2014年2月27日木曜日

「性と健康を考える女性専門家の会」の理念を賞賛する

ピル認可前の1997年に性と健康を考える女性専門家の会が結成されます。
16年余が経過しました。
日本のピルの現状を見るとき、少しく考えることがあります。
長くなりますがこの会の理念を引用してみます(太字強調は引用者)。
http://square.umin.ac.jp/pwcsh/about/ayumi.html 2014/02/27

◆以下引用◆
ひとりひとりの女性が満足できる女性医療とはなにか・・・・・ 医療・保健システムに女性の視点を生かし、男女ともに生き生きと幸福に暮らせる社会をつくりたい ― わたしたちの会は、同じ願いをもつ医療者・学者・教師・ジャーナリストなどにより、1997年に設立されました。
 そのきっかけは低用量ピル(以下ピル)の認可問題でした。
 1997年3月、ピル認可について検討するための公衆衛生審議会を傍聴した堀口雅子医師(虎の門病院産婦人科元医長)は、会の設立呼びかけのレターに、ピルが審議会で「認可されれば女性の性行動が活発になりエイズなどの性感染症の蔓延が危惧される。したがって認可すべきではない。」という論調で話し合われることに、「何度“違う!”と声にならない声をあげ、こぶしを握りしめたことでしょう」と書いています。そもそも、何十人といる審議会のメンバーのうち、女性の委員はひとりもいなかったのでした。
 堀口医師からの「もしかして妊娠してしまったかもしれない、という不安を抱えて指折り待つ女性たちの不安、月経がはじまりほっと安堵する気持ちを彼らは知っているのでしょうか。わたしたちは女性の代弁者として、かつ専門家として、きちんと意見を言うべきではないでしょうか。」という熱いメッセージは、ジャーナリスト芦田みどりさんの仲介を得て、数十人の女性たちに届けられ、初夏のある日、堀口医師の自宅にメンバーがあつまりました。
 これは、興奮する出来事でした。お互いに名前は聞いたことはあるがはじめて会ったプロフェッションルたちが、はじめて、個人として感じていた女性医療の実態への疑問や不信について語り合ったのです。そして「私たち自身がきちんと情報を得、女性の目からみた、冷静で科学的な発言を、医療や行政に対してしていこう!」と意見が一致し、「性と健康を考える女性専門家の会」が立ち上がったのでした。
(会の名前が決まる前、当会は1107の会(いいオンナの会)と呼ばれ、11月7日に設立集会が予定されていました。現在もメーリングリストのアドレスにその番号が残されています。実際の立ち上げは、11月8日に行われました。)
 そして、1999年7月にピルが日本ではじめて経口避妊薬として認可され、9月に発売されるまで、当会の活動はたいへん活発で、実に多彩なセミナー、シンポジウム、勉強会、アドボカシー活動を行ってきました。
 思い出に残るのは、設立集会となったコロンビア大学のキャロリン・ウェストホフ助教授による「ピルの認可を求めて」、500名以上の参加者を集めて行われた、スウェーデンのカロリンスカ大学のハーゲンフェルト教授ら世界の名だたる講師陣によるシンポジウム「21世紀の女性医療」です。会員の熱気と会の若いエネルギーの感じられる催しでした。
 また、主な女性議員たちに働きかけたり、旧厚生省、日本産婦人科学会、日本母性保護医協会、テレビや新聞の関係者など、私たちが会ってアドボカシーを行った人々は多岐にわたりました。その間、「ピルと女性の健康」検討資料集、避妊ガイドブックなどメンバーの手によって出版、製作された本や資料のいくつもが、ピル認可後の使用指針になっています。
 認可が決定した1999年の5月には、事務局である朝日エルの会議室に堀口会長以下主だったメンバーが集まり、祝杯をあげました。この2年間の間に、一部専門家や官僚、政治家のあいだで、ピルは、「エイズを蔓延させるもの」から「女性が主体的に利用できる科学的な避妊法のひとつ」として認識が変わってきました。
 しかし、認可されても、国民の多くのあいだでは、あいかわらずピルといえば、「副作用がある、ホルモンはこわい、自然でないものはやめたほうがいい」という偏見や誤解が強いという現状は変っていませんでした。一般の女性たちの科学的知識が増え、心身と社会的な健康に対する認識が高まり、自己価値感と性の自己決定能力が育たなければ、避妊薬(望まない妊娠に対する予防薬)としてのピルは服用できないということがわかったのです。また、多くの産婦人科や他科の医療者たちの方も、偏見があり管理的・指示的で、女性たちに正しい知識を提供し、女性たちの選択を重んじてピルを処方することが難しい状況が浮かび上がってきました。
 そこで、私たちは、どのようにすれば、日本女性たちが予防と生涯健康の視点を育て、証拠に基づいた科学的な情報を得、個々のライフスタイルに合わせて情報の選択と利用を行っていけるのかを次の課題として活動するようになってきました。
 2000年に作成した会の紹介パンフレットには、以下のように書かれています。
 この50年間に女性のライフスタイルはすっかり変わっています。身体の成長と性行動の開始が早くなり、産む子どもの数は少なくなりました。一方で高学歴化し、職業をもって社会参加するのがあたりまえになりました。寿命も飛躍的に延び、閉経後の人生は30年以上に及んでいます。それにともない、長い人生をどうやって健康の質(QOL)を保ちながら豊かに生きるかが新しい課題となっています。
WHOは、身体のみならず精神も社会的な状態も、すべて良い状態(Wellbeing)であってこそ、真の健康と言っています。私たちは、女性の健康の専門家を目指して、証拠にもとづいた正しい情報を提供し、わが国に包括的な女性医療・保健システムを実現するために活動をしています。
 このころから会は新しいメンバーを次々に迎え、第二期とも言える時代に入りました。ピルの問題を通してはっきりしてきた女性医療・保健の課題に多方面からとりくむプロジェクト活動が中心になりました。健康啓発(ヘルスエデュケーション)、学校や地域での性教育、自己決定能力の育成などを柱として、10を超えるプロジェクトが誕生しました。内科・産業医や精神科医、研究者などを中心とした「働く女性の健康プロジェクト」は、すでに何度も新しい形のセミナー・シンポジウムを展開しておりましたし、薬剤師たちが中心になって「くすりプロジェクト」がCASP(エビデンスに基づいた論文評価法)の勉強会を開催、また医療者として自立し行動していこうとする「助産師エンパワーメンプロジェクト」、避妊ばかりではなく性の健康を社会的に考えようとする「STD予防プロジェクト」「十代の健康プロジェクト」など、職域を超え学際的に活動しようとする多種多彩な会員たちの自由闊達な活動が広がっていきました。
 ふりかえってみますと、これまでの活動は以下のように多岐にわたっています。
1. 政策への提言
低用量経口避妊薬の認可を求めて
新しい女性医療システムを目指して
十代の性教育の充実を求めて
2.シンポジウム・セミナー
「21世紀の女性医療」
「性感染症や中絶から十代を守ろう」
「避妊カウンセリング―日本とアメリカ」
「働く女性の健康」
「働く女性のメンタルヘルス」
「中高年女性の健康―Complete Wellnessとは―」
「女性の健康とクスリ」
「くすりCASP勉強会」
「出産シンポジウム」他
3.リーダーシップ研修
ピル講師養成講座
十代への性教育講師養成講座
4.調査研究
日本女性の性・避妊行動調査
メディアの性感染症の取り上げ方についての研究
5.出版・編集協力、ビデオ、スライド作成
6.広報活動
年4回のニュースレター発行
インターネットホームページの運営
7.ネットワーク形成
日本女医会、米国女医会、ほか国際アドバイザー多数との交流

 また、臓器別ではなくトータルな人間として診る統合医療を臨床で実践しようとする女性総合医療も、当会会員を中心に各地で試みられるようになりました。岡山や福岡での試みはその先駆とも言えます。また、医学的にも性差医療(ジェンダースペシフィックメディスン)が注目され、男性と女性の生物学的、遺伝学的、医学的、社会的差異について検討されようとしています。
 2003年。女性医療・保健は「健康日本21」でリプロダクティブヘルス・ライツの項目として掲げられ、わが国の医療・保健の目標として推進されようとしています。しかし、ひとりひとりの人間によりそい、自己決定を支援しようと私たちが求めてきたトータルな医療・保健の実現には、まだ遠い道のりであるといえます。とはいえ、この数年、当事者主体の医療改革のムーブメントには目をみはるものがあり、これからは、ますます当会が、専門家でありかつ当事者の視点を失わない活動を、真に一般女性の健康と幸福のために展開できるのかどうかが、試されることでしょう。
 最後に、私たちが、生涯にわたる女性の真の健康を実現していくために、今後活動してゆくための5つの柱を掲げたいと思います。
  1. 従来の母子保健制度の枠を超え、女性の健康の視点からリプロダクティブ・ヘルス/ライツの推進をしていきます。妊娠や分娩ばかりでなく、月経、不妊、望まない妊娠や性感染症、更年期、女性ホルモンの積極的利用などについても積極的に考えていきます。
  2. 総合的な女性の健康(Women's Health)を実現させる医療や保健システムの確立にむけて活動していきます。栄養や睡眠、ストレス、がん予防、メンタルケア、思春期や高齢者の健康問題など、女性の健康にも学際的な研究や医療の提供が必要とされています。
  3. 子どもからおとなまで、男女一緒の性と健康に関する教育を実現させていきます。従来の性教育を見直し、個人の人権を尊重した科学的な健康教育が必要です。わたしたちは、「性」と「こころ」の自己決定をサポートしていきたいと考えています。
  4. 科学的な証拠に基づく医療(EBM)の考え方を導入し、わが国の女性の健康に関する学際的研究を行っていきます。
  5. 患者や障害者、高齢者、子どもなど弱者にやさしい医療や社会の構築を提言します。パターナリズム(家父長主義)を廃し、ひとりひとりの人間が尊厳のある個人として大切にされる、心地よい社会環境を実現していきます。

 ◆以上引用◆

すばらしい理念なので、理念を賞賛するとのタイトルを付けました。
理念にそったすばらしい活動も行いました。
たとえば1999年12月に性と健康を考える女性専門家の会は、
ガイドライン等に「2日以上のみ忘れたら止めるように書かれているが、
それでは妊娠リスクを上げてしまう」として厚生省に改善の申し入れを行いました。
この服用法では妊娠回避効果が全くないだけでなく、
血栓症リスクを高めてしまいます。
理念もすばらしいが活動もすばらしい、と賞賛しておくことにします。

もし私が後代の歴史家であったなら、
「性と健康を考える女性専門家の会」とそのメンバーの言説に即して日本におけるピル受容を考察するでしょう。
私は後代の歴史家ではないので、それは控えておきましょう。

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以下は余談です。蛇足です。
18世紀後半、世界各地に啓蒙専制君主が現れます。
明治日本も啓蒙専制君主の国と似ています。
啓蒙専制君主の改革は一定の成果を上げます。
しかし、社会を根底から改革することは出来ませんでした。
啓蒙専制君主の国では、日本の自由民権運動のような運動が起こります。
下からの運動です。
啓蒙専制君主と下からの運動は、共通する理念を持っていました。
しかし、どの啓蒙専制君主の国でも、下からの運動は抑圧されます。
そのような歴史がありました。

なお、余談の余談になりますが、
「ピルとのつきあい方」はずっと飲み忘れの問題を取り上げてきましたし、
ブログでは産婦人科医の犯罪的怠慢の記事を書きました。
 避妊失敗のリスク、血栓症副作用のリスクにピルユーザーが曝されているなら、
ピルユーザーに注意を喚起したいからです。

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2014年2月26日水曜日

トリキュラー・アンジュによる血栓症等の副作用発現状況

昨秋からピルの副作用による死者 の報道がなされています。
私は報道よりも事態ははるかに深刻と考えています。
現状を変えていかなければ副作用に苦しむ、あるいは命を落とすピルユーザーが生み出され続けます。
ピルが女性を苦しめる薬であるとき、女性がピルを拒否するようになるのは当然の成り行きです。
そうならないように、ピルの副作用被害をなくすための10の提言 をまとめました。
ところが、深刻な事態を招いた当の産婦人科医の中には、
この副作用問題の本質が見えてない医師がいるようです。
報道ではヤーズの副作用が報じられましたが、
問題はヤーズに固有の問題ではありません。
ピルの副作用問題の本質を血栓症リスクが最も低い第2世代ピルに即してみてみましょう。
第2世代の低用量ピルには、現在トリキュラー・アンジュ・ラベルフィーユの3ブランドがあります。
現時点で公表されている第2世代低用量ピルによる副作用報告は以下の通りです。

報告
年/期
ブランド 副作用 年齢 転帰
13/2 アンジュ 脳梗塞 40
13/2 トリキュラー 血栓 30
13/2 トリキュラー 脳梗塞 20
13/2 アンジュ 肺閉塞 30
13/1 アンジュ 肺閉塞 40
13/1 ラベルフィーユ 大脳静
脈血栓
40
13/1 トリキュラー 静脈血栓 40
12/2 トリキュラー 肺閉塞 30
12/2 トリキュラー 肺閉塞 30
12/2 トリキュラー 肺閉塞 40
12/4 アンジュ 門脈血栓 40
12/4 アンジュ 静脈血栓 30
12/4 アンジュ 大脳静
脈血栓
40
12/3 アンジュ 静脈洞
血栓
40
12/3 トリキュラー 血栓性
静脈炎
40
12/3 アンジュ 肺閉塞 20
12/3 アンジュ 脳梗塞 50
12/3 トリキュラー 静脈血栓 40
12/1 トリキュラー 静脈血栓 40
12/1 アンジュ 肺閉塞 20
12/1 アンジュ 静脈洞
血栓
40
12/1 トリキュラー 静脈血栓 30
11/2 アンジュ 肺血栓 40
11/2 トリキュラー 静脈血栓 40
11/2 アンジュ 脳梗塞 40
11/4 アンジュ 肝静脈
血栓
40
11/3 アンジュ 大脳静脈
血栓
40
11/1 トリキュラー 静脈洞
血栓
40
11/1 アンジュ 播種性
血管内凝固
20
10/4 アンジュ 肺血栓 30
10/4 アンジュ 急性冠動脈
症候群
40
10/4 アンジュ 静脈血栓 30
10/3 アンジュ 静脈血栓 40
10/3 トライディオール 肺血栓 30
10/3 トリキュラー 脳出血 20
10/3 トリキュラー 腎梗塞 20
10/3 トリキュラー 頭蓋内圧
亢進
40
10/3 アンジュ 肺閉塞 30
10/1 トライディオール 頭蓋内圧
上昇
10
10/1 トリキュラー 血管炎 40
10/1 トライティオール 静脈血栓 30
09/2 トライディオール 心筋梗塞 30
09/2 アンジュ 脳梗塞 30
09/2 アンジュ 心筋梗塞 30
09/4 トライディオール 静脈血栓 40
09/4 トライディオール 静脈血栓 20
09/4 アンジュ 静脈血栓 40
09/4 アンジュ 静脈血栓 20
09/4 アンジュ 静脈血栓 40
09/4 アンジュ 脳梗塞 30
09/1 トリキュラー 脳梗塞 20
09/1 アンジュ 静脈洞血栓50
09/1 トリキュラー 静脈洞血栓 40
08/4 トリキュラー 静脈血栓 40
08/4 トリキュラー 脳梗塞 30
08/4 トライディオール 肺閉塞 40
08/4 トリキュラー 脳梗塞 50 死亡
肺閉塞
08/4 アンジュ 肺閉塞 40
08/3 トライディオール 肺閉塞 不明
08/3 トリキュラー 脳梗塞 40
08/3 アンジュ 肺閉塞 20 死亡
08/3 アンジュ 肺閉塞 40
08/3 アンジュ 静脈洞
血栓症
40
08/3 トリキュラー 脳梗塞 30
08/3 トリキュラー 肺閉塞 30
08/3 アンジュ 心筋梗塞 30
08/1 トリキュラー 血栓症 不明
08/1 トリキュラー 高血圧性
脳症
20
08/1 トリキュラー ラクナ梗塞 30
07/2 トリキュラー 血栓症 30
07/2 トリキュラー 脳血栓症 30
07/4 トリキュラー 静脈血栓 30
07/4 トリキュラー 肺高血圧症 40
07/1 トリキュラー 脳血栓症 30
07/1 トリキュラー 脳梗塞 30
07/1 トリキュラー ラクナ梗塞 40
06/2 アンジュ 頸動脈閉塞 30
トライディオール
06/2 アンジュ 脳静脈洞
血栓
50
トライディオール
06/2 トリキュラー 静脈血栓症 50
06/2 トリキュラー 肺閉塞 20
06/4 アンジュ 静脈血栓 10
06/4 トリキュラー 肺血栓 40
06/4 トリキュラー 肺血栓 30
06/3 トライディオール 脳梗塞 40
06/3 トリキュラー 静脈血栓 40
06/3 トライディオール 静脈血栓 30
06/3 アンジュ 静脈洞血栓 30
トライディオール
05/2 アンジュ 血栓 30
05/4 トリキュラー 肺閉塞 40
05/3 アンジュ 静脈血栓 30
05/3 アンジュ 肺血栓 30
05/1 アンジュ 肺塞栓 20
トライディオール
04/2 アンジュ 肺塞栓 30
04/4 トリキュラー 脳梗塞 40
04/4 リビアン 脳梗塞 30
04/4 アンジュ 肺閉塞30

(1)報告された副作用は氷山の一角

上の表でトリキュラーとアンジュの件数を数えてみると、
トリキュラー41件、アンジュ43件となります。
トリキュラーのシェアは24%程度でシェア1位です。
アンジュのシェアはトリキュラーのちょうど半分で12%程度です。
トリキュラーとアンジュは同一成分別ブランドのピルですから、
副作用の出現率に差は出ないはずです。
両ブランドの副作用が同じように報告されたならば、
トリキュラーの副作用報告はアンジュの2倍となるはずなのに、
実際はアンジュとほぼ同じです(注1)。

これはトリキュラーに副作用の報告漏れが多く、
実際は報告の少なくとも2倍以上の副作用が生じていることを示唆しています。
アンジュにも報告漏れがあるはずで(注2)、
現在明らかになっている副作用は氷山の一角と考えられます。

(注1)トリキュラーで実際に発生している副作用が各年度でアンジュの2倍とすると、
トリキュラーの実際の副作用発生件数は報告数の3倍以上になる。
(注2)アンジュの売上げは増加傾向にあるが、副作用報告件数は必ずしも増加傾向を示していない。


(2)喫煙とのリンクが薄い静脈血栓が大半

次に報告された副作用の症例を見て見ましょう。
青く色づけしているのが静脈血栓です。
脳梗塞など動脈疾患の2倍以上、約7割が静脈血栓であることがわかります。
静脈血栓は喫煙とほとんどリンクしません。
喫煙で静脈血栓リスクが多少高くなるという報告もありますが、
静脈血栓と喫煙の関係はそれほど強くありません。
日本のピルユーザーで静脈血栓を発症した女性を調べても、
喫煙者はわずかとなるはずです。
まともな医師なら、喫煙で静脈血栓のリスクが高くなるなど強調しません。
喫煙で静脈血栓のリスクが高くなると言い張っているのは、
ほとんど産婦人科医だけです。
なぜ産婦人科医だけが喫煙と静脈血栓のリスクを結びつけるのでしょう。
喫煙リスクを強調する産婦人科医が加齢によるリスクを指摘しているか見てみるとよいでしょう。
喫煙よりはるかに大きなリスクである加齢について口をつぐんでいるのがわかるでしょう。

(3)副作用は30歳以上に集中--ライフデザインドラッグ路線による人為薬害

表の年齢を見て下さい。
40歳以上が44例、30歳代が35例です。
80%以上が30歳以上の女性です。
年齢の高い女性に対してピルは慎重投与することになっています。
慎重に投与するどころか安易に処方した結果が、
副作用被害の山となっているのです。
ピルについての考えを根本的に変えなければ、
ピルは日本の女性の支持を失うでしょう。

(4)現実から目をそらさないで

心ある産婦人科医は現実を真摯に受け止め始めています。
ピルの副作用被害をなくすための10の提言 を支持し、
あるいは関心を持つ産婦人科医が現れ始めています。

カルトNPOに共感し、お花畑思考に浸っていてよいときではありません。

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海外での治療目的ピル利用
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2014年2月21日金曜日

ピルの副作用被害をなくすための10の提言

提言の背景


2004年に始まるライフデザインドラッグとしてのピル政策の下、
産婦人科医による安易なピルの処方が横行しています。
その結果、重篤な副作用が続発しています。
40歳代のヤーズユーザーについて試算すると、
1年間に血栓症を発症する確率は10万人当たり162人となっています。
ヤーズだけでなく他のピルについても事情は似ています。
このような事実が明るみに出る日が来るでしょう。
約600人中1人に血栓症の副作用が出るような薬が、
使用され続けることはあり得ません。
ライフデザインドラッグ政策は日本をピル不毛の国にしてしまいます。
日本のピルが滅亡してしまうのを避けるためには、
ピルを本来の安全な薬に戻していく必要があります。
ピルが安全な薬であることを示すためには、
ピルによる血栓症発現率・死亡率を極限まで低下させることが重要と考えます。
ピルユーザー数が現在と同じなら、
発症率・死亡率を現在の1/40に抑えることは可能です。

※上記記述中に数値の誤りがありましたので訂正しました(2014.3.1)
参照 ピルによる血栓症発現率の現状を推測する


1.35歳以上の女性についてはミニピル(黄体ホルモン単味剤)を第一選択肢とする


35歳を超えると血栓症発症率が加速度的に上昇します。
混合ピルの服用経験のない30歳以上の女性に混合ピルを安易に処方するなど、信じられない安易な処方が横行しています。
まずこの点を是正します。
①35歳以上の女性に対する混合ピルの新規処方を停止する
黄体ホルモン単味剤(ミニピルなど)は、血栓症リスクにリンクしません。
ミレーナ・ティナゲスト・ノアルテンを第一選択肢とします。
②35歳以上で現在混合ピルを服用中の女性については、黄体ホルモン単味剤への切り換えを検討します。
【解説】
ノアルテン錠(5mg)は諸外国においては避妊薬としても使用されている黄体ホルモン単味剤(ミニピル)であり、避妊薬として、あるいは避妊効果を期待できる治療薬として利用されています。
日本でノアルテンの薬価はルナベル・ヤーズの1/7であり、
治療目的ユーザーの負担軽減にも役立ちます。
避妊目的で利用する場合は自由診療になりますが、
負担が増えることはないでしょう。
ノアルテンを黄体ホルモン単味剤(ミニピル)として服用する場合の服用法は、
「ピルとのつきあい方」が概略を書いていますが、
さらに詳しい情報提供を考えています。


2.初めて服用するユーザーはトリキュラー・アンジュ・ラベルフィーユを第一選択肢とする


血栓症は服用初期数ヶ月にもっともリスクが高くなります。
この時期の血栓症発現率を抑制するのに効果的な製剤は、低用量(超低用量でない)・第2世代・1相性ピルです(イギリスのガイドラインはずっとこの指定を行っている)。
日本には、低用量・第2世代・1相性ピルはありません。
この条件に最も近いのは、トリキュラー・アンジュ・ラベルフィーユなので、これを第一選択肢とします。

3.デイワンスタートを徹底する


ピルユーザーの血栓症副作用が服用初期に多くなる理由の一つは、内因性エストロゲンの量と関係すると考えられています。
卵胞が成長を始めエストロゲンが分泌されている状態でピルの服用を開始すると、ピルのエストロゲンが付加されて高エストロゲン状態になります。
月経初日に服用を始めることで、内因性エストロゲンを抑制できます。
【解説】イギリスのガイドラインがピルを初めて服用する女性に超低用量ピルを処方しないとしているのも、同じ理由です。
「ピルとのつきあい方」初編はトリキュラー等について、月経初日の服用開始を推奨しました。
逆にクイックスタートはメリットがほとんどない上に、血栓症リスクを高めるおそれがあります。
月経初日の服用開始を徹底すべきです。
参照 クイックスタートの流行に思う

4.処方前の自己免疫検査


年齢が若いにもかかわらず服用開始後の早い時期に血栓症を発症する女性の中には、抗リン脂質抗体を持つ女性が含まれている可能性があります。
添付文書は「抗リン脂質抗体症候群の患者」を絶対禁忌に指定しているのですが、何の検査もなされていないのが実情です。
少なくとも、初めてピルを処方する際には抗リン脂質抗体の検査を行うようにします。
参照 緊急提言/ピルユーザーは抗リン脂質抗体検査を受けよう

5.1シート目のDダイマー検査


血栓が疑われる症状がないのに定期検査毎にDダイマー検査を行うのは、ほとんど意味がありません。
Dダイマー検査が意味を持つのは、1シート目服用中の検査です。
ピルの服用を開始すると、しばしばDダイマー値が上昇します。
(前向き疫学調査では後ろ向き調査と較べて「血栓症発現」率は10倍にもなる)
自覚症状のない段階で血栓症リスクを把握するには、1シート目服用中のDダイマー検査が有効です。

6.中断再開繰り返し服用を止める


ピルは服用初期に血栓症リスクが高くなります。
これはピルを初めて服用するときだけでなく、
ピルの服用を中断し再開する際にも同じく血栓症リスクは高くなります。
日本では、中断再開を繰り返すユーザーが多数います。
ピルが避妊薬でないとき、継続的服用が難しいのです。
中断再開を繰り返すユーザーには、
ミニピルを第一選択肢とします。
中断再開繰り返しユーザーが多いのは、
ピルの価格も関係しています。
イギリスではピル1シートの値段は缶ジュースほどです。
将来的にはピルの値段を下げていくことも課題です。
参照 「ピルの値段が高ければ高いほど血栓症発現率が高くなる」ってホント?

7.飲み忘れ対応を改訂する


避妊ピルについて日本の添付文書や服用者向け情報提供資料(パンフレット)は、2日飲み忘れたら服用を中止するよう求めています。
この服用法は妊娠リスクを低減する効果が全くありません。
それだけでなく、結果的に中断再開を繰り返すことになりますので、
血栓症リスクを上げてしまいます。
血栓症リスクを高めないという点で、ルナベル・ヤーズの飲み忘れ対応の方が妥当です。
最悪の飲み忘れ対応は、即時改訂する必要があります。
参照 産婦人科医の犯罪的怠慢

8.血栓症等の前兆症状を周知する


血栓症は前兆症状、初期症状で即座の対応すれば、大事に至ることは稀です。
ピルユーザーの血栓症の多くを占める深部静脈血栓症は、
前兆症状で服用を中止すれば閉塞を起こすことなく解消します。
後遺症もなく、まして死亡することもなく、事なきを得ることが出来るのです。
ヤーズに採用された服用者携帯カードを全てのピルに拡大するなど、
ユーザーに血栓症等の前兆症状を周知する必要があります。
参照 ピルユーザーのための血栓症情報
          (アンケート)ピルユーザーに血栓症の初期症状情報は知らせされているか?
        血栓症初期症状を説明している医師は21%

9.血栓症等の前兆症状で機敏な受診行動を促進する


血栓症等の前兆症状を知っていても、必ずしも機敏な受診行動が取れるわけではありません。
機敏な受診行動の阻害要因を取り除いていく必要があります。
同時に自立的ピルユーザーを育てていくことが課題です。
参照 ピルユーザーのための血栓症情報後半部分

10.客観的なピル情報


ピルは安全な薬であるとともに、ピルは危険な薬でもあります。
扱い方一つで安全な薬にも危険な薬にもなります。
15年前から、「ピルとのつきあい方」にはピルを安全な薬にする情報を詰め込んできました。
上の9項目は今思いついたことではありません。
ほとんどのピルユーザーが「ピルとのつきあい方」を読んで下さっていた時代(2004年以前)、
日本の血栓症発現率は問題にならないレベルでした。
2004年からライフデザインドラッグ路線が取られ、
ピルを安全な薬にする「ピルとのつきあい方」の情報は疎んじられるようになりました。
ライフデザインドラッグ路線下の日本で、世界のピル史上最悪の副作用被害が生じているのはある意味当然のことです。
信頼できる情報は製薬メーカーの情報といいながら、
「ピルとのつきあい方」の情報を信頼できないと排除してきたNPOがあります。
「ピルとのつきあい方」と件のNPOでは上記9項目に対する考え方がまるで正反対です。
製薬メーカーの受け売り情報よりも、ユーザーの安全を守る情報が重要です。

発症率・死亡率を現在の1/40に抑えることは可能です。
現在の副作用多発事態を放置すれば日本のピルは滅亡するでしょう。
それを避けるためには副作用被害を最小限に押さえ込むしかありません。







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2014年2月17日月曜日

ピルユーザーのための血栓症情報

ピルユーザーの重篤な副作用は血栓症です。
血栓症の前兆について理解を深めて頂くために、
簡単な解説をしておきます。

ピルユーザーが緊急に受信すべき症状A-C-H-E-Sは以下の通りです。
A:abdominal pain(severe) 激しい腹痛。
C:chest pain(severe)息を吸う時により痛い鋭い胸の痛み。息切れ。吐血。
H:headache(severe)普段より激しい頭痛・片頭痛。失神・卒倒。
E: eye problems/speech problems 突然の舌のもつれや視力障害(特に片目のかすみ)。
S: severe leg pain 足や手の脱力・無感覚または針で刺すような痛み。

(緊急に受診が必要な症状一覧参照)

1.静脈血栓と動脈血栓


血栓症とは血液中の血塊が血管を塞ぐ症状です。
血栓症は血栓の発生する場所によって、静脈血栓と動脈血栓に分けられます。
静脈血栓と動脈血栓の違いは血栓ができる場所の違いで、
閉塞が生じる血管の違いではありません。

2.静脈血栓と肺閉塞


静脈血栓は静脈にできる血栓は赤い色をしています。
静脈血栓ができ易い場所は主として2カ所です。
1か所は足の中心を通っている太い静脈です。
深いところにあるので深部静脈血栓症と言います。
足の静脈は血液が逆流しないように弁を持つ構造になっています。
そのため血液が滞留し血栓が生じやすいと考えられています。
静脈で出来た血液の塊がはがれ落ちると血流によって心臓に運ばれ、
心臓から肺に送られます。
肺の動脈はツリー状に枝分かれしています。
小さな血塊は肺動脈末端に近い動脈を塞ぎ、
大きな血栓は心臓に近い太い動脈を塞ぎます。
肺閉塞が生じたときの症状が以下です。

C:chest pain(severe)息を吸う時により痛い鋭い胸の痛み。息切れ。吐血。

見落としやすい症状は息切れです。
しばしば痛みなどの症状に先行して息切れの症状が現れます。
ところが、息切れの症状が肺閉塞の症状だと知らなければ見逃されてしまいがちです。
この点には特に注意するようにします。

 

3.深部静脈血栓と静脈炎


足の深部にある静脈で血栓ができると弁の働きが悪くなり、
血液が静脈に滞留します。
そのため腫れや浮腫が生じることがあります。
また、しばしば静脈炎を併発します。
そのために生じる症状が以下です。

S: severe leg pain 足や手の脱力・無感覚または針で刺すような痛み。

足に異変を感じたら必ず受診するようにします。
特に次のような症状の出方に注意します。
深部静脈血栓が両足同時に生じることは稀です(ないわけではないので誤解のないように)。
まず片足、特に左足に症状が現れることが多い傾向です。
これが筋肉痛などと違う点なので、症状が先に片足だけに現れた場合は特に注意するようにします。
鼓動にあわせて痛みが生じるのも、深部静脈血栓の特徴です(圧痛だけとか持続的痛みの場合もあるので誤解のないように)。

4.深部静脈血栓の予防


静脈血栓は血液の凝固能が高まることで生じます。
特種な素因を持っている場合を除き予め予測することは出来ませんし、
血塊は短い時間でも形成されます。
ロングフライト(エコノミークラス)症候群は静脈血栓ですが、
飛行機に乗っている短時間の間に血栓が形成されます。
静脈血栓に関して禁煙は予防効果がほとんどありません。
足の静脈の血流が滞らないようにすることは予防になります。
適度な運動や弾性ストッキングは静脈の血流が滞るのを防ぐ効果があります。

5.脳静脈洞血栓症


もう一つの静脈血栓は脳内にできます。
脳内の細い静脈から送られてきた静脈血が集まる場所が脳静脈洞です。
脳静脈洞血栓症は頻度の低い血栓症ですが、
ピルユーザーの血栓には比較的多いので注意が必要です。
脳静脈洞に血栓ができると多くの場合頭痛の症状が現れます。
自覚症状から脳静脈洞血栓症を疑うことは難しいので、
動脈血栓とあわせて頭痛の症状に気をつけるようにします。

H:headache(severe)普段より激しい頭痛・片頭痛。失神・卒倒。

なお、脳静脈洞血栓症の頭痛は昨日より今日と短期間に痛みがよりひどくなるのが特徴です。

 

6.網膜静脈閉塞症


目の網膜には細い動脈・静脈が絡み合って走っています。
その静脈が詰まるのが網膜静脈閉塞症です。
静脈が詰まれば血栓ができることもありますが、
網膜静脈閉塞症は運ばれてきた血塊が詰まるわけではないので、
血栓症とは言えません。
ここでは便宜上血栓症の一種として説明します。
網膜静脈閉塞症で網膜が閉塞する原因は動脈にあります。
交差する動脈が硬化し、その影響で静脈が塞がれてしまうのが網膜静脈閉塞症です。
高血圧や糖尿病があると、網膜静脈閉塞症のリスクは高くなります。
ピルユーザーには以下のように呼びかけられています。

E: eye problems/speech problems 突然の舌のもつれや視力障害(特に片目のかすみ)。

舌のもつれと視力障害を並べて書いていますが、
網膜静脈閉塞症に関して前者は関係ありません。
A-C-H-E-Sの頭文字に納めようとしたために同一項目になっているだけです。
網膜静脈閉塞症は偶然両目同時に起きることがないとは言えませんが、
普通は片目の症状として現れます。
網膜静脈閉塞症は血栓の病気ではありませんので受診するのは眼科になります。

7.動脈血栓とは


全身から心臓に戻ってきた血液は肺に送られます。
心臓に戻ってきた静脈血に血塊が含まれていると肺で梗塞を引き起こしますので、
肺から心臓に戻ってきた血液に血塊が含まれることはありません。
肺から心臓に戻ってきた血液は全身に送られます。
動脈血栓の多くは心臓に近い太い動脈で作られます。
動脈壁から剥離した血塊が細い動脈を塞ぐのが動脈血栓です。
動脈血栓は白い色をしています。
動脈血栓のリスクは、血管の状態と強く関係しています。
喫煙・肥満・高血圧・加齢は血管状態の不良と関係します。
動脈血栓についてはリスクの程度をあらかじめある程度評価できます。
動脈血栓閉塞は肺以外のあらゆる臓器で生じ得ます。

8.脳梗塞・(脳出血)


日本人では、動脈血塊が最も多く閉塞を起こすのは脳の血管です。
脳の血管が詰まると酸素が供給されませんからその部位の脳の活動に障害が生じ、
あるいは脳の血管から出血します(脳出血については下記13参照)。
脳梗塞には前兆がないのが普通です。
ただ、時に一過性の脳梗塞の症状が起きることがあります。
その一つが、舌のもつれや視力障害です。

E: eye problems/speech problems 突然の舌のもつれや視力障害(特に片目のかすみ)。

言葉が話しにくい状態になっても一時的で元に戻ることも少なくありません。
同様にも軽い半身のしびれや動作の違和感(麻痺)が一時的に現れることがあります。
血栓による視力障害の場合は突然片目が全く見えなくなります。
この症状は眼科の領域ではありませんので循環器科を受診するようにします。
これらの症状の多くは1日とかの比較的短時間で消失します。
しかし、上記の症状が元に戻ったからと言って、放置してはいけません。
脳梗塞の前触れであることがあるからです。
※上記の症状を一過性脳虚血発作(TIA)と言います。

実際に梗塞が起きてしまった場合、半身が麻痺したりしびれたり、
あるいは意識を失ったりします。
その場合でも、血栓溶解療法で後遺症を避けることが出来ます。
血栓溶解療法が可能かどうかは時間が決め手です。
2時間以内に病院に運ばれることが大事との情報を家族と共有しておきましょう。

9.心筋梗塞


心臓は働き者の筋肉でできた臓器です。
常に新鮮な血液を送り続けるために動き続けなくてはなりません。
心臓の筋肉に血液を供給している動脈が詰まるのが心筋梗塞です。
心筋梗塞の前兆はありません。
しかし、多くの場合、突然に重篤な梗塞になるのではなく軽い梗塞から始まります。
心臓近辺の締め付けられるような痛みは要注意です。
息苦しさを感じることもあります。
これも要注意です。
軽い梗塞の症状を見逃さないようにしましょう。

H:headache(severe)普段より激しい頭痛・片頭痛。失神・卒倒

頭痛は心筋梗塞の症状ではありませんが、重篤な心筋梗塞では失神・卒倒が見られます。

 

10.内臓臓器の動脈閉塞症


胃・肝臓・腸・腎臓などへ血液を供給する動脈が閉塞すると、その臓器の機能が低下します。
それぞれの臓器によって症状の出方は異なりますが、
激しい痛みに気をつけるようにします。

A:abdominal pain(severe) 激しい腹痛。

胃や腸の動脈が血栓で塞がれた場合、周期的に痛みが緩んだりひどくなったりを繰り返しながら、日ごとに痛みが強くなるのが特徴です。
ただ痛みだけで自己判断するのは無理なので、激しい腹痛のある場合には必ず受診するようにします。

12.下肢動脈血栓症


足の動脈が血栓で塞がれると、それより下の部位に血液が供給されません。
静脈血栓症と較べると、足の痛み・蒼白化・運動麻痺・知覚の消失などが突然現れるのが特徴です。

S: severe leg pain 足や手の脱力・無感覚または針で刺すような痛み。

両足同時に症状が現れることはまずありません。
下肢動脈血栓症も緊急に対応する必要があります。

13.脳出血


血栓による閉塞に伴い脳の血管が破れて出血することもありますが、
血栓や閉塞なしに脳の血管から出血することもあります。
出血には小さな出血もあれば大きな出血もあります。
出血の程度や部位で、頭痛やめまい、半身の麻痺、意識障害などが生じます。

H:headache(severe)普段より激しい頭痛・片頭痛。失神・卒倒

脳出血は緊急の治療を必要としますから、早期の受診が重要です。

なお、普段から片頭痛がある場合、脳出血のリスクは高くなります。
特に前兆を伴う片頭痛ではリスクが高いのでピルの服用は出来ません(絶対禁忌)。
付けたし①:35歳以上で前兆を伴わない片頭痛を持つ場合、日本では相対禁忌となっています。しかし、35歳以上で前兆を伴わない片頭痛の女性を絶対禁忌とするのが世界の医学常識です。
付けたし②:局在性神経徴候を伴う頭痛のある女性は髄膜腫のリスクが高いので、年齢に関わらず絶対禁忌とするのが世界の医学常識です。この点について、日本の添付文書は何ら触れていません。
参照 頭痛とピル

14..動脈血栓の前ぶれ


静脈血栓と較べ、動脈血栓は閉塞の前ぶれを事前に察知するのが困難です。
しかし、動脈血栓の多くは静脈血栓と異なり、短時間で形成される物ではなく、
長年の血管状態の悪化が血栓の形成と深い関係を持っています。
高血圧、肥満、喫煙は血管状態を悪くし動脈血栓が生じやすくします。

15.自分の身体は自分で守るということ


ピルを服用すると【血栓病】という病気に罹るわけではありません。
血栓が生じやすい状態になるだけのことです。
ピルの服用を中止すれば、血栓が生じやすい状態は基本的に解消します。
基本的にと書いたのは、血栓ができた状態を放置すると慢性型に移行することがあるからです。
閉塞が生じた場合でも、早期に対応すれば後遺症が残るリスクは小さくなります。
血栓症については早期対応が決定的に重要なのです。

血栓症に対する早期対応の重要性が医師とユーザーで共有されるためにはどうすればよいのでしょうか。
まず、血栓症の初期症状をユーザーに徹底的に伝えていく必要があります。
「ピルとのつきあい方」は15年前の開設当初から、
血栓症の初期症状をしっかり伝えてきました。
現在、血栓症の初期症状をユーザーに伝える基本中の基本がやっと徹底し始めた段階です。
しかし、ユーザーに血栓症の初期症状を伝えるだけでは、
まだ対応は全然不十分なのです。

血栓症の初期症状を知識として知っていることと、
受診行動が取れることはイコールではありません。
初期症状を知っていても受診行動を取らないと考えた方がよいのです。
なぜ受診行動が取られないのでしょうか?
さまざまな暗示が受診行動を鈍らせるのです。
受診行動を鈍らせるいかなる暗示も行ってはならないというのが、
欧米の医療者の常識です。
日本の医療では常識外の暗示が横行しています。
例を挙げましょう。
①「血栓症なんてめったにない」
めったにないと言われると「まさか自分には」という心理が働くものです。
そうすると、気のせいかもしれない、筋肉痛かもしれない、と都合よく思ってしまいます。
「1万人に1人しかいない」と強調してはいけないのです。
「1万人に1人は可能性がある」と客観的に伝えるのが誠実な医療者です。
②特定のリスクを強調する
タバコや肥満や高血圧は動脈血栓のリスクを高めます。
だから、喫煙ユーザーにタバコのリスクを話すことは必要です。
しかし、喫煙は静脈血栓のリスクとほぼ無関係ですし、
非喫煙でもピルユーザーの静脈血栓リスク・動脈血栓リスクは高まります。
タバコや肥満や高血圧など特定のリスクが強調されると、
タバコや肥満や高血圧がなければ血栓症にはなりにくいというメッセージを発してしまいます。
ピル普及をうたうNPOのネットテレビで出演女医が、
血栓症で死亡したユーザーは「タバコを吸っていたんじゃないかな」と妄想を語っていました。
最悪です。
怒りがこみ上げてきました。
まさにそれは非喫煙ユーザーに初期症状が出ても受診行動を鈍らせる暗示になるからです。
③定期的な血液検査のオマジナイ
血栓症を防ぐために定期的に血液検査が重要と強調する医師がいます。
おそらくDダイマー検査でしょう。
Dダイマー検査は検査時点で血栓があるかないかの検査に過ぎません。
飛行機に乗る前にDダイマー検査をしても飛行中のエコノミー症候群発症を防げるわけではありません。
全く無意味とは言いませんが、それほど意味があるとも思えません。
むしろ、安心のオマジナイになってしまう害の方が大きいでしょう。
検査翌日に症状が出ることもあります。
前日のDダイマー検査が陰性なら、受診行動をためらわせることになるでしょう。
以上3つの例を挙げましたが、いずれも安心理論の暗示です。
その暗示はピルユーザーを守るのに全く役に立たないだけでなく、
大いに害になる物です。

受診行動をためらわせる暗示をかけないのは当然として、
それだけではまだ不十分です。
血栓症の初期症状を教え、気になる症状があれば必ず受診するようにと徹底すれば、
受診するようになるかもしれません。
しかし、受診するのは大体切羽詰まってからです。
血栓症への対応では早期の受診が決定的に重要です。
早期の受診が出来るかどうかは、服用者とピルの関わり方に関係します。
ピルについて学びピルを自ら選択したユーザーでは、
早期の受診が出来ます。
彼女たちは自分の身体を守るためにピルを選択しています。
だから自分の身体を守る早期の受診が出来るのです。

ピルを安全な薬にするのはピルユーザー自身


ピルは本来、危険な薬でも怖い薬でもありません。
リスクの高い女性への処方をチェックし、
万一血栓症を発症しても重篤化を防げば、
安全性の高い薬です。
そのためには、医療者とユーザーに求められる条件があるのです。
医療者の役割はまず、リスクの高い女性をチェックすることです。
加齢は血栓症の最大のリスク要因です。
ライフデザインドラッグ路線の下で、
年齢の高い女性にピルが安易に処方されている現実があります。
日本のピルユーザーの過半は30歳以上の女性という異常な現実があります。
日本の医療はチェック機能を喪失していると言われても仕方ないでしょう。
血栓症の副作用が重篤化するのを防ぐのも医療の役割です。
しかし、血栓症の初期症状を知らせる基本の基本さえおろそかにされてきた現実があります。
まして早期受診は決定的に重要なことですが、
日本の医療者が心配りしているとはとても思えません。
医療者が薬屋の回し者のような役回りを演じることが問題なのです。


ピルによって引き起こされる重大な副作用は血栓症です。
ただ早期に対応すれば重篤化のリスクを格段に低減することが出来ます。
ピルが安全性の高い薬であるためには、
早期の対応を取ることが出来るユーザーの存在が条件となります。
欧米でピルは女性が選択する薬です。
ピルについての知識があるから選択することができます。
ピルはお医者様任せの薬ではないのです。
「ピルとのつきあい方」は自立的ピルユーザーとなることを提唱してきました。
ピルという薬にとってそれは当たり前のことなのです。
「ピルとのつきあい方」が提唱してきた自立的ピルユーザーに
違和感を感じる医療関係者がいます。
ピルは医療が管理しようとすればうまくいかない薬です。
ピルはユーザーが自己管理できてより安全な薬になります。
医療は自己管理するユーザーをサポートする役目です。
医療関係者がこのことを理解できるのに10年くらいかかるかもしれません。
医療関係者が変わるのを待っていては、
現在のユーザーは救われないと私は考えています。
ピルを安全な薬にするのは、ピルユーザー自身です。


ピルユーザーが緊急に受信すべき症状A-C-H-E-Sは以下の通りです。
A:abdominal pain(severe) 激しい腹痛。
C:chest pain(severe)息を吸う時により痛い鋭い胸の痛み。息切れ。吐血。
H:headache(severe)普段より激しい頭痛・片頭痛。失神・卒倒。
E: eye problems/speech problems 突然の舌のもつれや視力障害(特に片目のかすみ)。
S: severe leg pain 足や手の脱力・無感覚または針で刺すような痛み。

(緊急に受診が必要な症状一覧参照)


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海外での治療目的ピル利用
ルナベル・ヤーズの錬金術
ヤーズの血栓症死亡例について思う事
「ピルは血栓症予防薬」という意外な観点
(アンケート)ピルユーザーに血栓症の初期症状情報は知らせされているか?
血栓症初期症状を説明している医師は21%