@ruriko_pillton ヤーズの国内初の血栓症による死亡例について、rurikoさんの見解をお聞きしたいのですが…。突然にすみません。HPの死亡ゼロの記述が過去になり、ピルユーザーとしてどの部分に注目すべきなか迷っています。亡くなられた女性には、心から哀悼の意を捧げたいと思います。
— s@ppy (@july_sa_ppy) August 24, 2013
この件については残念に思うことがあります。
同時に、心配なこともあります。
この際、思うところを書き留めておくことにします。
8月7日、ヤーズ配合錠の発売元であるバイエル薬品は、
死亡例を公表するとともに注意喚起を呼びかけました(PDF 新しいウィンドウで開く)。
まず、この文書内容から見ていくことにします。
同文書では、「推定142,636婦人年に使用され、血栓閉塞症発現例が87例」と記されています。
この数値を単純に割り算すると、10万人に60人の発症となります。
私は、「(日本の)ピルユーザーの血栓症発症は10万人につき1.5人から2.5人程度」になるのではないかと推測しました(血栓症の頻度)。
10万人に60人の発症だと、私の推定値の約10倍という驚くべき数字です。
日本の妊娠期の発症が10万人につき20人程度なので、
その約3倍という数値も驚きです。
ピルの服用による血栓症リスクは妊娠による血栓症リスクより低い、
という常識を覆す数値になっているのです。
ヤーズが最大4倍程度血栓症を引き起こしやすいピルだとしても、
やはり高すぎる数値ではないかと感じます。
ヤーズユーザーのほとんどがピルを始めて服用するユーザーである点がバイアスとなっている可能性は排除できませんが、
ピルの処方実態が関係しているのではないかと疑っています。
私が気になっているピルの処方実態は、2点です。
第1点は、年齢です。
ピルユーザーの年齢分布についての調査を知らないので、
当ブログのアンケートで年齢分布を推測しています。
日本のピルユーザーは30歳代が最も多く、
30歳以上のユーザーが過半数を占めていると思われます。
欧米でピルユーザーのピークは20歳前後です。
欧米でピルを卒業する年齢の女性が、日本ではピルを始めているのです。
日本のピルユーザーが高年齢女性に偏るのにはいくつも理由があります。
日本では金銭的にも時間的にもゆとりのある女性でないと、
ピルを使用しにくい環境があります。
ピルは避妊薬としてではなく治療薬として宣伝されています。
ヤーズは治療薬そのもので避妊効能を持ちません。
ピルが治療薬として位置づけられると、
年齢が進んでもリスクより治療メリットの方が大きいと判断されるでしょう。
さらに、日本には避妊薬として認可されているミニピルがありません。
欧米で35歳を過ぎてピルを続けたい女性は、
ミニピルへの切り換えを検討します。
さらに日本では「ライフ・デザイン・ドラッグ」などの触れ込みで、
高年齢女性にピルが奨められたりしています。
更年期症状の改善にピルが処方される例さえあります。
第2点は、処方手順です。
1999年のガイドラインはあり得ない厳重な処方前検査を推奨しました。
2006年のガイドラインは一転して体重と血圧測定でよいとしました。
現在、体重と血圧測定でピルを処方されるケースが多くなっています。
その結果、
「血栓性静脈炎、肺血栓症、脳血管障害、冠動脈疾患にかかったことがありますか。」
というような基本的問診事項さえパスされているケースが増えています。
血栓症の既往などめったにないことではあるにしても、
そのチェックは決定的に重要なことです。
高年齢ユーザーの多い実態に合わせたスクリーニングのあり方が検討されてよいでしょう。
バイエルの文書では2つの症例が示されています。
死亡事例の脳静脈洞血栓症は、100万人に1人程度の珍しい症例なので、
診断に手間取ったのはやむを得なかったと考えます。
気になる点はただ1点です。
死亡した事例では、頭痛が起きて受診までに4日かかっています。
激しい頭痛であったと想像されますが、
頭痛が起きて5日間はヤーズの服用を続けています。
経過を見るとヤーズの服用中止は医師の指示ではなく、
自己判断であったと考えられます。
もう一つの肺閉塞症の事例では、
右下肢の異変から受診までに9日かかっています。
2つの事例は、症状が現れてから受診までに時間がかかりすぎている点で共通しています。
バイエル薬品の文書には「処方時にご留意いただきたい点」として、
「下記のような症状が認められた場合には、ただちに本剤の服用を中止し、すぐに医師に相談するよう、あらかじめ患者の皆様へご指導いただくことをお願いします」
と書かれています。
これは当然のことです。
しかし、この当然のことがこれまで徹底してきませんでした。
これからは徹底するのでしょうか?
是非とも徹底してほしいのですが、
徹底しないのではないかとの不安もあります。
体重測定と血圧検査でチェックすれば血栓症リスクなんて防げるし目じゃない、
と言ってきた医師は少なくありません。
調べる中でしばしば、「ピルは副作用は全くありません」と書いてあるサイトや書籍を見かけた。医療関係のコンテンツですらままある。これはダメ。まず医療倫理的に最低。『低容量ピルのベネフィットとリスク。ピル万能論に溺れるまえに。』 http://t.co/GsKDh25KTO
— ピルとのつきあい方(公式) (@ruriko_pillton) July 6, 2013
大手出版社が発行しレディースクリニックが監修したピルの入門書でも「副作用はまったくありません」などと書き散らしてあるアリサマだった。『低容量ピルのベネフィットとリスク。ピル万能論に溺れるまえに。[ピルと避妊とPMS]』 http://t.co/GsKDh25KTOピルが普及しないほんとうの原因から目をそらし、
— ピルとのつきあい方(公式) (@ruriko_pillton) July 6, 2013
副作用をおそれる女性の偏見が普及の阻害要因と考えるからです。
ピルには血栓症リスクを高めるという副作用があります。
それは隠すべき事ではなく、
むしろ徹底的に知らせるべき事なのだと思います。
徹底的に知らせ、ピルユーザーが機敏な対応を取れるようにすること。
「ピルとのつきあい方」は一貫して、ピルユーザーが望んでいるのはそのようなことだと考えてきました。
これまでのツイートの中から、関係するツイートを拾ってみました。
「ピルとのつきあい方」の副作用情報ページhttp://t.co/DxEkK14Lpy 重篤な副作用の対処を書いておくのは当然だと思う。でも、日本にはピルユーザーを守る姿勢のないサイトが多い。
— ピルとのつきあい方(公式) (@ruriko_pillton) July 6, 2013
当サイトの緊急に受診が必要な症状一覧は翻訳なのだが、症状の1つでも現れたら対応するように勧めている。日本の服用者向け資料には「いくつかの症状が同じような時期にあらわれる」との説明があり、緊急の対応を鈍らせる説明になっている。http://t.co/DxEkK14Lpy
— ピルとのつきあい方(公式) (@ruriko_pillton) July 6, 2013
今日のツイートのテーマは、副作用リスクを伝えないピル情報だった。低用量ピル普及推進委員会と同団体推薦の「信頼できるピル情報」サイト、OC情報センター・ピルわかるページ・OC for me!の4サイトを見てみた。緊急症状の記述は揃いも揃ってパスされていた。
— ピルとのつきあい方(公式) (@ruriko_pillton) July 6, 2013
欧米でピルユーザーに血栓症の症状を詳しく説明しているのは、ピル反対派では決してない。ピルユーザーをリスクから守るのは、避妊推進派なのだ。
— ピルとのつきあい方(公式) (@ruriko_pillton) July 5, 2013
「血栓が問題だったのは昔の高用量ピルのことです(キッパリ)」なんていう普及推進ちゃらちゃら組の言説が、日本のピルを窒息させることにならないことを祈るのみ。
— ピルとのつきあい方(公式) (@ruriko_pillton) June 16, 2013
OC情報センターのサイトで言及のある副作用は、吐き気・むかつき・乳房の痛みだけだ。血栓はおろか不正出血についてさえ言及がない。これで「正しい知識の普及」といえるだろうか?http://t.co/7tL1BxKDsm
— ピルとのつきあい方(公式) (@ruriko_pillton) May 24, 2013
ピルの服用で血栓症リスクが高まるのは事実なのだから知らせるべきだ。血栓症リスクが高まることの程度や意味を知らせればよいし、気をつける初期症状も知らせるべきだ。不都合なことを隠し回れば疑心が生じるのは当たり前ではないか。なお、静脈血栓症はどう考えても(循環器)内科の領域です。
— ピルとのつきあい方(公式) (@ruriko_pillton) May 23, 2013
血栓症の初期症状が現れたら、
一刻も早く(循環器)内科を受診するように「ピルとのつきあい方」は書いてきました。
ところが、なぜかピルユーザーには産婦人科受診が勧められています。
バイエル薬品の文書どおりに産婦人科医が指導すれば、
ピルユーザーは産婦人科を受診するでしょう。
血栓症リスクの高い妊産婦でも1万人に1人とか2万人に1人の頻度です。
産婦人科医が静脈血栓症を経験することは非常に稀なのです。
その産婦人科医にわざわざ誘導する意味がわかりません。
静脈血栓症では、時間を争うケースがあることをしっかり認識する必要があるのではないでしょうか。
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