避妊運動の世界的指導者だったサンガーは、
避妊そのものが禁止だった時代に避妊運動を行いました。
避妊そのものが禁止なのですから、
当然のことながら避妊具は製造も販売もされていません。
サンガーはどうしたかというと、ペッサリーを輸入しました。
日本ではサンガーがペッサリーを日本から輸入したとの説が広がっています。
しかし、英語文献にそのような記述の記憶はありませんから、
不確かであるように思えます。
確かなことは、サンガーがペッサリーをヨーロッパから輸入していたことです。
輸入と言っても避妊が禁止されているのですから、
避妊具としてペッサリーを正規に輸入することはできません。
そこで取られた方法が現在で言う個人輸入です。
この個人輸入は裁判にもなり、性の権利の前進に貢献しました。
裁判はサンガーの武器が個人輸入であったことを人々に印象づけました。
ローマ教会は一貫して避妊具を使う避妊を禁止していますが、
カソリック国で避妊を禁止している国はありません。
性は人間共通で国境はありません。
必然性のあるものは国境を越えて広がります。
コンドームやピルは簡単に国境を越えてしまいますから、
禁止しても意味がないのです。
サンガー以来、個人輸入は避妊の権利拡大の伝統的武器となりました。
個人輸入が武器となり得るのには、ある事情が関係しています。
日本で1999年までピルが禁止されていたと言います。
しかし、禁止されていたのは、製造・販売です。
国は製造・販売については許認可権でコントロールすることができます。
しかし、個人の使用を制限することはできませんし、
そのような法律は不可能なのです。
つまり、日本で個人がピルを使用することは、
一度も禁止されたことがないのです。
同様の事情は各国とも全く同じです。
避妊の権利拡大に、個人輸入が武器として使われる必然性があったわけです。
現在の日本でマーベロンが人気のピルとなっているのは、
規制を打ち破る個人輸入の拡大があったからです。
個人輸入は、性の権利の抑圧がないところでは行われません。
個人輸入は、性の権利の抑圧度を示すバロメーターです。
もっとも、性の権利の抑圧を抑圧と感じる力には個人差があります。
その差が個人輸入に対する考え方の差となります。
例えば、緊急避妊をめぐる日本の状況は「遠ざけ政策」だと書きました。
これを私は性の権利の抑圧と捉えますから、
緊急避妊薬を事前に個人輸入で準備したいというのは当然の権利と考えます。
しかし、緊急避妊薬の個人輸入を推奨するわけではありません。
なぜなら、緊急避妊薬の個人輸入が増えても、
日本の緊急避妊薬使用環境の改善につながらないからです。
個人輸入は、性の権利の抑圧度を示すバロメーターであるとともに、
個人輸入に対する個々人の考えは、性の権利意識を計るバロメーターにもなります。
ピルを個人輸入して使うのはけしからん、
と言う医師は往々にしてピルでお金儲けしたいだけの人です。
1000円でノルレボが個人輸入できるんなら保険代わりに持っておいたら、
と奨める医師は女性の性の権利を考えている医師です。
私はそう思います。
私から見ると、サンガーは大胆な個人輸入推進者でした。
そのおかげで、アメリカは個人輸入する人がほとんどいない国になりました。
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