2014年4月8日火曜日

ピルの副作用被害とオーキッドクラブの責任

オーキッドクラブの設立


「ピルや避妊に関する総合サイト」と銘打つオーキッドクラブのサイトが現れるのは、
2000年秋頃です。
2000年11月9日の同サイト保存ページはこちらです。
「オーキッドクラブって何?」には、
「産婦人科医をはじめとするウィメンズヘルスケアの専門家の集まりです」との簡単な説明があります。
2004年4月29日までは、同サイトにオーキッドクラブの詳しい説明はありませんでした。
未確認情報によると、オーキットクラブは2000年9月27日の発足で、
間壁さよ子医師(発起人代表)・松峯寿美医師・対馬ルリ子医師・早乙女智子医師が発起人でした(参照ページ)。
当時、対馬医師は性と健康を考える女性専門家の会副会長、松峯医師と早乙女医師は同会運営委員でした。
オーキットクラブと性と健康を考える女性専門家の会は目的が類似しているだけでなく、
メンバー的にも重なっていました。
2004年6月12日になると、「設立のごあいさつ」以下の紹介ページが登場します。(保存ページ)
「オーキッドクラブのしごと」によると、「オーキッドクラブは非営利の団体(N.P.O)です」と記され、
理事長・副理事長・理事・顧問など理事会メンバーが紹介されています。(保存ページ)


突然登場した間壁さよ子発起人代表=理事長


4名の発起人の中で間壁さよ子医師を除く3名は、
それ以前から避妊やピルについて発言してきた医師です。
一方、発起人代表の間壁医師は、避妊やピルについての活動実績はほとんどありませんでした。
間壁さよ子著『避妊のすべてがわかる本』が刊行されたのは、2002年のことでした。
当時、日本の産婦人科医は誰でもピルの処方経験が乏しかったわけですが、
間壁医師もその1人だったでしょう。
オンライン外来の回答にも初々しさがにじんでいます。
たとえば、「膝から下がじんじんする」との質問に、
「このような副作用は聞いたことがありません。・・・努力されたらいかがでしょう」と回答しています(保存ページ)。
「ピルが飲めるように努力」せよ、には唸ってしまいます。
間壁医師が発起人代表となり、理事長となっていく経緯は謎であるように思われます。



ターギス株式会社


オーキッドクラブの事務局はターギス株式会社内に置かれました。
ターギス株式会社は、「医薬品、ヘルスケア用品のマーケティングやプロモーションの企画」等を行うグローバルな広告代理店です(参照)。
間壁発起人代表=理事長とターギス株式会社の関係は、次の2つの内のどちらかでしょう。
一つは、間壁医師の志に感銘を受け、
ターギス株式会社が間壁医師のために便宜を図ったという関係です。
オーキッドクラブのホームページは凝った作りで、
制作費だけでかなりの費用がかかるでしょう。
それもターギス株式会社が提供したとすると、
ターギス株式会社は希有な会社ということになります。
しかし、外資系企業のターギス株式会社がそのような便宜を図った可能性はほぼ皆無です。
もしそのようなことをすれば、ターギス株式会社の役員は背任罪で訴えられてしまいます。
普通に考えれば、間壁医師とターギス株式会社の関係はその逆です。
ターギス株式会社のプロモーション企画に間壁医師が協力したと考える方が合理的です。
外資系広告企業であるターギス株式会社は、英語でコミュニケーションの取れる間壁医師に話を持ちかけたのでしょう(間壁医師は在外経験のある医師)。
このように考えると、ピルと接点のなかった間壁医師が突然オーキットクラブのトップになった経緯が理解できます。

オーキッドクラブと製薬会社の不透明な関係


ターギス株式会社は、「医薬品、ヘルスケア用品のマーケティングやプロモーションの企画」等を行う広告代理店です。
ターギス株式会社の顧客は、主として製薬会社などの企業です。
製薬会社は広告代理店であるターギス株式会社に広告費を支払い、
ターギス株式会社はその資金で企業のためにプロモーション活動を行います。
ピルについては諸般の事情で資金提供製薬会社が伏せられた形のプロモーションがしばしば行われました。
その典型がオーキッドクラブにほかなりません。
製薬企業名が伏せられたプロモーションの場合、
広告代理店は複数の製薬企業から資金提供を受けることがあるようです。
製薬企業も広告代理店も資金提供元を秘密にするからです。
オーキッドクラブに資金提供していた会社の一つは、
あすか製薬(アンジュの発売会社)でした。
あすか製薬の『環境・社会報告書2009』には、
オーキットクラブが以下のように紹介されています。

「オーキッドクラブ」の支援
低用量ピルの普及と女性の健康を推進するために設立された団体です。ホームページ・メールマガジン・セミナー・講演会・アンケート調査・学会発表を通じた情報提供で、女性の健康支援に役立てられています。


http://www.aska-pharma.co.jp/pdf/company/csr_report09_all.pdf
 

また、あすか製薬の『環境・社会報告書2010』には、以下のように紹介されています。

オーキッドクラブは、「女性が充実した人生を送るためのサポートがしたい」と考える産婦人科医の集まりです。
OCに関するアンケート調査の実施と学会での発表、メンバードクターを対象とした資材作成などを通じて、医療関係者にOCの理解を深めてもらう活動を行っています。



http://www.aska-pharma.co.jp/pdf/company/csr_report10_all.pdf
 

あすか製薬の文書では、オーキッドクラブはあくまで産婦人科医有志の団体であり、
あすか製薬はその団体を支援する善意の第三者として説明されています。
なお、同上冊子では、オーキッドクラブの「理事長」真壁さよ子医師は、あすか製薬を「守護神」と褒めちぎっています。



白々しい茶番ではないでしょうか?


ユーザーを欺く「有志医師の集まり」というフィクション


オーキッドクラブの設立から2年後、オーキッドクラブ事務局編『なやめるからだ オンライン外来730日のカルテ』が刊行されます。
同書には以下の説明が付されていました。


オーキッドクラブ事務局編『なやめるからだ オンライン外来730日のカルテ』
「オーキッドクラブは、多様な現代に生きる女性の健やかでいきいきした生活をサポートするウィミンズヘルスケアの専門家の集まりです」

 

副会長ほかが設立に関与した性と健康を考える女性専門家の会は、いち早くオーキッドクラブを紹介しました。
その紹介文は以下の通りでした。

オーキッドクラブ (産婦人科医によるバーチャル診療室、回答者に当会会員が居ります。)

広告業界出身者の始めた低用量ピル普及推進委員会は、オーキッドクラブについて以下のように紹介しています。

「オーキッドクラブ」というのは女性の健康をサポートする専門家の集まりで、一般の人でも参加できる「オーキッド・エル」という部門もあります。
http://mixi-pill.com/archive.html
(保存ページ)


「日本家族計画協会やオーキッドクラブ、NAHWといった女性医療に特化した団体」http://www.mixi-pill.com/siryou.html(保存ページ)
 

オーキッドクラブについては、自他共に「産婦人科有志の団体」との紹介がなされています。
オーキッドクラブは自らについて、「オーキッドクラブは非営利の団体(N.P.O)です」と明記してきました。
仮にオーキッドクラブがターギス株式会社によるプロモーション活動だとすると、
オーキッドクラブは非営利の団体(NPO)などということは到底できません。
団体の存在自体がフィクションで、それをカモフラージュするための小道具が自称NPOだったり理事会ではなかったかと思われます。
そもそも、オーキットクラブのサイトでは、理事長も理事も「○○先生」として登場します。
理事長や理事は偉い方々なので自分のことを「先生」付けして名乗るのでしょうか。
違うでしょう。
ターギス株式会社の社員が運営しているので、
「先生」の尊称が付けられているのです。
端から見ても、オーキッドクラブが「有志医師の集まり」で非営利の団体(NPO)などとは思えません。
まして、メンバー的にも重なっていた性と健康を考える女性専門家の会の幹部は、
オーキッドクラブの実態を最もよく知ることのできる立場にありました。
オーキッドクラブの数億円に上る莫大な資金のおこぼれにあずかりながら、
知って知らぬ顔をしていたのではないでしょうか。
その資金も元をただせばユーザーが高いピル代として負担したものです。
ユーザーに高いピル代を負担させながら、
製薬会社・広告会社・一部の産婦人科医がその甘い汁を吸う構図は道徳的ではありません。
断っておきますが、私は医師が製薬会社の広告プロモーションに関与することを否定しているのではありません。
また、企業の広告宣伝活動を否定しているわけでもありません。
企業は広告宣伝活動を行うことは当然だし、
知見や労力を提供する医師がそれ相応の報酬を得ることも当然と考えます。
問題は、ユーザーを欺く広告手法は医師の倫理観を麻痺させ、
企業の意に迎合する「専門家」を生み出してしまうことです。


更年期女性にピル服用を強力に推奨


若いときからピルを服用している女性でも、35歳を過ぎれば血栓症リスクが高くなります。
40歳を過ぎた女性には相対禁忌とされているのがピルです。
年齢の高い女性に対して、リスクを伝えるのが医療者の本来の使命です。
ところが、リスクを伝えるどころか、メリットを強調し、
年齢の高い女性にピルを積極的に奨めてしまったのがオーキッドクラブです。
理事長のアドバイスをピックアップしてみました。

「ピルの基礎知識
ピルの副効用・・・中高年の女性では、更年期障害の症状が緩和されます。http://archive.is/sZkKd


服用前の不安>わたしも服用できますか?>避妊の必要がない時期もピルを服用したいです。40代なのですが・・・。
更年期症状が出てくる年齢層にとって、その有益性を体験したら手離せない薬でしょう。
・・・44歳ですから、もちろん副作用の少ない低用量ピルですよね。
http://archive.is/I0VQp

服用前の不安>わたしも服用できますか?>年齢と子宮筋腫があることから、ピルの継続を迷っています。
41歳という年齢を考えると、更年期障害もそろそろ出てくる頃ですね。
 低用量ピルをのむことでホルモンを安定させ、更年期を元気にいきいきと、

若さを保ちながら過ごすことができると思います。
 結局一石四鳥ですね。

http://archive.is/7O1T8

服用前の不安>わたしも服用できますか?>ピルを飲もうと思いますが、40歳なので心配です。
ぜひ低用量ピルを試しに飲んでみてください。
 副作用はほとんどの人にありません。
わずかな吐き気や少量の出血などが主なものです。
 妊娠するかもしれないと思うストレスがなくなれば、

不定愁訴のような症状もなくなる可能性があります。
http://archive.is/ErUL8



服用前の不安>わたしも服用できますか?>更年期の時期でもピルを飲みつづけてよいものか不安です。
喫煙者、乳癌既往がある方には使用できませんが、
適応を守れば40代の方での使用は問題ありません。
 更年期まではまだ少し時間がありそうですが、

更年期障害や更年期以降に発症しやすい疾患(骨粗鬆症、高脂血症など)の予防も含め、
女性ホルモンの補充をかねたピル服用、お勧めです。
http://archive.is/84L12

服用中>不正出血>ピルを飲み始めて10日目。まだ出血しています。
低用量ピルのバランスのとれたホルモン投与で、貴女の更年期障害も軽減すると思います。
 低用量ピルは更年期の治療としても使われています。
http://archive.is/PUQlU

 


更年期女性へのピル投与は問題ないとミスリード


年齢の高い女性にピルの服用を奨めるなど、医学常識を逸脱したトンデモです。
それを確信犯的に行ってきたのがオーキッドクラブです。
オーキッドクラブは一般女性に対する「啓発」と並んで、
医師に対する情報提供を行ってきました。
「OCに関するアンケート調査の実施と学会での発表、メンバードクターを対象とした資材作成などを通じて、医療関係者にOCの理解を深めてもらう活動を行っています。」
にわか「ピル推進派」の医師は、そんな大それた事は考えないでしょう。
オーキッドクラブが製薬会社のダミーだからそのような発想が出てくるのでしょう。
オーキッドクラブによる医師への情報提供の例を挙げてみます。
2013年5月、日本産科婦人科学会学術講演会でオーキッドクラブは、医師会員へのアンケート調査の結果を発表しました。

その時のパネルが以下です。

 
 「40歳以上にOCを処方する場合、40歳未満と比べてトラブルの発生頻度は異なりますか」
という設問に対する医師の回答を集計しています。
大部分の医師が「変わらない」と答え、「多い」と「少ない」が少数ずつあります。
40歳以上の女性にピルを処方しても特に問題ない、
と印象づけるかのような結果となっています。
オーキッドクラブの狙いはそこにあったのでしょう。
しかし、それはとんでもないことです。
吐き気や不正出血などのトラブルは、年齢による発生頻度に差がありません。
トラブルの頻度を聞くことは無意味です。
無意味な設問なので、回答した医師の中にはリスクの意味で回答する医師が出てきます。
具体例として血栓と答える医師も例外的に出てきます。
それをクローズアップすると、
リスクについての回答結果のように見えてしまうのです。
いかにも広告会社らしい情報操作が行われています。
それよりも、そもそも医師の意識を調査するアンケート自体が無意味です。
40歳以上が相対禁忌となっているのは、トラブルが多いからではありません。
40歳以上の女性に対してピルが相対禁忌となっているのは、
血栓症などのリスクが高いからです。
リスクが高いか低いかが問題なのであり、
医師の意識がどうかは関係ない話です。
事実を問題にせず意識だけを調べる調査はインチキではないかと思います。


性と健康を考える女性専門家の会会員の追従


オーキッドクラブに関して非常に残念なことがあります。
オーキットクラブは製薬会社のダミーサイトであり、
製薬会社に迎合する言説を流していると思えば、
その情報が鵜呑みにされることもないでしょう。
しかし、事もあろうに性と健康を考える女性専門家の会の主要会員まで、
オーキッドクラブ的言説に染まってしまっているようなのです。




※喫煙により動脈血栓のリスクは高くなります。


性と健康を考える女性専門家の会も、きわめてまっとうな理念を掲げる団体であったことは、
ブログで紹介しました。
ところが、この両団体は軌を一にしながらライフデザインドラッグとしてのピル路線にのめり込んでいきました。
そして、ピル史上最悪の副作用問題が日本で生じる事になりました。
そのことに両団体は責任があるのではないか、
と考えてきました。
ピルの副作用問題が報道されるようになって半年が過ぎました。
この間、性と健康を考える女性専門家の会は完全沈黙を守ってきました。
今になってやっと、反応が出されました。

 その勉強会の内容は、以下のようです。


[講義1]低用量ピルと血栓症
バイエル薬品 学術部(演者未定)


[講義2]低用量ピルを安全に使用するために ~臨床における血栓症リスク対策の実際~ 
性と健康を考える女性専門家の会 副会長、四季レディースクリニック 院長   江夏 亜希子

 
 https://twitter.com/pwcsh/status/452262750501085185
 


バイエル薬品はヤーズやトリキュラーを販売する日本最大のピル販売会社です。
副作用問題を引き起こしている会社から講師を呼んで勉強会を開催することに違和感を感じない、
それが今の性と健康を考える女性専門家の会なのでしょうか。
 

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