも特に説明はなく2〜3ヶ月はよくあることだから続けてくださいといわれただけでした」

38件(38.0%)には、医師によるごくごく簡単な説明があった場合も含まれています。
初期症状を知らせているケースでも、
血栓症の副作用を重要視しない慢心が医師にあるように感じられます。

3.自己学習したユーザーは35%


1: 服用前から知っていたし、医師の説明もあった。 8件  (8.0%)
2: 服用前から知っていたが、医師の説明はなかった。 11件  (11.0%)
5: 服用開始後にネット等の情報で知った。16件  (16.0%)

以上の回答を合計すると、35件(35.0%)となります。
このアンケートからはどこで学習したのか明らかにできません。
コメント欄の記載からは、ネットが重要な情報源ではなかったかと推測できます。
「ネット情報で知っていたが、副作用が出やすい体質を知っている医師からも説明はあった。」
「ピルとのつきあいかたで情報収集してましたので知っていました。ですがお医者様から血栓症のことは一度もきいたことありませんね…」

医師がきちんと説明することはもちろん重要ですが、
それとともにネット等の情報も非常に大切です。
短い診察時間での医師の説明が頭に残ることはむしろ稀です。
ピルユーザーがアクセスするサイトで血栓症の初期症状について注意を呼びかけることは、
情報の浸透に大きな意味を持ちます。
2000年代前半までのユーザーはほとんどが「ピルとのつきあい方」を知っていましたし、
初期症状についての情報も学んでいました。
2000年代前半までの血栓症発症数はきわめて少なく、
重篤化するケースもほとんどありませんでした。
「ピルとのつきあい方」は微力ながら一定の貢献をしてきたと自負しています。

4.知らされていないユーザーが35.0%


アンケートでは、
7: 今まで知らなかった。  35件  (35.0%)
という結果になっています。
コメント欄には以下のような記述が見られます。
「子宮内膜症の治療として、ルナベルを処方された時にOCには血栓症になるリスクがあるということを軽く言われたくらいで初期症状については一切知らされませんでした。」
「服用していたのは20代で今はしていない医師も薬剤師も何も言わなかった・・・」
「リスクが上がるのは聞きましたが具体的な症状については説明されませんでした。」
「血栓のリスクが高まる説明は受けたが、初期症状等の説明はありませんでした。」
「服用する前にある程度情報は集めて病院も選んだつもりでしたが…。このサイトで始めて知ることが多いです。」
「血栓症って言って血が固まりやすくなるから、よく水分を取るように…としか聞いていません。諸症状などは今初めて知りました。」

血栓の副作用について話しても初期症状まで話していないケースが多いとの印象です。
血栓症の副作用があるとだけ知っても、ユーザーには何の役にも立ちません。
このアンケートでは「知らなかった」は35%ですが、
全ピルユーザーではもっと高い比率になるでしょう。
早急にピルユーザーに初期症状の情報を提供していく必要があると思います。

5.初期症状を知ることの重要性


深部静脈血栓症の多くは先天的・後天的素因と環境条件が重なって生じると考えられています。
ピル(ホルモン)は環境条件の一つです。
素因がなくても(不明でも)深部静脈血栓症を発症することはありますが、
素因があると格段に発症リスクが高まります。
素因を持つ人はピルの服用で発症しなくても、
他の環境条件や加齢などの条件で発症するリスクを抱えています。
日本人で最も問題となる素因は抗リン脂質抗体と考えていますので、
抗リン脂質抗体を例に説明します。
上のツイートでは抗リン脂質抗体を持つ女性を1万人につき85人としましたが、
これはアバウトな数字です。
日本では抗リン脂質抗体の多くが不育症がらみで見つかっていますので、
実際はもっと多いかもしれません。
抗リン脂質抗体を持つ人がピルを服用すると血栓ができやすくなります。
血栓の初期症状で気づけば大事に至らずにすみますし、
自身の抗リン脂質抗体についても知ることができます。
それはとてもメリットの大きいことなのです。
抗リン脂質抗体がわかっていればそれなりの妊娠管理の方法もありますし、
妊娠以外でも大事に至るのを避ける方策を講じることができます。
血栓症の初期症状を知っていれば、
抗リン脂質抗体に比較的低リスクで気づくことができます。
ところが、血栓症の初期症状を知らなければ、
重篤な症状まで放置することになりますし、
ある場合にはそのまま死に至ります。
知っているのと知らないのでは雲泥の差があるのです。
ピルは環境条件の一つと書きましたが、
他の環境条件と異なりピルは服用を中止すれば消失する環境条件です。
ピルで血栓症リスクが高まるとも言えますが、
ピルで血栓症素因を比較的安全に発見できるとも言えるのです。
そのためには血栓症の初期症状の周知徹底が不可欠です。

6.ピルユーザーの死より普及の方が大事なOC推進派


2000年代半ば以後、副作用について知らせることはピル普及の障害になると考える人々が台頭してきます。
副作用隠しとも言える状況が生じてきます。
いわゆるOC推進派が血栓症や血栓症の初期症状に触れないのは、偶然ではないでしょう。
ピル服用中に肺閉塞が生じて入院中だった白井由香氏が、怒りを込めてOC推進派の言説を批判しました。
白石氏の批判に対して、NPOは「ただ日本国内では「怖い薬」が先行しているため、利点をツイートすることが多いのです。」と弁明しました。
この弁明は、ユーザーの安全よりピルの普及の方が大事と考える彼らの思考を余すところなく示しています。
弁明では「利点をツイートすることが多い」と書いていますが、副作用情報については何も語らないと言えるほどです。
それだけではありません。
「これもピルの副作用?…と思う前に、生活リズムを見直してみて。」は、
たまたまの発言ではなく、確信犯なのがわかるでしょう。
このような言説がいかに危険であるか、具体的に指摘しておきましょう。
ヤフー知恵袋における相談とNPO副理事長氏の回答です。
相談者は、以下のように相談しています。

「ピルの副作用。血栓症とあります。ピルをきちんと服用しだして2シート目です。1シート目から、両足のふくらはぎのだるさ、軽い痛みがあります。 夜、寝ている時に目が覚めてなんか足がだるいなぁということがありました。片方のふくらはぎが少し痛むこともあるし、寝ている時は両足がだるいです。2シート目からも多少あります。これは血栓症を心配したほうがいいのでしょうか?それとも、しばらく飲み続けると治まるのでしょうか?」

相談者は血栓症の初期症状について知識を持っているようで、
血栓症の初期症状ではないかと心配しています。
この相談者に血栓が生じているか否かは別にして、
血栓症の初期症状を疑わなくてはならない症状を訴えています。
以下はこの相談に対する副理事長氏の答えです。

「むくみと考えて良さそうですが。
血栓症の初期症状は激しい胸や頭の痛み・刺すようなふくらはぎの痛みなどです(^-^)」

「紙上診断」で血栓症の初期症状を否定してしまっています。

もし相談者に血栓ができていたとしたら、
放置して重篤な状態に陥ったとしたら、
あるいは死亡してしまったとしたら、
どう責任を取るのでしょうか?
現時点でこのやり取りの閲覧数は824です。
閲覧者の中にはこのやり取りを参考にし適切な対応を取らないピルユーザーも出るでしょう。
「これもピルの副作用?…と思う前に、生活リズムを見直してみて。」
このような考えでピルの「啓発活動」が行われては、
日本のピルユーザーはいくら命があっても足りません。
 

7.ピルは頭で飲む薬

 
1970年、アメリカ上院の公聴会でピルの副作用問題が取り上げられました。
副作用についてしっかり情報提供してこなかった医療に対する怒りが全米に広がります。
この一件を契機にしてピルをめぐる医療と女性の関係は大きく転換していきます。
「ピルとのつきあい方」初編では、「ピルは頭で飲む薬」と書きました。
それは1970年以後の欧米における状況を念頭に置いたものでした。
日本では既に2人の犠牲者が出ています。
この犠牲を無駄にしてはなりません。
自分の身体について知り、ピルについて知る女性。
私は全てのピルユーザーがそんな女性であってほしいと願っています。
そのためには、正確な情報の提供が不可欠です。
副作用隠しがあってはなりません。
頭でピルを飲む女性は副作用をおそれることはないのですから。

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