2013年6月21日金曜日

産婦人科医の犯罪的怠慢

このエントリーは「ピルを2錠以上飲み忘れたとき 」の姉妹編です。
ピルの飲み忘れ対応の問題は、
実際にピルの服用経験のない方には、ピンと来ないテーマかもしれません。
しかし、ピルユーザーにとっては切実な問題です。
この問題について、各国では委員会を設置し時間をかけた検討が行われます。
日本では1999年に作成された責任所在不明の奇妙なガイドラインが、
いまだに踏襲されています。
特に問題なのは2錠以上の飲み忘れがあった場合の対応です。
なぜそれが問題なのかをピルユーザーでない読者にも分かっていただくために説明しました。


※一般的使用PI=9.0 1年間換算。


※緊急避妊薬のガイドラインにはピルの飲み忘れで緊急避妊が必要なケースが説明されています。しかし、日本のピルの服用法に従えば、ピルユーザーは緊急避妊が必要な状態に追いやられることになるわけで、ピルユーザーにこの情報は伝えることが出来ない状態です。なお、日本のガイドラインでは緊急避妊の適応を3錠以上としていますが、2錠以上とする方が合理的です。、


※服用を中止すると言うことは、妊娠を回避する何らの対応もしないことを意味します。








※かつては、日本ルールを問題視する産婦人科医がいましたが、【医師向け】参照マニュアルの提示で沈黙に転じました。

※添付文書や服用者向け情報提供資料に従えば、防げる妊娠を防げずに妊娠するケースが出てきます。これを放置することは許されません。
訂正 (正)最小限にするために放水     (誤)最小限にするに放水



トンデモ服用法を弁護するトンデモ理論について(追記1/2013.11.7)

ツイッターで
「 二錠以上飲み忘れた場合、すり抜け排卵の可能性が出てくるので、服用を中止することによって、生理を誘発し、妊娠を防ぐんですよ。」
とのメンションを頂きました。
上に引用しているツイート、
「2錠以上の飲み忘れで服用を中止すれば消退出血が来て妊娠が否定される、だからいいんだよ」と言う産婦人科医の顔を見たら真顔だったので怖かった。出血は排卵(妊娠)がなかったことの結果に過ぎないのに。排卵があれば出血は起きず妊娠一直線だったりする。21 Jun 2013 」
が理解されていないようです。
このことについて、補足しておきます。
もう一度、下の図を見て下さい。



24Hを越えると、つまり24Hより右で飲み忘れに気づいたら服用を中止せよと言うのが、
日本の産婦人科医が指導している服用法です。
たとえば、36Hで飲み忘れに気づいたとします。
「2日の飲み忘れ」(2錠の飲み忘れ)状態ですから、
服用を中止することになります。
飲み忘れがあってもすぐに排卵があるわけではありません。
排卵リスクは時間経過とともに加速度的に高くなります。
それを赤いグラフで示しています。
一定時間後、たとえば96Hまでラッキーにも排卵がなければ、
消退出血が見られます。
96Hまでに排卵があれば、黄体が形成されますので消退出血は見られません。
排卵が先か消退出血が先かの競争になるわけです。
この競争の結果は運任せです。
消退出血は排卵が幸運にもなかったことの結果に過ぎず、
消退出血があるから妊娠を防げるなどと言うことはできません。
もし飲み忘れを放置して妊娠リスクを避けることができるのなら、
どのような飲み忘れ対応も意味がないことになります。
また、飲み忘れ時の緊急避妊対応も無意味ということになり、
緊急避妊ガイドラインと整合性がとれません。
イギリスなど多くの国では24時間を越える飲み忘れが、
緊急避妊の適応になっています。


もし、飲み忘れ36時間で緊急避妊すると、
低いレベルの排卵リスクで済ますことができます。
このように排卵リスクを最小限に抑える方法を無意味と言っているのが、
日本の産婦人科医なのです。


1999年ガイドラインについては、産婦人科医の不勉強のためなのかと好意的に考えていました。
しかし、改訂後もそれを踏襲し、なおかつ問題ないと強弁し、
問題を指摘する当サイトを中傷するなどの動きから考えると、確信犯としか思えません。

以上、追記1終わり

「月経初日」の「消退出血初日」への読み換えについて(追記2/2013.11.16)

添付文書等の記載は以下のようになっています。
2日以上連続して飲み忘れた場合
その時点で飲むのを止めて、次の月経を待って新しいシートから再び飲み始めて下さい

この服用法では、避妊失敗率低減効果が全くないことは上に述べたとおりです。
服用を中止すると、排卵がなければ数日後に出血が見られます。
この出血は月経ではなく、消退出血です。
月経は概ね2週間後から3ヶ月後の範囲でやってきます。
(服用中止後の性周期の回復と同じ)
添付文書は、自然の月経の再開を待って服用を開始するように求めています。
その場合、月経初日から服用すれば、その日から避妊効果が得られます。

ところで、日本の産婦人科医は、日本のピルユーザーがわざわざ妊娠しやすくなるトンデモ服用法を考案しました。
このような服用法は、50年のピルの歴史で、どこの国のどんな医師も思いつかなかったトンデモ服用法です。
そもそもこのような服用法が取られたなら、
避妊のためにピルを使用するピルユーザーは絶滅してしまいます。
24時間を越える飲み忘れなど、ざらにあります。
そこで服用を中止すると、性周期の回復に3ヶ月かかる女性も少なくありません。
飲み忘れの度に3ヶ月間使えない避妊法など欠陥避妊法ですから、
そのような避妊法が選択されることはあり得ません。

避妊薬としてのピルの普及を抑制しながら治療薬としてのピルを普及させる政策が取られています。
同じピルでありながら、ヤーズ、ルナベル(LD,ULD)の添付文書には、
トンデモ服用法は採用されていません。
トンデモ服用法を採用すると、排卵リスクが高まり治療効果が失われてしまうからです。
トンデモ服用法は避妊効能ピルについてだけ取られていまるのです。
治療目的ピルは普及させても、避妊目的ピルは普及させない、
との意図なのでしょう。
しかし、その邪悪な政策の犠牲になるのは、
ピルに高い避妊効果を期待した女性です。
政策目的達成のために、何の罪もない女性を危険にさらすことは許されません。

トンデモ服用法を考案した日本の産婦人科医は、
トンデモ服用法にトンデモの輪をかけた服用指導をしています。
飲み忘れで服用を中止したピルユーザーに対して、
消退出血の初日からピルの服用を再開するよう指導している産婦人科医は少なく見積もっても過半数を超えます。
Yahoo知恵袋を見ると、ほとんどのピルユーザーは消退出血の初日からピルの服用を再開するよう指導されているのがわかります。
添付文書の求める「月経初日」を「消退出血初日」に読み替えているのです。
「月経初日」を「消退出血初日」と読み替えるメリットがあるとすれば、
ピルを服用しないインターバルが長くならないことです。
メリットはこの1点のみです。
この消退出血初日再開も日本の産婦人科医の発明なので、
そのデメリットを示すデータは存在しません。
しかし、その服用法は避妊失敗のリスクをさらに大きくするかもしれません。
消退出血の初日にピルの服用を再開しても、
すぐに排卵抑止力が得られるわけではありません。
たとえば、飲み忘れ4日目に消退出血が来てピルの服用を再開しても、
排卵リスクは継続しています。※
問題はピルの再開で出血が止まり子宮内膜が維持されてしまう事があることです。
ピルを再開したために子宮内膜が維持され、その状態で排卵があると、
妊娠リスクは高くなります。
消退出血初日のピル服用再開は、妊娠リスクを高めるおそれがあります。
飲み忘れ後のピルの服用開始は、1日2錠服用で排卵リスクを下げると言うのが、
セオリーになっています。
(ルナベル・ヤーズについては不十分ながらそのような形が取られています。)
世界中の産婦人科医が認めているセオリーに反して、
新しいシートの1日目1錠だけを服用する消退出血初日再開はトンデモの上塗りのように思えます。
※消退出血は月経と似ているが、性格は不正出血と同じ。
以上、追記2終わり

「添付文書に従っていない」は免罪符にならない(追記3/2013.11.16)

ピルののガイドライン改訂版は、トンデモ服用法を是認した上で、
WHOガイドラインの服用法を参照として示しています。
添付文書に従わないで、WHOガイドラインに準拠した服薬指導を行っている医師もいます。
トンデモ服用法を指導するより明らかにマシです。
しかし、その場合でも、患者に渡される服用者向け情報提供資料は、
トンデモ服用法が記載されています。
トンデモ服用法に異議を唱えない限り、どのような服用指導を行っても自己満足に過ぎません。
以上、追記3終わり

※万が一にも日本ルールが正当性を持ちうるのは、飲み忘れ錠数が多くなっても避妊失敗率は高くならないと証明された場合のみです。しかし、そのようなエビデンスは一切ありません。
緊急避妊薬のガイドラインは、飲み忘れ錠数が多くなればなるほどリスクが高くなると認めていますので、整合性がありません。

※このエントリーは「ピルを2錠以上飲み忘れたとき 」の姉妹編です。

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